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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン6-エレモス編-
388/450

第三百八十八話 戦うゲスト様-集えアホ毛の妖怪少女-





解説はもう少し待て

―前々回より・異空間拠点―


「はい、それじゃ先ずは自己紹介とかしちゃおうか」

 香織に指示されるまま、臨時に召喚された八人の少女―何れも香織が以前から調査を進めていた次元に潜む"妖怪"やそれに類する存在―達は順番に自己紹介をしていく。

【初めまして、影宮灯カゲミヤトモシビです。色々と拙い所もあるかと思いますが、宜しくお願いします】

 礼儀正しい挨拶をして深々と礼をする儚げな少女は、山吹色の割烹着を着込み銀灰色ぎんかいしょくの長髪を棚引かせていた。影宮灯―幼くも健気に生き続ける混血児の妖怪である。

雪照堂撫子ユキショウドウナデシコですわ。以後宜しく】

 短い挨拶の中にも気品を感じさせる喋りとピンクのウェーブがかった腰までの長髪が特徴的な雪照堂撫子は、温厚で心優しく母性に溢れる和装美人と言えた。

【あたしは楪刹那ユズリハセツナ。蔦のように自由に、風に乗る種のように適当がモットーの死神さ】

 白と黄色を基調に据え、裾部分に緑のリボンやフリルをあしらった洋服に身を包むショートヘアに眼帯の少女・楪刹那は身の丈ほどもあるサイスを持っており、死神という彼女の種族(というよりは肩書き)により真実味を持たせていた。

【僕の名前は朧姫玲瓏オボロキレイオウ!堅苦しいのはなしにして、気軽に玲瓏って呼んでね!】

 獣の耳らしき突起のあるフードを被った朧姫玲瓏。天真爛漫な彼女の種族は雷獣であり、それ故雷電を発し求める存在であるという。

空亡からなきで閻魔、一粒で二度美味しい裁判官のヨイちゃんこと暁宵闇アカツキヨイヤミとは私のことよ。戦争なんてちょっと気が引けるけど、死の裁定者として命を守るためなら努力は惜しまないわ】

 黒い着物を身に纏う黒髪美人の暁宵闇。一見おちゃらけているような喋りながら発言の内容そのものには確かな覚悟や信念の見え隠れする彼女は、恐ろしげな種族の割に(先程彼女自身が述べた通り)凡そこの世に存在するあらゆる生命を愛し尊ぶ博愛主義者でもある。

【昴……昴綺絲スバルキイト。あたしの戦場に能無しと弱虫は不要、やるからには本気で行くわよ……】

 蜘蛛の巣の描かれた藤色の着物を着込む昴綺絲の言葉には幽かながら確かに怒気が含まれており、その態度は総じて高圧的を通り越して威圧的ですらあった。因みに着物の柄から分かる通り種族は絡新婦ジョロウグモである。

【あたしは無双鈴蘭ムソウスズラン!】

【私はその妹、鬼灯ホオズキ!】

【【二人揃って無双姉妹!宜しくゥ!】】

 双子ならではの息のあった陽気な挨拶をしてのけた鈴蘭と鬼灯の無双姉妹。その額からは揃って円錐形の角が生えており、彼女らの種族が鬼であることを物語っていた。


「それじゃ、あとは手筈通りにやっといてね。私も出なきゃなんないから」


 かくして新たな装備を得た民間人七人と使徒精霊三柱は、再び戦場へ降り立つ。


―同時刻・警察署内―


「んのジジイ、ナメた事抜かしゃあがって……折角事件を解決に導けるチャンスだと思ってたのに……」

「仕方ないわよ、上層部は点を稼げない事件なんてどうでもいいんだから。幾ら私達が証拠を突き付けたって、ツジラジが派手に騒ぎ立てたって動きゃしないわ――本当に取り返しの付かないことになるまではね。政治家や公人とは元来そういうものよ」

 あれから後、ロコ・サンクトゥス平原での開戦とツジラジの放送開始を絶好の機会と見た高宮と真壁は上層部へ向かい『被害が広がる前に抑止すべき』と訴えかけた。しかしその訴えは聞き入れられず、あまつさえ『ロコ・サンクトゥス平原での戦乱は中央スカサリ学園とクロコス・サイエンスが合同で制作中である特撮映画の撮影。ツジラジはそれを妨害し両組織の名を貶めるべく虚偽の情報を流しているだけ』等という、凡そまともとは思いがたい結論を提示してきたのである。結果として相手にされず摘み出された二人は、署内で愚痴りつつ次の手を模索中であった。

「それは分かり切ったことですけど、だからってクタール氏を偽者扱いしたばかりか『大陸連合内部の反乱分子がツジラジを操ってる』なんて普通言います?」

「言うからうちの署は問題だらけなのよ。まぁあの時の署長は根本からして何か変だったけどね。もうこうなったら奥の手を使うしかないわ。最悪クビどころか社会的抹殺も考慮しなきゃならなくなるかもしれないけど、この事件ヤマだけはどうなっても終わらせるわよ」

「そうですね。いざとなったらホームレスか盗賊か、他大陸よそへ高飛びするってのもアリですかね。昔みてーにはいかんでしょうが」

「その時は宜しくね、真壁君」

「任せて下さい。それで高宮さん、奥の手ってなぁ一体何なんです?」

「一緒に来ればわかるわ」

「っていうか、この流れだともう俺ら動く必要なくありませんか?」

「何言ってるの真壁君。必要かどうかなんてどうでもいいのよ。要は面白いかどうかでしょ?未確認超存在絡みの捜査に回されてから、それだけは変わらないじゃない」

「ですね」


―同時刻・聖地ロコ・サンクトゥス平原―


「燃え上がれ!」

【金毛蒼炎波!】

 狐の意匠を持つタキシードのような灰色と黄金色のパワードスーツを身に纏うアルティノは、灯の持つ神通力に由来する火炎で周囲の敵兵を一斉に焼き払う。


「川共々凍りなさい……」

【大海瞬凍……】

 水晶や雪の結晶のような意匠のある淡いピンク色の鎧に身を包んだラピカによる撫子の神通力を借りた攻撃は、イプセルドーリスやプロテウス等の水棲生体兵器を川ごと凍らせていく。


「この数……普通にやり合ってちゃあ骨が折れる、けど……!」

【あたしの力があればどうということはないってのよ!】

 花の描かれた鎧とローブを着込んだシャアリンを取り囲むのは、投薬によって強化されたプランタニマーリアの群れであった。装備変更以前の彼女ならば間違いなく苦戦を強いられたであろうが、気楽な死神・刹那の植物を支配する神通力を借り受けた今ならば手を触れずに同士討ちへ追い込む事も容易い。


 かくして戦いは更に激しさを増していく。

次回、プレイヤー総出のウォーゲーム最終決戦!

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