第三百九十九話 戦うゲスト様-謝罪と解説-
但し殆ど解説
―臨母界を統べる八議長の一柱・マイノスからの解説をお読み下さい―
本作をお読みの皆様、お久しぶりでございます。"生を余した死者の都"こと臨母界の八議長が一人、マイノスです。前回は作者の許されざる不手際により(只でさえ極めて見辛いというのに尚輪をかけて)見辛い話になってしまったこと、作者ともども深くお詫び申し上げます。本当に申し訳御座いませんでした。
さて、前置きもそこそこに本題へ移りましょう。今回こうして此方で地の文としてお話させて頂いておりますのは、前回突発的に発覚した故人蘇生及びヴァンクス嬢の行使された"魂魄融合術式"に関する詳しい解説で御座います。
そも、それぞれ激闘の果てに戦死せし(ヴァンクス嬢を除く)両陣営にて戦力の中枢を担っていた皆様は、我ら議会の総意により保護され晴れて臨母界入りを果たしました。死の間際こそ満足げに散っていった彼らですが、やはり心の奥底では未だ強い"生"への執着や願望が渦巻いていたのでしょう。誰もが例外なく第二の生涯を喜んで受け入れていました。
その喜びの余波は思わぬ所にも及び、元より一心同体であったアイル氏と永谷嬢の絆がより強まったのは勿論のこと、生前は大変に険悪であった紀和嬢とファープ氏なども互いの胸中を打ち明け一晩語らった結果すっかり仲良くなられたのであります。九名は皆臨母界にすぐさま順応し、それぞれに思い思いの生活を謳歌しておられました。
しかし彼らの心にかかったもやはまだ完全に取り払われてなどいませんでした。志半ばにして死した彼らは皆、属していた組織のトップが心配でならず、影の支配者である化け物共がトップ達を利用するだけ利用し用済みになれば平気で捨てるのではと懸念していたのです。そして此度の全面対決に於いてその懸念は的中し、ダンパー理事長とハルツ代表取締役、並びにお二方の部下達は件の化け物共に裏切られ、絶体絶命の危機に立たされてしまうのであります。
ともすれば元戦力中枢の皆様は揃って『できることなら現世に舞い戻り嘗ての上司を助けたい』と言い出すのは当然と言えました。そこで我々八議長は嘗てジゴール氏をそうしたように皆様を蘇生しようとしました。然しながら蘇生の術は消費が大きく、平均的なヒト一人の完全な蘇生さえかなりの大仕事となります。則ち軽々しく連発できるようなものでは到底ないのです。ジゴール氏の蘇生は彼の特異な形質もあって通常よりはかなり少ない消費で済みましたが、それでも決して少なくはありません。ましてその消費分さえ半分しか取り戻せていない現状で、強大な力を誇る九名を完全に蘇生するなど不可能でした。
しかしゴノ・グゴンと己天辿晃の力は凄まじく、直感ながら『彼等を何らかの形で戦力として役立つよう戦線へ投じねば、或いはツジラジ製作陣の敗北も考えられる』とハッキリ悟った私は他の議長と共に打開案を模索し、結果として可視霊体の状態で限定的に蘇生させ"魂魄融合術式"によって生者を強化しようと考えたのです。これならば消費はかなり少なくて済みます。しかしそうなると今度は安定性がかなり落ちてしまいます。不安定な蘇生は対象の身を危険に晒すことになってしまうのです。当人達はそれでいいと言われますが、蘇生失敗は是が非でも避けたい最悪の事態でした。
あれこれと考えた結果、この問題は現世の魔術師に術式の発動を代行させ、内包する魔力の一部を貰い受け臨母界のエネルギーに変換することで解決できることがわかりました。但し魔術師ならば誰でもいいという事はなく、(理想としては特に霊媒系へ造詣の深い)屍術師か、分野に関わりなく対象の一部(最低三分の一以上)と生前親しい間柄にあり、強い絆で結ばれている者でなければなりません。
こう聞くと一見困難なようですが、後者については一人最適な方が見付かりました。そう、九名の内三名―三入氏、神下嬢、セゥ氏―の元同僚でありプライベートでも交遊の深かった魔術師、ザトラ・ヴァンクス嬢です。私は早速霊体となって現世へ飛びヴァンクス嬢への事情説明を行い協力交渉を試みました。それらは信じ難い程円滑に進み、ヴァンクス嬢は喜々として作戦への協力を約束して下さったのです。
さて、予想外の長文になりましたが続いてこれまたヴァンクス嬢に代理行使をお願いした"魂魄融合術式"についてご説明させて頂きます。この術式はその名称に違わず死者の魂を生者の肉体に憑依させることで死者の生前に於ける形質を生者の心身へある程度反映させ―則ち二者を融合させるようにして―生者の強化を行うという術式になります。魂というものが死によって容器を失った生命エネルギーと死者個人の情報によって構成されるという点に着目し独自に研究・開発が進められた代物であります。
似たものに清水嬢が行使なさる生命体装備化の術式がありますが、生者をデータに変換する手間がかからない分こちらのほうが勝っていますが、非力な民間人の装備をも想定した"武装"としての性質ではあちらが圧倒的に上と言えましょう。
さて、これにて解説を終了させていただきます。ほぼ一話分の長文失礼致しました。
次回より、魂魄融合術式による強化を受けた方々のバトルをご堪能下さい……まあ、あの作者の事ですから手抜きで済ませるんでしょうが。
次回、魂魄融合術式を得た七人が大暴れ!