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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン6-エレモス編-
377/450

第三百七十七話 戦うゲスト様-月下の八悪鬼-

苦戦を強いられたルナレンジャーだったが……

―前回より・聖地ロコ・サンクトゥス平原―


「くそッ……こんな筈じゃあ……」

「何という……ことだ……」

「英語力絶望的な癖になんちゅう力じゃ……」

「いや、英語力関係な―ぅごふっ!?」

「ちょ、グリーン!大丈夫!?」

「そういうピンクさんも脚脱臼してるじゃないですか……」

「右腕吹っ飛んでるお前に言われたかねぇけどな……」

「とりあえず喋れるだけ御の字っちゅー感じかのぅ……」


 あれから益々手隠師団に圧倒され続けた月光戦隊ルナレンジャーの八人は、最早瀕死同然の容態でロコ・サンクトゥス平原の乾いた大地に倒れ伏していた。手隠師団の面々はそれを見て勝ち誇り、クロコス・サイエンス側の志気は昂揚しつつ戦いは続行されていた。しかし奇妙なことには、だからと言って中央スカサリ学園側の志気が下がり勢いが落ちているとか、ダンパーや伊達が取り乱しているとか、そういう事もまるでなかったのである。

 その様子を眺めていたクロコス・サイエンス側の多くはそんな学園側を薄情者と罵り、ルナレンジャーをただ目立ちたがりなだけで実力のない道化の集団だと嘲ったが、ハルツやグゴンはそれを不自然と考え警戒していた。


「(あの落ち着きよう、絶対に何か裏がある……)」

「(フリサリダのクソ虫共め、一体何を隠してやがる……)」


 ハルツは社員達に学園勢やツジラジ制作陣との戦闘を続行しつつ、ルナレンジャーには出を出さないようにと指示を出した。グゴンもまた通信で手隠師団の面々にそう伝えようとしたのだが、揃いも揃って従わず、如月の保守的な意見さえ黙殺し無計画に突き進む。そして『瀕死なら非力な自分にだって殺せる筈だ』と調子に乗った楯山が最も小柄で非力そうなルナブルーを手に掛けようとした、その時。


「ぱにょ!?」


 男を"手玉"に取り続けた栗鼠が、一瞬にして"手の平サイズの玉"になった瞬間である。無論身体構造を無視して無理矢理形を歪めたのだから、当然生きているわけがない。残る八名の顔が、揃いも揃って青ざめる。更にそれを嘲笑うかのように、瀕死の重傷を負いボロボロだったルナレンジャーの身体がみるみる内に再生していく。その常軌を逸した光景は手隠師団の面々はおろか企業軍勢をもパニック状態に陥れ、ツジラジ制作陣を混乱させるに十分すぎるものであった。


「そ……そんな、馬鹿な!?お前ら……何故、傷が……」

「あー……傷ゥ?何のことだぁ?」

 木戸の問い掛けに、ルナレッドは露骨なまでに無気力かつ不真面目な態度で聞き返す。

「何のって……さっきまで俺達がお前らに負わせた傷だ!さっきまで圧倒瀕死だったろ!?俺達に圧倒されっぱなしでよぉ!」

「はぁ?瀕死ぃ?マジで何言ってんだ?お前頭大丈夫か?お前らが俺らを圧倒してたとか何時の話だよ?」

「いや、ついさっ――「だから"さっき"って何時の話だよ?曖昧な物言いすんな、正確な日時を言えよ」

「え、正確な、日時j―「そうだよオラァ!正確じゃなくていいから具体的な数字出せよウラァ!」

 ルナレッドは木戸の胸倉を掴み持ち上げては激しく揺さ振りながら脅し付ける。

「その辺でやめちゃれや、レッド」

 他の面子が揃って我関せずといった具合にルナレッドの暴行を放置する中彼を止めに入ったのは、派手な身なりの年寄り口調の少年ショタジジイことルナルーラーであった。

 幼い外見ながら此方は集団の支配者ルーラーとして認められ相当な権威の持ち主であるが故であろう、ルナレッドは木戸を揺さ振る手を止めた。一方の木戸は恐怖の余り今にも泣き出しそうであり、優勢時の威勢は遥か遠くへ吹き飛んでいた。

「だがルーラー、こいつは――「えーけぇ離しちゃれ。もう十分じゃろ」―……」

 ルナレッドはルナルーラーに言われるまま、渋々木戸を解放した。木戸は己が自由になったと解るや否や、一目散に如月の元へ駆け寄り彼の背後に隠れてしまう。

 一方、ルナルーラーは場の空気が落ち着いた所で話を切り出した。

「さて、ちぃと武器を納めて話を聞いて頂きてぇ。今更説明するまでもねぇが、儂らはこの通り生きておる。面倒じゃけぇ単刀直入に言うが、それは儂が儂自身とこけェおる七人へ幻術をかけたからじゃ。つまりおめーらは幻術によりクロコス・サイエンスにとって優位な状況を見せられとったっちゅーわけじゃな。まぁ急拵えの上、よっけぇ場数踏みょーるモンらが割り込んだ所為で術は不完全になっちもーたが、そらしゃあねぇわ。寧ろこねん思わせ振りなタイミングで術が解けたんじゃ、感謝せにゃーな」

「……ルーラー、そろそろ頃合いかと」

「うむ。ほんなら見しちゃるでぇ、儂らの真の姿を!皆、準備はええな!?」

「「「「「「「応ッ!」」」」」」」

 掛け声と共に全員で同じ構えを取ったルナレンジャーの面々は、声を張り上げ叫ぶ。

「ルナンスフォーム!」

「「「「「「「ルナンスフォーム!」」」」」」」

 月夜のロコ・サンクトゥス平原に響き渡った叫びと共に八人は衣装を脱ぎ捨て、その中から彼らの真の姿が顔を覗かせる。


「獰猛のツルギ、骨肉を断つ!傲慢竜鬼リュウキ鎗屋鬼王ヤリヤキオウ!」

 雄々しい叫び声と共に赤いスーツを引き裂いて、ルナレッドこと鎗屋鬼王が銀にも近い白色の外骨格に覆われた有翼型竜属種という真の姿を現した。その体格は細身ながら筋肉質であり、背の翼や尾の存在も相俟ってその体格差は歴然であった。

「悲哀のヤイバ、闇に疾走ハシる!憂鬱蛙鬼アキ、高越エスカ!」

 冷やかながらどこか物憂げで哀愁を漂わせる叫びと共に黒いスーツを内側から正中線で真っ二つに切断し、ルナブラックこと高越エスカが細身の蟇蛙ヒキガエル系半水種という真の姿を現した。漆黒の忍者装束から覗く双眸が冷酷な本性を物語る。

「絶滅の巨躯キョク、全てを潰す!暴力蟹鬼カイキ、ヴェイン・ディ・モウン!」

 体格に見合わぬ恐ろしげな叫び声と共に小さな体が凄まじいスピードで変異・膨張。青いスーツが悉く突き破られ、ルナブルーことヴェイン・ディ・モウンは甲幅4m程もある巨大な青い蟹系外殻種(容姿さえ軍帽を被った青い超巨大イソオウギガニ)という真の姿を現した。所謂"男の娘"然とした脆弱そうなルナブルーが何故こうなったのであろうか。

「怨念の策にて、我欲を満たす!悪意兎鬼トキ、グェイ・クー!」

 声量こそ前者三名には及ばずとも確かな気迫のある叫び声と共に緑色のスーツからするりと抜け出し、ルナグリーンことグェイ・クーは純白の長毛に覆われた比較的小柄な兎系禽獣種という真の姿を現した。

「快楽の道は、あたしの手にっ!愛欲偽鬼ギキ、ラブレド・S・アペンディ!」

 如何にも気取ったような叫び声と共にピンク色のスーツを普通に脱ぎ捨て、ルナピンクことラブレド・S・アペンディは水商売の女を思わせるドレス姿の妖艶な女装美青年(種族は尖耳種)という真の姿を現した。女性的な声と体系はスーツに施された細工によるものだったのである。

「歓喜への夢、叶えてみせる!強欲鼬鬼ユウキ、高越ハルカ!」

 信念と執念の籠もり活力に満ち溢れた若々しい叫び声と共に紫色のスーツを強引に引き剥がし、ルナバイオレットこと高越ハルカは麝香猫ジャコウネコ系禽獣種という真の姿を現した。前者と違い此方は正真正銘の女性なのでご安心を。

「怒気の爪牙、切り裂き喰らえ!憤怒狼鬼ロウキ、ジャンゴ・スラグダー!」

 咆哮にも等しい程に獣臭く野性味にあふれた猛々しい叫び声と共に金色のスーツをバラバラに引き裂き、ルナゴールドことジャンゴ・スラグダーは筋骨隆々な狼系禽獣種という真の姿を現した。

「混沌を制すは、世にこの我のみ!煉獄皇鬼オウキ、鎗屋月光ゲッコウ!」

 少年ながらなぜか妙な威厳に満ち溢れた叫び声と共に全身にかけられた擬態魔術を解除し、ルナルーラーこと鎗屋月光は小柄な白いドラゴン(さしずめ鬼王の小型版といったような容姿)という真の姿を現した。

「「「「「「「「我等、月下に集う八悪鬼!」」」」」」」」

「「「悪徳貪り!」」」

「「「邪念を啜る!」」」

「血筋は違えど絆は家族!」

「かくして我ら!」

「「「「「「「「鎗屋悪鬼衆、推参!」」」」」」」」

何これー!?

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