第三百七十六話 戦うゲスト様-手隠師団の秘密-
手隠師団とは如何なる集団なのか!
―前々回より・聖地平原―
突如ロコ・サンクトゥス平原に現れた"月面戦隊ルナレンジャー"と"手隠師団"という両軍勢への助っ人達は、まるで示し合わせていたかのように特定の組み合わせで向かい合い、互角の戦いを繰り広げていた。戦況はほぼ手隠師団の優勢であり、ルナレンジャーは苦戦を強いられているらしかった。
「シンセティック・レコード!」
「ぐぉああっ!」
木戸の操る刀は抜群の切れ味でルナレッドの身体を切り裂き、
「デス・アクター・ブレイブ!」
「ぐっ……!」
金属製の篭手によって重みの増した瀬戸の張り手はルナブラックを吹き飛ばし、
「!」
「くぉっ!?」
小さな体躯と持ち前の機敏さを生かした鹿野の連携はルナブルーを苦戦させ、
『フェブラリー・プロローグ』
「ガゥワァァッ!ギャォ!フシャルォッ!」
「ふお!?危なぁ!」
首輪のスピーカーから流れる電子音声からは想像も付かない程に獰猛な小桜の連撃はルナグリーンを恐怖させ、
「サマー・クリアー・リーフ!」
「ィやんもゥ!そういうのやめてよッ!」
現実のカメレオンにはまず不可能な透明化と高速移動を駆使する榎本の攻撃はルナピンクを不快がらせ、
「ディセイブ・エネミー!」
「ちょわ、疾ぁ!?」
隻脚ながら凄まじい機動力を誇る如月の突進と足技がルナバイオレットに襲い掛かり、
「デッド・エンドロール!」
「ギャあぁス!何ッだお前!?」
外殻種故の優れた飛行能力にサブマシンガンを絡めた雨宮の攻撃にルナゴールドは為す術もなく、
「さぁ、やっちゃいなさい!」
「クライング・メアリー・デイズ!」
「ぬぉほぅ!こりゃチイとやべえか!?」
頭上に乗った楯山を守りながら身体から伸ばした細密な触手にて広範囲を薙ぎ払う九ノ瀬の攻撃はルナルーラーをも畏怖させる。
このようにルナレンジャーの劣勢は誰が見ても明らかであり、勝負はこのまま手隠師団の圧勝に終わるのだと誰もが思っていた。
―グゴン様からの有り難い解説―
ィよう読者共、俺の名はゴノ・グゴン!クロコス・サイエンスを裏で仕切ってる真のボスだ!今回はこの俺直々に"手隠師団"のメンバーを紹介してやるぜぇ!有り難く思いやがれ!
そもそも手隠師団ってなぁ、ハルツとは別に俺へ仕えつつ『奴を殺しクロコス・サイエンスを乗っ取る』だのと叶う筈もねえバカ丸出しな夢を必死こいて追い回してたアホが、その計画の為にと作り上げてた私設部隊の名残なんだぜぇ(因みにそのアホは影で俺まで殺そうとしてたらしいんで妙な事になる前にコーストスペクターへ食わした。あとどんな奴かはすっかり忘れた)。
ともかくそんな手隠師団、名乗りは前回ラストで見せた通り無駄にヒーロー気取ってやがるが中身はうちのカス作者と同等か下手すりゃそれ以上にロクでもねぇ悪党共の集まりだ。
先ずは獅子系禽獣種の木戸だな。こいつは手隠師団最初のメンバーで、師団名の由来にもなった袖の長いパーカーで手元を隠し武器を仕込むスタイルの発案者でもある。普段からリーダーぶってて実際師団のリーダーではあるが、とにかくてめえの考えを意地でも押し通そうとしゃあがるガキ臭い性格なもんで人望らしい人望はまるでねぇ。物心ついた時から親を逆恨みしまくってたクソガキで、そこに付け込もうとした件のアホが『自由にしてやる』だのと軽く餌チラつかしただけで家族五人を一晩で皆殺しにしやがってよ。イカレてんだろ?
だがそれより更にキチってんのが熊系禽獣種の瀬戸だ。聳え立つクソのように馬鹿でかい図体をしたこいつは見た目に違わず声も態度もデカけりゃ礼儀作法もなってねぇ。というのもこいつの実感はどこぞの大地主で、バカ揃いの親親族や使用人共にこれでもかってぐれぇ甘やかされて何不自由なく育った、言わば浮世のクズ共が爆ぜろだ死ねだと忌み嫌うリア充って奴の類でよ。そんな生活続けてたもんでガキながら平和な世相を刺激がなくつまらねぇもんと断定しちまうわけだ(まぁそういう考え自体は悪くねぇし俺も同意だがな)。然し問題はそっから先でよ、何を血迷ったか『つまんねぇ世の中を俺が面白くしてやる』等と吐かしちゃ方々であらゆる悪さ―主には盗み、殺し、強姦なんか―を繰り返しやがったのさ。しかも笑えんのは実家の連中がこんなクズを見捨ても叱りも諭しもしなかったって事だな。何を仕出かそうが必死こいて揉み消してたんだが、限界が来ちまって結局元凶以外が硫化水素自殺で綺麗サッパリオダブツだ。運よく生き残った聳え立つクソを件のアホが拾ったのはその翌日だったとよ。アホの癖に仕事の早え奴だぜ。
そしたら次はチビ外殻種の雨宮だな。身体が黄色と黒なんでハチに見えるし実際奴自信もスズメバチを自称してるが実際はハナアブだ。四枚に見える翅の内後ろの二枚は後から取り付けた作りもんで、単三のアルカリ乾電池三本で駆動するんだとよ。笑えるよな?この通り薄っぺらい虚飾虚栄で生きてるような雨宮は、実年齢が実年齢だからか他人の揚げ足取っちゃあ勝った気になって粋がってるクソ生意気なクソガキさ。
まぁそれだけなら雨宮はどこんでもいるただのクソみてえな小学生だ。だが当然こいつはそんなショボい奴じゃあねぇ。というのもこいつ、小学生ながらに機械と隠密行動の達人でな。しかもその才能の全てを惚れてた同級生の女を追い回す為だけに注ぎ込み続けたっつー―まぁ要するにストーカーだな。四年の五月から卒業控えた六年の三月までの二年十ヶ月と十数日、盗聴・盗撮・自宅侵入・私物窃盗から拉致・監禁・凌辱・拷問・殺害と来て死体処理・証拠隠滅まで何もかも警察へバレずにやってのけた手腕と計画性にゃあ流石の俺もぶったまげたぜ。ま、そんな完全犯罪も三課だかの猫やらトカゲやらに暴かれちまうんだがな。件のアホはこいつが少年院から抜け出した所を拾って引き入れたらしい。
次は霊長種に見える九ノ瀬か。こいつの正体はまぁ、ここで語るようなもんじゃねぇな。保留だ。
九ノ瀬の次はカメレオン系有鱗種の榎本か。こいつは先天的にかなり妙ちきりんな異能を持ってやがってよ。簡単に言やぁ幽体離脱かまして機械の類に取り付いたり、ネット回線や電波ん中を行き来できんのさ。生まれながらそれの扱いを熟知してた榎本は遊び感覚で色々な機械を操っちゃあぶっ壊し、無差別な破壊と殺戮を繰り返した。警察共は対策へ躍起になったが、役所仕事で捕まる奴じゃあねぇ。
と、こんな具合で無敵にも見えた榎本だが、ふとした油断でパソコンのコンピュータウイルス駆除ソフト相手に深手を負って以降頭がイっちまって『自分は電子の妖精だ』等とわけのわからんことを言い出すようになる。両親は手に負えなくなった娘を医者に押し付け、頭のイカレたガキを気味悪がった精神科医は榎本を隔離病棟にぶち込んだ。そこを件のアホが強引に引っ張り出して手隠師団の一員になったって訳だ。
ここまでは突き抜けた悪党ばかりを紹介して来たが、師団にゃ例外もいる。羽毛種の如月はそんな例外の一人だ。片足ながら足の早いこいつは師団の中だと信じらんねーぐれぇマトモな奴で、人間関係ガタガタな手隠師団はこいつ一人にまとめられてると言っていい。だがマトモってのも師団内での話、こいつもまた悪党に変わりはねぇ。
まぁ妹が生きてた頃はマジでマトモだったようだが、その妹がどこぞのバカに散々犯され殺された辺りからキチっちまう。復讐鬼と化した如月は妹の仇討ちに生涯を捧げ、犯人を突き止めるついでに生前の妹にとって(如月基準で)敵と言える奴らを次々と殺して行った。相手がそれなりの面ぁしてりゃ、年齢・性別・種族問わず金で雇ったゴロツキや変態共に犯させ、その様子をネットへ流しもしたってんだから異常と言わざるを得ねえよな。そんな事ばかりやってたんで当然警察から追われてたようなんだが、運よく件のアホに拾われ罪は帳消しにされたって訳だ。本人は入団以後『もう吹っ切れた。仇討ちは不毛なだけだ』なんて言ってるが、俺にはどうも信用ならねぇんだよなぁ……。
常識人の次はマジで狂った奴を紹介しよう。狼系禽獣種の小桜だ。盲目のこいつは普段こそ人形みてーに大人しいんだが、そりゃ単に精神安定剤をこれでもかってぐれぇ打ってるからだ。素の奴はまさに野獣、正気なんざ容器ごとかなぐり捨ててるようなもんだ。まぁ元々は好奇心旺盛でガキ臭い性格なだけだけだったんだが、気に入らねえ奴らに報復するってんで、視線だけで相手を操るっつー違法魔術を習得しやがってな。あれこれやらかした挙げ句パクられ、少年院でたまたま被害者のツレに遭遇。寝込みを攻められ赤々と焼けた極太電動ドリルで両目をゆっくりじっくり刔られちまったのよ。多分その痛みで気が狂ったんだろうぜ。まぁ自業自得だな。
鼠系禽獣種の鹿野はプライドもクソもねぇ軟派な卑怯者だ。口を開きゃあ虚を吐き、常に誰かを欺き騙す事しか考えてねぇただの詐欺師。だな逃げ足だきゃ一丁前のようだが。
だがそんな鹿野より酷えのが栗鼠系禽獣種の楯山だ。こいつは持ち前の色気(と、本人は思ってるらしいが実際はヌイグルミレベルの可愛さ)で幾人もの男を手玉に取り、てめえで何の苦労もせずに贅沢しまくってた牝でよ。まぁプライドばっか高え単なる雑魚だ。件のアホも可愛いから入れたようだしな。所詮その程度よ。
さて、長引いちまったがこんなもんか。次回はそんな精鋭揃いの手隠師団が中央スカサリ学園のバカ共やツジなんとかってゴミ共もまとめてぶっ潰すからよォ!期待しとけよッ!?
※ぶっ潰しません。