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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン6-エレモス編-
384/450

第三百八十四話 戦うゲスト様-決戦へのカウントダウン-




10000、9999、9998、9997、9996……(遅っ!?)

―前々回中盤より・中央スカサリ学園地下最深部―


「とまぁ、そんな訳なんじゃよ。この姿は若返りの魔術によるもんでな」

 月光は王将達六人に自分の素性を語って聞かせた。

「そんな……あんなに盛大だったお葬式が……」

「裏社会へ逃げ出すためのフェイクって、んな馬鹿な……」

「俄には信じがたい話ですが……」

「信じるしかないねー」

「何を聞いても基本脳天気なあんたが羨ましいわ……」

「えへへー」

「褒めてねえ。多分それ褒めてねえぞ雨内。んで鎗屋前理事長、俺らに一体何の用なんです?貴方や鬼王さん他その他先輩方がダンパーと連んでるって事は判りましたが、そうなるとやっぱ学園に楯突く俺らを殺そうってんですか」

「いや、流石の儂も学園の者を有無言わさずにぶち殺しゃあせんわ。特におめー等みたいなんは、別次元で優秀じゃし面白ぇけん殺すんが惜しい。しかし此方としてもダンパーを阻むもんは可能な限り排除せにゃならん。よって、そのどちらかを効率的かつ公平に成し得る道を選ぶことにしたのじゃ」

「つまりー……どういうこと?」

「おう、回りくどい言い方をしてしもーたな。要するに、おめー等と儂とで勝負しょーやっちゅうこっちゃ」

「勝負……ですか」

「そうじゃ。おめー等が勝てば学園の真実や戦争を終わらせるヒントを教え、また戦争に関するあらゆる質問に答えちゃるし、儂等鎗屋悪鬼衆も戦いから身を退くとしよう」

「私達が負けた場合は?」

「対価として何か頂く」

「何かって何ですか……」

「何かは何かじゃ。そんなもなァ勝負しながら考えりゃええだけの話。ひとまずどっちが勝つかが先じゃろ」

「それはそうですけど、何で勝負するんです?」

「何で勝負するか?はん、こういう時の勝負っちゅーたらゲームと相場が決まっとろうが」

「ゲーム?」

「そうじゃ。勿論ただのゲームじゃあねぇぞ、こういう時の為にとわざわざ用意しとった特注品じゃ」

 月光は何処からか古ぼけた木製のゲーム盤と説明書らしき冊子を取り出し、冊子に書かれてある文面を読み上げる。


「力ある天よ、我が呼び声に応じよ。

我が求むは無双の矛。

我はその矛を我等の敵に振るう。

第一の夜、我は矛にて悪しき十眼の陽炎を断ち、またそれを狂信せし愚物の頚を刈る。

第二の夜、我は矛にて男子に男色を強い、僅か四半期で捨て去る四足餅の蝗を滅ぼす。

第三の夜、我は矛にて女人の姿で鉄を喰らう海魔とそれを率いる好色の海将官を殺す。

第四の夜、我は矛にて風潮に甘え筋の通らぬ理由により蛮行と暴虐を働く牝共を斬る。

第五の夜、我は矛にて自国を汚し低俗かつ下劣に祖国に刃向かう哀れな隣国民を罰す。

第六の夜、我は矛の重みに耐え切れず遂に手足を痛め、翌日より丸二日休息に費やす。

千を二百等分した夜を超えて力尽きる我こそは余りに無力。

故に我、鍛練の場を望まん。

故に天よ、力無き我に鍛練の場を与え賜え。

線虫一匹の生涯程も鍛えれば、五十の夜も超えられよう。

戦場の門よ、開かれよ」


 月光がゲーム盤を開いて掲げるのと同時に、盤面に描かれた兎、狼、蟹、貴婦人、ヒキガエル、ジャコウネコ―が満月をバックに翼を広げたドラゴンを崇めるように取り囲む様子の絵から目映いばかりの光が発せられ、その場に居た七人を吸い込んでしまった。


―同時刻・CS社敷地内最奥部―


「糞ッ!手隠師団が如月を残して全滅だと!?有り得ねぇ!あのアホは本当にアホだったが、奴らの実力は確かだった筈だろうが!なのに残り一人ってなぁどう考えてもオカシイじゃねーか!」

 クロコス・サイエンスの最奥部に作られた自室にて腹這いに寝転びつつ戦場からの中継映像を見ては凄まじい剣幕で怒り狂うのは、全身オレンジ色で四肢が完全に消え失せた大型肉食恐竜が如し(即ち"大型肉食恐竜の頭を持ったツチノコ"のような)巨大生物―もとい、クロコス・サイエンスを影から支配する巨獣ゴノ・グゴン。嘗ては立派な後ろ脚で大地を駆け巡り強靭な前脚で獲物を捕らえていた彼は、クロコス・サイエンスの支配者として地下で自堕落な生活を送り続けた結果、遂に四肢すら自ら捨てる程に落ちぶれていた(然し当人はそれをまるで気にも留め無いどころか、昔のような生活を送っていた自分は愚かだったとさえ思っている)。

「糞ッ!糞糞糞ッ!有り得ねぇ!マジで有り得ねぇぞこんなん!何かの間違いなんじゃねーか!?」

 怒り狂う余り遂に現実を否定しにかかるグゴンだったが、どう足掻こうと手隠師団の残存戦力が如月のみであるという事実に変わりはない。いよいよ怒りが限界に達したグゴンは、尾で背後に備わったボタンの一つを乱暴に叩く。すると自室に備わった専用のロボットアームが信号を受信し、彼の口元まで食物を運んでくる。それを瞬く間に食い尽くした彼はその後何十回とロボットアームに食物を持ってこさせては自棄食いを繰り返す。結果彼が落ち着きを取り戻したのはロボットアームが102回目の命令を完遂した頃だった。

「はぁ゛~……やっぱアレだ、他力本願は良くねぇな。元はと言えば俺がに勝ちてぇっつー一心でおっ始めた事だし、始末をあんなカス共に任せるってのがそもそも間違いなんだよな……」

 決意を新たにしたグゴンは、単身自ら戦場に赴くための準備に取りかかる。


―前回より・聖地ロコ・サンクトゥス平原・中央スカサリ学園本陣中枢部―


「ダンパー理事長、デイパラの輸送部隊が到着致しました」

「よし。根源エカセルスィ様はどうしておられる?」

「はッ。既に地下施設を脱出し護衛隊に守られながら此方へ移動中との事。襲撃者の学生六名は鎗屋前理事長が担当して下さるとの事です」

「ふむ、好調なようだな。これならば予定より早く"かの御方"を拝めるやもしれん。そうなれば我がフリサリダの勝利は確定的なものとなろう」

「仰有るとおりに御座います」

「しかし、一つ不安な点が……」

「不安な点?一体何だね?」

「はい。先程右大将(オップス)様と左大将(ドライシス)様より『強大で不穏な気配が近付いている』との入電がありました」

「不穏で強大な気配だと?まさか、"奴"か……?」

「更に続けてT.O.R.O.隊員からも俄には信じ難い入電が入っております」

「俄には信じ難い入電とは?」

「はい……私共も耳を疑ったのではありますが、隊員達は口を揃えて言っております……」

「……『ルラキ・カリストらしき人影を見た』と……」

 その言葉を聞いた途端、ダンパーの面が酷く引きつった。

「何、ルラキ・カリストだと!?馬鹿な!あの女は確かに右大将オップスからプランタニマーリアを借り受けたプロドスィアが――……」

 捕まえてデイパラの部屋に送り込んだ筈だ と言おうとして、ダンパーは黙り込んだ。そういえば屋伝王将を逃がしたのも奴だ。裏切りがあの時唐突に始まったとは思えない。否、何年も前から始まっていた可能性すらあるのではないか。

 冷静に脳内を整理したダンパーは、伝令達にただ『現状維持と予定通りの作戦完遂を目指せ』とだけ伝えるのだった。

次回、月光の用意したゲームとは!?

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