第三百七十五話 戦うゲスト様-戦・隊・登・場!:後編-
やっぱこのテの名乗りにはどうしても尺使っちゃうなぁ……
―前回より・聖地平原―
芝居臭い間抜けなかけ声を伴って現れたのは、特撮ヒーロー然とした珍妙な身なりの七人(満月を背に現れた年寄り口調の少年も含めれば八人)であった。その場の空気を一変させた彼らは、呆気に取られる敵味方を尻目に、尚も芝居臭いヒーローユニットの真似事をやめようとしない。
「山河を喰らう牙、ルナレッド!」
最初に名乗りを上げたのは、赤いスーツを着た中肉中背の男であった。
「万物を射る弾丸、ルナブラック!」
レッドに続いて名乗りを上げたのは、同型の黒いスーツを着た細身の男。
「全てに耐える鎧、ルナブルー!」
続いて名乗りを上げた青いスーツの人物は、レッドやブラックより明らかに小柄であった。
「無双の斬撃、ルナグリーン!」
ブルーに続いて名乗りを上げた緑スーツの人物は、声と体格からして狡猾な人物を思い起こさせた。
「巨岩を貫く角、ルナピンク!」
グリーンの次に名乗りを上げたのは、ピンク色のスーツを着た女であった。
「海原を制す者、ルナバイオレット!」
ピンクの次に名乗りを上げたのは、紫スーツの女であった。
「轟く雷鳴、ルナゴールド!」
バイオレットに続いて名乗りを上げたゴールドは、声色からして豪快な人物と見て取れる。
「八つの才を統べる物、ルナルーラー!」
最後に件の年寄り口調の少年が名乗りを上げ、一連の動作は"まとめ"の段階に入る。
「「我ら八人、宵闇の月下にのみ生を許されし影なれど!」」
「「祖国フリサリダへの忠義と愛は並大抵のものに非ず!」」
「「そして今、祖国へ再び戦渦が広がろうというのなら!」」
「我らは戦の徒となり、祖国の敵を滅ぼし尽くす!」
「大義を掲げ修羅となるべく、戦場の月下に集う我ら!」
「「「「「「「月面戦隊ルナレンジャー!」」」」」」」
◆◇◆◇◆◇◆
ルナレンジャーなる奇人集団は身なりや登場の仕方こそ度を超して巫山戯ていたが、その実力は両軍勢の戦力を確かに上回るものであり、クロコス反乱軍のメンバーやCS社の生体兵器達は苦戦を強いられることとなった。劣勢を強いられる中ハルツの胸中はどうにもならない自体への不安で満たされた――が、その不安は唐突に掛かってきたグゴンからの連絡によって悉く吹き飛ばされる。
『おいミルヒャ・ハルツ!この草食動物めが、たかが新手の七人や八人でビクビクすんじゃねぇ!心配すんな、この日の為にと用意しておいた切り札がいる!』
「き、切り札……ですか?」
『そうだ!ほれ、出撃前に言ったろうが!代替戦力を手配しておくってよォ!まさか忘れたとは言わせねぇぞ!?』
「あ、は、代替戦力!そうでした!我が社にはグゴン様の手配して下さった素晴らしい助っ人が居られるのでしたね!」
『そうともよォ!俺の計算が確かなら、そろそろそっちに着く頃だぜぇっ!』
グゴンの言ったとおり、彼の用意した"代替戦力"であるらしい者達が―奇しくも"ルナレンジャー"なる奇人集団が嘗て登場したのと同じ位置に―九人程現れた。色取り取りのパーカーを着込んだ九人は、これまた何たる偶然か、またもやヒーロー集団のようにそれぞれで名乗りを上げ始めた。
「世界の全ては俺に通じる!隠されし暗号、木戸!」
まず名乗りを上げたのは、シルバーグレーのパーカーを着込んだ獅子系禽獣種と思しき中性的な外見の人物。
「圧倒的な力の蹂躙を見ろ!奪還された勇気、瀬戸!」
木戸に続いて名乗りを上げたのは、深緑色のパーカーを着込んだ熊系禽獣種の大男。
「卑怯者こそが勝ち残るッ!欺きの美学、鹿野!」
瀬戸の次に名乗りを上げた鹿野は集団の中で最も小柄な鼠系禽獣種であり、黒いパーカーを着ていた。
『この世の全てを私の手に。合わさる空想、小桜』
淡いピンクのパーカーに身を包んだ狼系禽獣種の少女・小桜の名乗りには抑揚や感情がまるでなく、肉声とは程遠い声をしていた。
「全てが私に跪く!神秘の覚醒、榎本!」
そんな小桜とは対称的に、青緑色のパーカーを着た華奢なカメレオン系有鱗種の少女・榎本の名乗りは実に活発なものであった。
「せめて妹の無念を晴らす!未知数の復讐社、如月!」
赤いパーカーを着たヘビクイワシ系羽毛種の少年・如月は、隻脚ながら華麗なポーズを疲労する。
「なんだろうがやってやるぜ!あの日を超えた先、雨宮!」
スカイブルーのパーカーを着た外殻種の少年・雨宮の外骨格は、色合いから獰猛なスズメバチを思わせる。
「記憶は無くとも直向きに!新たなる覚醒の時、九ノ瀬!」
赤いパーカーを着た長身痩躯白髪の青年・九ノ瀬の種族は尖耳種か霊長種辺りであろうか。
「つまらん日々にはサヨナラよッ!人造幸福理論、楯山!」
最後に白いパーカーを着た栗鼠系禽獣種の女・楯山が一連の流れを締め括り、九人は一箇所に集合し各々好き勝手なポーズを取りながら一斉に叫ぶ。
「我ら、まさしく史上最強!究極の暗殺者!」
「「「『「「「「「ヒト呼んで、手隠師団!」」」」」』」」」
某JJ卿「なに読者?手隠師団のキャッチコピーのルビが酷い?読者、それは蠱毒が奴らをまともなキャラとして扱っているという前提があるからだよ。
逆に考えるんだ。『こいつらは所詮作者にとってもどうでもいい単なる噛ませの使い捨て雑魚さ』と考えるんだ」