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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン6-エレモス編-
390/450

第三百九十話 戦うゲスト様-最終ラウンド?-




チームさとてん勢、何時になく大暴れ!

―前々回より・聖地ロコ・サンクトゥス平原―


「行くぜ玲瓏レイロウっ!」

【あいよダイシっ!】

「【嵐雷轟爆砲ランライゴウバクホウ!】」

「べぎあばぁぁぁぁ!」

「シギャァァァァァ!」

 朧姫玲瓏オボロキレイロウの力を得て黄金色の狼を思わせる薄手の鎧を身に纏うことでさながら擬似的な獣人と化した大士が右掌を豪快に突き出す動作で放った荒れ狂う電撃の波動は、直線的な機動で眼前の敵を地面ごと消し炭にしていった。更に彼は鎧の表面からも放電し、これを格闘攻撃に織り交ぜ敵兵を一瞬で感電死させもする。小柄な体格は機敏な彼の動作をより引き立てており、少年はその能力を着実に上げつつあった。

「ふん、ちっこいまま機敏に動き回るってのも悪くねえな!」


「閻魔殿……貴方の左眼に封じられたというその力、今宵少しばかりお借り致します!」

【謙遜しなくていいのよ……少しと言わずあるだけ存分に貸してあげるわ……天使と閻魔、光と闇のコラボレーションよッ!】

「【風魔黒彗星フウマコクスイセイ!】」

「ひっ、なっ、ぎゃうばぁああ!?」

「おゴ、ボゴごッ!」

 暁宵闇アカツキヨイヤミの力を得て死霊を身に纏う異形の神を象った偶像のような鎧を身に纏った聡子は、虹色に光り輝く自らの翼を広げ空に浮いたまま宵闇の持つ"一瞬にして万物を消滅させる闇の妖力"によって作られた浮遊する球体を数個放ち、そこに自らの風を操る異能を絡めた奥義で迫り来る敵勢を次々と討ち滅ぼしていく。

「やはり飛ぶなら自分の翼に限るな……これが一番落ち着くというものだ」


【行くわよ、凛……気合い入れて、ついて来なッ!】

「はい、昴さんッ!」

「【十指巣紡ジッシソウボウ-天網テンモウッ!】」

「ビギィィィィ!」

「んな、こいつはまさ―かばぁあああああ!」

 昴綺絲スバルキイトの力を得て蜘蛛の巣と毒蜘蛛を模した中性的な雰囲気の衣装に身を包んだ凛は、事前に綺絲から受けたレクチャー通りに彼女と同調することにより瞬時に手元で紡いだ縦糸の網(当然蜘蛛の巣型)を巧みに振るい程良い数の敵勢を捕らえ、それを軽く振り回す。捕らえられた者達は為す術もなく細切れになり、当然絶命した。

「凄い……これが僕に秘められた力……空を飛んでいた時とはまるで違う……!」


【さぁ結花お姉ちゃん!殺っちゃって!】

【あたしの火力と鈴蘭のパワーであんな奴ら木っ端微塵よォ!】

「いや、火力とパワーって根本的には同じものなんじゃあ……まあいいわ」

「【【修羅爆殴撃!】】」

「わばらげっ!?」

「フィギぃい!」

 無双姉妹の力を得て頭の前後と両肩に合計四つの鬼面(両肩のものは無双姉妹を怪物化させたようなデザイン)を装着し、四本腕の機械的な鬼神へと姿を変えた結花。誘導弾と大鎚による彼女の攻撃はまさしくその姿に違わぬ力強さと獰猛さの体現するものであり、かつての大士をも上回る破壊力を誇った。

「これじゃショウシの事言えないわね……ま、前よりは格段に強いし別にいっか」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「いよゥ、また会ったなお二人さン。まさか三度目―そっちの黄色いのオップスくんに限れば四度目―の出会いがあるたぁ夢にも思わなかったぜ」

 戦場にて因縁深き仇敵二人組ランゴとエリヤと再会した繁は、相も変わらず軽薄で相手を嘲り小馬鹿にするような態度を崩さない。

「ほう、何故そう思うね?まさか僕らがあの時乱入してきたフォルティドラコネムに殺られたとでも?」

「そうじゃねぇよ。お前らならあの程度の相手、殺せはせずとも殺されはすめぇ。俺が言いてえのは、あれから挙式ついでに新婚旅行行ハネムって初夜っちまってるかと思ったって話さ」

「馬鹿にするな!この非常時に式を挙げるバカがどこにいる!?まして新婚旅行など論外だろうが!」

「やったとしても婚姻届提出くらいだよね。ジュルノブルでの立ち振る舞いや方々での評判から薄々思っていたが、実際に戦っていて確信したよ。お前って奴は本当に稚拙で非常識、加えて不品行で恥知らずなただの殺人鬼だ!ラジオDJなんて高尚なものではない、独り遊びで調子に乗っているだけの餓鬼ガキなんだよ!」

「ランゴさんの言う通りだ……ツジラ、貴様は是が非でも死なねばならんクズだ。害虫ヴァーミン故駆除されねばならん!天上に君臨する何れの神もが許そうとも、我々は断じてお前の存在を許しはせん!お前の我が儘に喜んで付き従い歪みきった思想を正当化するようなゴミ同然の連中もな!まとめて焼却炉に叩き込んでくれるッ!」

「お前がどう思って生放送という名のテロを繰り広げているかは知らないが、どうせ自分達なりの正義だとか、そういうくだらないものを掲げているんだろう?だが実際、それはまるで意味を成していないぞ!どうせ自分達に不都合な事実は勝手に虚構と断定し意識すらしていないんだろうが、実際お前達の活動に影響された者が引き起こした暴行や殺人がここエレモスを含む六大陸全土で頻発しているんだよゥ!お陰でネットはお前達ツジラジ否定派アンチで溢れ返っている!」

「その上それでもお前達の行為を正当化し盲信する信者共もいる!奴らは方々で洒落にならん問題を引き起こし、大手検索コミュニティサイトや各種SNSは大荒れだ!」

「嗚呼ツジラ、嗚呼バグテイル、この世の何より哀れな男よ!お前の所為で世界は大荒れなんだよ!この責任、どう取るつもりだ!?取らないとは言わせないぞ!?」

 挟み撃ちにして烈火の如し勢いで怒鳴り散らす二人の説教を、繁はただただ黙って聞き続ける。そして大声を出しすぎた二人が疲れ果てて息切れを起こした辺りで、表情一つ変えぬまま静かに言葉を紡ぎ出す。


「成る程……確かにお前らの言い分は正しい。まさしく正論だ。そして俺という害悪に正論を堂々とぶつけられるお前らは、まさに正義の味方と言っていい―「何だ?反省の姿勢を見せるとは、どういう風の――「だが、お前らの正論はどうにも緩い」

「「なッ!?」」

「お前らは俺を一人遊びで粋がってる、稚拙で非常識で不品行で恥知らずな殺人鬼のクソガキだと言ったが……俺がそれを自覚せずに行動してたとでも思ってんのか?俺が正義のヒーローを気取っていたとでも?笑わせんなよ、脱走兵共が。こちとら外道の独善害虫、てめえの邪悪などという根本的なことなどとっくのとうに自覚済みよ。俺は俺のやりたいよう、目当てへ向かってやれるだけやる。それは今までも、そしてこれからも変わらねえ。その先に何が起ころうと、俺が満足できりゃあそれでいいのさ。ガキ臭い我が儘だと思うだろ?だがこれが中々難しくてなぁ」

「ふん……自覚があったとて罪が許されるわけではないぞ!そもお前は"何が起ころうと自分が満足できればそれでいい"と言ったが、その満足の為にお前の友や家族が犠牲になったとて構わないというのか!?」

「誰がんな事言ったよ?てめーの耳は留守か?ならさっさと呼び戻して来いや」

「何ィ?」

「わっかんねーかなぁ……なら言うがよー……お前はバカか?俺の満足に何で身内を犠牲にしなきゃならねえ?満足を成す要素はカネやモノだけじゃねえ。愛する家族が傍らで幸せそうに生きている、隣近所にゃ親しいツレが暮らしてる――そういう、当たり前だが掛け替えのない幸福って奴を余さずカバーできてこそ、俺の満足は在るんだよ」

「「……」」

 理由はどうあれ返す言葉もないらしいランゴとエリヤは押し黙り、繁は更に語り出す。

「次に俺に影響されたバカ共が方々で暴れまわってるって話だが、何ともくだらねえ。これに関しちゃお門違いと言わざるを得んぜ」

「何だと……?」

「非を認めながら責任逃れか!?見苦しいぞ、ツジラ!」

「お前らが今の俺を見苦しいと思うんならそうなんだろう、お前らの中ではな……確かに俺が世界各地で暴れまわったもんで、それに影響されたバカが犯罪に走ったりしてんだろうが、それを俺の所為にすんのは完全な責任転嫁だろ。犯罪に走った奴らにせよ、ネットで暴れる信者にせよ、周りの奴らがきっちり躾けてりゃあ、俺如きアホの愚行なぞ犬のクソにも劣る沙汰と判断し影響なんてされやしなかった筈だ。つまりそのテの騒ぎの責任は俺でなく、そいつ等の周りに居た教育者共が負うべき――でもないな、訂正する。責任を負うべきは騒ぎを起こした本人共だ。奴らとてヒトだ。道を説かれ、教えを受けて育って来ただろう。なら善悪の区別などついて当然だろ?まぁ、やむない事情で判断能力のねー奴がやらかした沙汰の責任はお上も負うべきだが」

「つまりどうあってもお前の責任ではないと?」

「如何にも。何だよ、やろうと思えばどうって事ぁねえじゃねーか。その調子だぞオップスく―「ふざけるなァっ!」

 オップスの怒号が空気を目に見える形で震わせる。

「さっきから聞いていれば弁解ばかりウダウダと……仮にお前のそれが正しいにしても、これまでお前達が命を奪ってきたという事実に変わりはない!如何に言い逃れしようとお前は紛れも無く――「オップス君、もういい」

「止めないで下さい、私はこいつに言わなきゃならないことが―「いいから落ち着け、このまま続けても余計付け上がるだけだ」

「……それもそうですね。こんな奴に何を言おうが無駄でしたよ。今更それに気付くとは……」

 二度の制止によって落ち着きを取り戻したオップスは、ランゴ共々武器の矛先を繁へ向ける。

「そう、それでいい。いや、最初からそうしてりゃあ善かったんだよ。こういう時便利だよな、お互い気兼ねなく殺し合いができる間柄ってのは」

「この期に及んでまだ軽口を叩くか……」

「いや、いいんだオップス君。こいつの好きにさせてやろうじゃないか」

「それもそうです―ねッ!」

 武器を振り上げた二人は、防御や逃げの素振りを見せず微動だにしない繁目掛けて前後から一斉に切り掛かる――が、しかし。


「やっぱ緩いよ、お前ら」


 繁の微かな嘲りに合わせて、突如頭上から二人目掛けて透き通った緑色の塊が落ちてくる。


 それの正体を知っている二人はその存在を察知してすぐに回避へ転じようとしたが、間に合わず液体の塊に包まれ跡形もなく消滅。かつて二人の居た位置に残されたのは、それぞれが構えていた武器のみであった。


「……『何故戦場のド真ン中へ突っ立ってんのに他のもんが近付いて来ねえか』という初歩的な疑問を説教に夢中んなって忘れるたあ、本当緩いよなぁ」


 繁が地に落ちた武器を拾い上げるのと同時に、彼を広範囲で取り囲んでいた薄い緑色の膜が膨れすぎた気泡のように弾け飛ぶ。その膜こそ先程まで三人を守っていたものの正体であり、またその内二人を消し去った液体塊の根源でもあった。


「霧状にして散布した溶解液で気泡型の障壁を作り触れたものを解かす防御壁を形成……ついでにその上部に溶解液を集約させ塊として落下させ攻撃に用いる……『女は度胸と上腕二頭筋。何でもやってみるものさ』ってなぁ、小六ん時修学旅行でバスの後輪がぬかるみに嵌まって動けなくなってた所を助けてくれた工事現場で日雇いやってる筋肉スゲー姉さんの言葉だったかな。何にせよまず挑むって事が大事なんだろうな、やっぱり」

「ニネー!」

「邪魔だ」

「ナネナァァァァァ!」


 歩きながら独り言を呟く繁は、襲い掛かってきたスプレーマントロプスの音速打撃を3ズムワルトで弾き返し逆に右腕(を基点としたほぼ全身)を破壊する。


「それにコレ・・も手に入ったしな。初めてだから失敗するんじゃねえかと思ってたが、こいつは予想外だ」


 微かな笑みを浮かべる繁の手元にあるのは、溶解液の緑と対を成すような濃い赤みがかったクリアピンクの小振りな正四面体の物体二つ。彼はそれを大事そうに腰のポーチへ仕舞うと、次なる獲物を探すべく走り出す。

ヒント:オップスの武器の現状

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