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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン6-エレモス編-
372/450

第三百七十二話 戦うゲスト様-投書より重要なネタがあった-





うん、投書よりこれの方が重要だったわ

―前回より・異空間の収録スタジオ―


「はい、そんなわけで今回も始まりましたツジラジ。今回はエレモスのロコ・サンクトゥス平原から全世界ネットでお送りしております。まずはスペシャルゲストのご紹介。エレモス大陸連合のタリ・ティ・クタールさんです」

「皆様初めまして、ご紹介に与りましたエレモス大陸連合のクタールです」

 突如ゲスト扱いでさらりとラジオに登場した高官クタールの存在は、香織の"エレモスから全世界ネットで放送中"という言葉共々全世界に衝撃を与えた。


『何故他の五大陸から殆ど認知されず、それ故大陸外への電波発信も不可能である筈のエレモスから全世界ネットでの放送を?』『連合の高官が出ているということは政府公認での放送か?』『いやそもそもエレモスから放送ってどういうことだよ?』――全世界からの反応を要約して纏めたならば、大凡こうなるだろうか。


「皆様、驚く気持ちは解ります。指示される一方批判派も決して少数派ではないこのツジラジに、私のような政府機関の高官がゲスト出演など俄には信じがたいことと思います。ですがこれは我ら大陸連合の総意によるものなのです。それを今からお話し致しま――っと、その前に他大陸の皆さんにエレモス大陸の詳細をご説明するのが先ですね。そもそもエレモスとは――」


 クタールはいい意味で役人らしい喋りでエレモスの起源を丁寧に説明した。


「故に我らエレモスの民は古来より名士メサの意志を絶やさぬよう、この大地を虐げられ、爪弾きにされた弱者の楽園とするよう勤めてきたのであります。しかしここ千五百年の経験と記録から判明したことは、メサの意志は大きく裏目に出てしまっていたという事です。ヒトというものが国を成すまでの数まで集まったのなら、そこには必ず争いや格差が生じます。名士メサとその配下達は民をそれらから守るべく大陸を周囲から隔絶したのです。しかし現実はどうかと言えば、過去には大国二つが些細な小競り合いを発端に戦争を繰り広げ、決着せぬまま終結したそれは今も尚各国を代表する巨大組織を代行者に据えて影ながら続いているというではありませんか!その結果として多くの罪なき民が傷付き命を落としたのです。そのような事実を知ったとなれば『最早外界との隔絶など無意味』とは誰もが思うことでしょう。少なくとも此方の青色薬剤師様に仕える部下であるという方からフリサリダとヴラスタリによる戦争継続の真実を知った我ら大陸連合は、誰もがそう確信しました。故に、恐縮ながら今ここに宣言致します。エレモスは本日より各種術式による閉鎖状態を完全解除し、カタル・ティゾルの第六大陸として他の五大陸と親密な関係を築いていくよう積極的に働きかけ、最早一切の交渉にも応じぬ戦犯達を討ち滅ぼすというツジラジの存在を広く認可すると共に、その活動に支援を惜しまないと。最早エレモスが"閉鎖され、謎に包まれた大地"である時代は終わったのです―――私からは以上です」

「まぁそんな大した事はしてないんですけどね……あぁ、はい、有り難う御座いました。では次に番組へ届いた投書を紹介します。ハンドルネーム・BIGこと風間大士さんからのお便り。『今回はラジオリスナーの枠を超えて、戦闘員として仲間を引き連れて参戦だ!見てろよダンパー!こっちにゃ幼子の心を浄化する本物マジモンの天使がついてんだ!追伸 ツジラジ制作陣―特にツジラ氏―の活躍も勿論期待してるぜ!俺の中のヒーローオブヒーローよ、その力で二つのねじくれまがった巨大組織の根本をぶっ溶かしちまってくれ!』との事です。……本当何であの子はツジラを過大評価するかねぇ……まぁ良いや。そんなわけで今回は相手の数が多いので他方面から人員補充を行いました。ご近所の方は是非死なない程度の距離から双眼鏡片手に観戦してみては如何でしょうか。それではこれより生中継パートに移ります。リクエスト頂いた影貴一座オリジナル曲メドレーに合わせてお楽しみ下さい」


 かくして異空間から戦場へ解き放たれたツジラジ制作陣とゲスト達は、思うままに敵との戦いを繰り広げていく。


―開戦数十分前・カラオケボックス『空飛ぶ禿げ頭ミスター・フライング・ボルドヘッド』の一室にて―


 傷の癒えた王将と真実を知った後輩五人(心愛・つばさ・奈々・秋・星月)は結託し、学園側に立ち向かうべく行動を開始した。『ひとまず集合し作戦を立てることが先決』という秋の提案により密かに外出した六人は、カラオケボックス『空飛ぶ禿げ頭ミスター・フライング・ボルドヘッド』の一室に集結していた。

「さて、それで作戦だが……知っての通りうちの学園は規模がヤベェ。真っ向から渡り合っても勝ち目なんぞありゃしねぇ」

「それはまぁ……言うまでもありませんね」

「そうだ。正面切って突っ込んでも即刻化け物に食われんのがオチだろう。よって――」

 王将が作戦を述べようとしたところで、彼の胸ポケットに入った携帯電話が小刻みに震え出す。

「――すまん、電話だ。悪いがここで出るぞ」

 携帯電話を取った王将は、画面もろくに見ないまま通話ボタンを押し電話に出る。

「もしもし……おう、確かに俺が屋伝だが……何の用だ?つか、お前何者だよ?……いや、どうでも良くねぇよ。いいから名乗―――っ!?おい、そりゃどういうことだ!?おい!答え――なッ、は、セルジス!?おい、セルジス!セルジス!?どうした、セルジ―――」

 電話越しに伝わってきたおぞましい情景に、王将は思わず絶句し気を失いかけた。彼を気絶の淵から救ったのは、流れや空気に左右されない心愛の何気ない一言であった。

「どうしたの?」

「――ぇ……ぁあ、おう、ん……こいつぁ、やべえ。まじでやべえことンなったっぺエ」

「何がやばいんです?」

「あー……セルジスがな……」

「セルジス……プロドスィア先輩がどうかしたんですか?」

「お……セルジスがなぁ、捕まった」

「「「「「はッ――っええぇぇぇ!?」」」」」

 未だ意識が朦朧としている王将の一言には気迫というものが微塵も感じられなかったが、それでも彼の一言は一同に衝撃を与え、驚愕の声は王将の半気絶状態をも瞬時に吹き飛ばした。


次回、王将の決意!

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