表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン6-エレモス編-
389/450

第三百八十九話 戦うゲスト様-マリゴールドの咲く中で-




死闘はまだまだ続く(そろそろ終わるけど)

―前々回より・聖母黄金華咲く決戦場―


「ヌッフッフッフッフ……長かったよーな短かったよーな……ともあれ遂にこの時がやって来たわい……」

 軽装ながら確かな威厳を放つ古代の軍人或いは皇帝を思わせる衣装に身を包んだ月光は中型乗用車程の大きさをした白いドラゴンに跨り、傍らに六匹の化け物―何れも個体差はあれどヒトを若干或いは遙かに上回る巨体の持ち主―を連れていた。

 それは例えば魚の鰭を持つ痩せこけたヒキガエルであったり、若干ヒトに近い骨格を持つ色褪せた毛並みのジャコウネコらしき獣であったり、身体を出鱈目に組み合わされた金髪美男子へ女物のドレスを着せたような気味の悪いものだったり、鳥の翼と飛蝗の後ろ脚を持つ七つ眼の兎であったり、身体の一部が機械化された二足歩行する狼であったり、歩脚に代わり常軌を逸したレベルにまで鍛え上げられたヒトの腕を八本持つ水陸両棲の巨大な蟹であったりする。

 彼の臣下達を思わせるこれら七匹の化け物は"独自兵"という、このゲームのシステムによって作られるプレイヤーの個性や経歴等を反映している強大な力を秘めた特殊兵力であり、王将達もそれぞれの形質を反映した"独自兵"を有していた。

「さて、そういうわけでじゃ……おめー等ぁほんまよーやるわ。この聖母黄金華咲く決戦場マリゴールド・バトルフィールドを使い始めてかれこれ二十五年になるが、過去227あった勝負の中でこれほどの戦いぶりを見せた相手とやり合うたのは、100戦もなかったような気がするわい」

「いや、227戦中100戦って以外と多くありません?」

「っていうか、"気がする"なんて曖昧な言い方してる時点で信憑性が……」

「……そういう事は儂自身が後々自分から言う台詞じゃろ?まぁええわ、兎も角おめー等は強い。故にここまで生き残れたのじゃ。限界に到達した資源供給はストップし、互いにこれ以上の増員は望めぬ現状。手持ちの兵力も独自兵が七体のみ。よって儂等七人プレイヤーの出陣が可能となったわけで……まぁ要するに最終決戦の流れじゃな」

「じゃあ最初からそう言って下さいよ。俺らが強いとか、生き残れたとか、もう兵力の補充ができなくて総残存戦力が俺等プレイヤー含めて56とか、あと俺がイケメンでモテモテとか、そういう分かり切った御託は一々語るまでもないじゃな痛ッ!」

「誰がイケメンでモテモテだ、誰が」

「いいじゃねえか、こういうときくらい下駄履かせてくれよ」

「おい早乙女ェ。その"下駄履かす"って言葉、意味分かって使ってるか?」

「ともかく、この戦いにも終わりが近付いている、と。そういう事ですよね、鎗屋元理事長?」

「うむ、そういうことじゃ。すまんのぅ米沢秋とやら。儂が現役じゃったらおめーの進級・進学・卒業を完全エスカレーター式にし、就職活動期間には大陸中の一流企業への紹介状を書き圧力かけてどこにでも就けるよう手筈を整えてやろうかと思ったもんじゃが」

「はぁ……お気持ちだけ受け取らせて下さい。というか仮に現役時代それをやってしまったら辞任ものでは……」

「心配いらん。過去このテクで儂は数多の生徒を救ってきたんじゃからな。その数ゆうに……よう覚えとらんが五か七桁ぐらい?はまぁ、ギリギリ行ったぐらいかの。ともかく無問題もうまんたいじゃ。んで決戦の方じゃが、やっぱり相変わらずのダイス式ターンバトル――と、思うたんじゃがここに来て前と同じようなシステムというのも華がねーじゃろ?」

「いや、華とかはいいんで同じシステムでお願いします」

 嫌な予感がした王将ははっきりと自分の意見を口にしたが、月光は聞き入れる様子を見せなかった。

「そこでじゃ、如何せん乱暴とは思うがもういっそこの場の全員で乱闘っちゅう形式でええかと思ってのう」

「聞いてねえ!?」

「つーか駄目でしょ乱闘は!」

「勘弁して下さいよ!」

「今までシュミレーションゲームでやって来たのにいきなり乱闘とか!」

「ないわー……」

「だ~いら~んと~♪」

「「「「「やっぱり危機感ねぇっ!?」」」」」


 かくして始まった最後の大乱闘は、(ロコ・サンクトゥス平原に比べれば当然少なくはあったものの)総勢56名という大人数が一斉にぶつかり合った為に混沌と混乱を極めた。赤い小ぶりなワイバーンの姿をした心愛の独自兵が、ジャンゴを象ったであろう半機械の狼を取り囲みブレス代わりの攻撃魔術で焼き払おうとすれば、負けじと半機械の狼もその剛腕で魔術諸共七羽の小型飛竜を薙ぎ払う。

 腹部先端の毒針部分にスタンガンと機関銃、前脚に刃物状の爪を備えた一抱えほどもあるスズメバチの姿をしたつばさの独自兵はラブレドを象ったであろう前衛的な女装異形と戦っていたが、本家ほどではないにせよ変幻自在にして予測不能な動きを見せる女装異形には歯が立たず、奈々の独自兵と入れ替わる形で目標を変更する。

 水中のみならず地中や空中までも泳ぎ回る青い蛸の姿をした奈々の独自兵が先程まで戦っていたのは遥を象ったであろうヒトめいた骨格の色褪せた大ジャコウネコで、獰猛にして俊敏、かつ五感が極限まで鋭敏なこの個体は実質的な透明化或いは存在消失にも等しい奈々の擬態を見破り的確に攻撃を放ってくる。交代は必然と言えよう。

 魔術師か学者風の衣装に身を包む半馬亜人ケンタウルスの姿をした秋の独自兵と陸軍風の軍服に身を包み銃や無反動砲を背負う半蛇亜人ラミアの姿をした星月の独自兵は総数14の合同部隊となり二手に分散、複数の敵独自兵を襲撃する。その複数とはエスカを象ったであろう魚の鰭を持つ痩せこけた大ヒキガエルとグェイ・クーを象ったであろう多眼のキメラ兎のことであり、それぞれ伸縮自在の舌や多彩な魔術による中或いは遠距離攻撃を駆使するこれらの化け物に対し、同じく砲兵である二人の独自兵は大変に相性が良かったのである(ただ、多眼キメラ兎の方は途中から空を飛ばれた為心愛の独自兵と交代した)。

 歩脚が鍛え上げられたヒトの腕になった巨大蟹―ヴェインを象ったであろう月光側の独自兵と戦うのは、13種存在する中でも二番目に巨大な王将の独自兵―どぎつく毒々しいカラーリングをした巨大なウデムシ―であった。互いに純粋な身体能力と頑丈な外骨格だけが取り柄であるこれら二種類の節足動物の戦いは最早戦略も何もない単純な殺し合いと化していた。


 そして独自兵同士の戦いが壮絶になる中、その主である七人のプレイヤー達(及び余った一頭の独自兵)もまた直接対決に至る。月光は一人息子の鬼王を象ったであろう白い有翼四足竜の姿をした独自兵を乗り回し派手な上に的確な戦いぶりを見せるが、対する王将達六人も負けじとプレイヤーキャラクターとしての、また本来の自分自身としての技術や能力を遺憾なく発揮し立ち向かう。


 その壮絶な戦いは(月光の乗り回す個体を含む)独自兵が全滅しても尚続いた。

次回、ロコ・サンクトゥス平原に色々と来襲!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ