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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン6-エレモス編-
392/450

第三百九十二話 戦うゲスト様-大火の主犯-





まぁやっぱり"アレ"が来ますわ……

―前回より・聖地ロコ・サンクトゥス平原―


 突如大量の廃材・廃品・瓦礫の類を伴って上空へ現れた数多の爆発物・可燃性物質―ガソリン、メタノール、アセチレン、水素、ニトログリセリン、黒色火薬、度数の高い酒類等―は、まるで強い力によって叩き付けられるかのように地表へ落下。広大なロコ・サンクトゥス平原の四割と、その場に居合わせた多くの生命体を無差別に吹き飛ばし、焼き払った。

 幸いにも我らがツジラジ制作陣及び異界からの者ゲスト達の中にその炎に巻き込まれた者は居なかった(巻き込まれそうになっても自力或いは他力による回避が成功し事なきを得た)が、その凄惨かつ衝撃的な光景は多くの者達の度肝を抜き、離れした多くの兵士や明確な知性・自我を持たない生体兵器までも思わず動きを止めてしまう程であった。


【何、あれ……いきなり燃え上がっちゃったんだけど】

「多分、爆撃か何かだろうな……それも、魔術とか妖術なんてもんじゃねえ」

 焼き殺される兵士や生体兵器の姿を目の当たりにした大士と玲瓏レイロウは、若干躊躇いがちに口を開く。

【えっ、じゃあ爆弾とか?】

「そりゃまぁ、爆弾の原料も入ってはいるんだろうが……臭いなんかからすっとこりゃあ、石油とかガスなんかの燃料系が主だろうな。しかしあれだけの物体を一瞬であそこまで転移さすたぁ……十中八九近くに術者が居る筈だが、だとしても相当ヤベエ手合いだぞ」

【やばいって、強いって事?】

「そうだ。しかも見りゃわかるだろうが、さっきの攻撃は躊躇いがなく無差別だった。つまりあれを撃った奴は今ここで戦ってるどの勢力とも敵対してる可能性が高え」

【そもそも魔術師なら普通に焼けばいいのにあんなことするとか危ない人かもしれないもんね】

「いや待て、魔術師じゃねぇ可能性もあるぞ」

「そうなんだよな。そもそも攻撃魔術が使えないって前例もあるから―!?」】

 突如会話に入り込みながら大士の右隣に現れたのは、我らが主人公・辻原繁であった。

「なっ、し、繁!?脅かすなよッ!」

【びっくりした……ショートしそうになっちゃったよ……】

「悪いな。声かけたんだが気付かれねーで」

「そ、そうかよ……それで、アレを撃ったのが魔術師でない可能性があるってのは?」

「そのままの意味だ。魔術以外でもああいう真似は可能だからな。例えば俺とか」

 大士はその一言で繁の言いたい事柄を悟る。

「……って事は、まさか」

「あぁ、反応はあった。八割方俺の同類で間違いねぇ」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「そ、そんな馬鹿な!人造である筈の"奴"がアレを持つなんて!」


 中央スカサリ学園の本陣でダンパーの口から衝撃的な事実を耳にしたコーノンは、驚愕の余り若干ながら困惑していた。


「だが事実だ。残念ながら、紛れもなくな」

「つまり、"奴"の反則めいた戦闘能力は筋力やブレスの火力なんていう、単なる殴り合いの力のみに由来するものじゃなく……」

「そう、"奴"の実力はアレを持つが故というのも大きい。無論当初から最強として君臨できるよう卵子の時点から数多の強化改造を施して来た。それらのない"原種としての奴"であったならアレが有ろうとどうということは無かったろう。また、強化改造によって上げ底された戦闘能力もあくまで我々だけで抑え込む事ができる程度のものであった」

「しかし、当時の我々は想定していなかったのだよ……その二つが合わさった時の、"奴"の実力をな」

「否、アレについては存在を仮定さえしていなかった。備わるか否か不確か、有資格者・・・・など他に何千何万と居るだろうと高を括っていたのでな……だが、"奴"の反逆を許した責任は我々にある。冷静に考えればわかりきっていたことだったのだ……"奴"の"生に対する執着"は、我々への敵意共々常軌を逸している……クロコス・サイエンスの敵勢も脅威といえばそうだが、奴をどうにかせねば我々に真の勝利はない。奴が予定通りに拘束されてくれさえいればどうにかなったのだが……一体何が起こった……!?」

「兎も角何とか"奴"を片づける方法を考えませんと、我々に待つのは破滅だけですぞ……」

「ふん……何、問題はありません。我々にはまだ彼女がいる……あらゆる生体兵器の母、エカセルスィ様が!」


―同時刻・聖地ロコ・サンクトゥス平原上空―


【フはははははァ!半分――いや、四割って所か!特に鬱陶ウゼえ何匹かは逃したが、残りのカス共は残らずウェルダンよォ!】

 遥か上空に滞空したまま下を見下ろし地上の状況を笑い飛ばすのは、先程の爆炎を引き起こした"奴"こと、中央スカサリ学園が生み出した生体兵器の起源にして頂点―"フォルティドラコネム・ウェールス"。予てより自身を兵器として利用せんとし、自らの妻やその友を苦しめもしたという中央スカサリ学園への復讐を願っていた彼もまた、今日というこの日を絶好の暴虐日和と見做し平原へと馳せ参じていたのである。


―同時刻・地上―


「しゃ、社長ぉ~!どうしましょう、これって絶対まずいですよー!」

「落ち着きなさい副社長、大丈夫よ。諦めない限り勝利は必ずものにできる」

 思いがけない状況にうろたえ弱気になるクロコス・サイエンスの若き女副社長ユナト・ニヴァーシュ(翼竜系有鱗種)を、ハルツはどうにか宥めて落ち着かせる。

「でも社長、グゴン様の用意して下さった代替戦力の皆さんまで全滅しちゃったんですよ?これじゃもう勝ち目なんてないですよぉ~」

「それは向こうだって同じでしょ?大丈夫、グゴン様を信じなさい。いざとなったら自ら出向いてでも勝利を掴むと、彼はそう言われたでしょう?」

 どうにか励ますも死と滅亡への恐怖から泣き出してしまったユナトを抱き抱えながら、ハルツは敗戦時如何にしてユナト含む自身の部下を逃がすかについて考えを巡らせる。

「(いざとなったらこの子達だけでも安全な場所へ逃がさないと……)」

次回、両組織のボスが遂にその姿を現す!

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