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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン2-ラビーレマ編-
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第三十七話 社会的に死んでまでこんな奴に仕えてたなんて




突如現れた少女の正体とは……?

―前回より―


 突如現れるた霊長種の少女について、繁は思考を巡らせる。


「(一体何なんだこいつは? ピンク髪巨乳ってだけで既に萌え豚ホイホイだっつーのに、紺ブルマとかどんだけ萌え豚相手の身売り志望なんだよこいつは。上は長袖白ジャージでギャップ萌えってか? あからさまにファスナー下ろしたりすんだろ? んで、兎耳で人外&家畜キャラってか? まぁいいや。問題は俺の個人的苛立ちじゃねぇ、奴が何者かって事だ。新世界の神とか何とか言ってるが、カタル・ティゾルともなると一概に厨二病だのイカレだのとは言い切れねぇんだよな……)」


 一同と少女との拮抗状態は尚も続く。


「………ラクラ……なのですか?」


 その場の沈黙を破ったのは、クェインであった。対する少女は、無表情のまま頷き返す。桃李(及び彼女の体内の羽辰)は驚愕し、言葉を失った。

 続いて口を開いたのは、ラクラと死闘を演じたニコラであった。

「へへぇ、あの馬鹿兎が随分と様変わりしたもんだねぇ!オカマ掘られたショックかい?それで女子力(笑)とやらを上げて、それで私を殺そうって!? 甘いんだよ糞餓鬼め! あんたが何処で何をどうしたかなんて知らないし知りたくもないんだけどねぇ、このニコラ・フォックスを、一ヴァーミン保有者を、その程度の浅知恵で始末しようなんて、考えた時点で負け確定なんだよっ! 第一、私の息の根を止めたとしてそこからどうするつもりだい!? あんたら如き、本気のこの二人にゃ手も足も出ないだろうさ!」


 妙に感情的なニコラだったが、彼女は次の瞬間、突如ラクラの背後に現れた巨大な右手に叩き潰される。続けてラクラが言う。


「……野狐にもなれない三流害獣如きが偉そうに……。愛と快楽に満ち溢れし我が新世界完成の暁には、こういった屑は即刻排除せねばなるまい……」

 その物言いは、以前のラクラとは全く違うものであった。

「ラクラ、一体どうしてしまったのです?

フォックスに何をされたんですか?」

「そうですよMs。一体何の真似で――

「黙れ能無し共! 我は女神パイオ・マンマンの加護を受け、隠された真の己に気づき、目覚める事が出来たのだ! 神は言われた! 『その力を以て世を犯し愛と快楽に満たされし神の御国とせよ』と! そしてまた、神はこうも言われた! 『能無しの同胞など最早不要であり、切り捨てる他無し。神の御国は汝のみの支配によってこそ完成する』と!」

「パイオ・マンマン?」

「クブス始祖であらせられる小夜子様を導きし女神さえも知らぬとは、能無しの面汚しめ!」

「お待ちなさいラクラ! 小夜子様を導いた女神の名はファウヌーラです。

パイオ・マンマン等というふざけた名では――

「くどい!」

 ラクラの背後から現れた巨大な右手は、ニコラに続いてクェインまでも叩き潰してしまった。

「Mrッ!」

 ショックの余り桃李が叫ぶ。ラクラの平手は、クェインの頭蓋骨まで悉く破壊しており、遠目からそれを悟った羽辰も叫ぶ。

『Ms.アスリン! 貴女は自分が何をしたかお分かりなのですかっ!?』

「愚問だな。能無しのゴミ一つ、処分してやっただけだ」

「それはつまり、我々兄妹をも敵と見なし、絶縁するという意味合いですね?」

「その通りだ。我が新世界に無能は不要。支配者は、このラクラ・アスリン只一人! 私こそが法であるべきなのだ!」

 声高らかに叫ぶラクラを尻目に、繁は桃李に小声で提案する。


「なぁ、小樽のご兄妹よう」

「何です?」

「ここは一つ、一時休戦としようや。仲間になれだの仕えろだの、そんなややこしい事は言わねぇからよ」

『休戦、ですか?』

「そうさ。クェインとか言う流体種が死に、あの馬鹿兎も俺らとお前らを殺す気満々と来りゃ、ここは一先ず一時的にでも結託して、だ」

「奴を始末すべきであると、そういう訳ですか」

「そうだ。実を言うと、俺らは東ゾイロスの理事長から莫大な額の報酬で雇われてんだ。だからある程度なら分け前をくれてやる。どうだ?」

『そんな、お金なんて結構ですよ』

「そうですよ。こう見えても私達、食い淵や遊ぶ金には困ってませんし」

「まじか」

「そうと決まれば早速作戦会議だね。三人とも、ついて来て。あとニコラさん、あの馬鹿一丁前に何か始めてるから死んだフリとか意味ないと思うよ」

「あら、そう?」


 こうして五人は、香織の用意した異空間で作戦会議を開始した。


―臨時作戦会議室―


「さて、それで今の状況だが」

「良くも無く、悪くも無いって感じだね」

「奴は何をするか全く予測不能。但しこちらに手を出して来る事は有り得ない。何せ認知出来ないからねぇ」


 一同は頭を捻る。


「しかもあの『謎の巨大平手』が問題なんですよね」

『詳細情報も一切不明ですからね』

「なんにせよ、世の中打開策皆無の状況なぞそうそうありゃしねえ。

ましてやあの馬鹿兎なら――……?」

 ふと、固まる繁。

「あれ?どうしたの?」

 香織の問いに答えるように、繁は外部を一方的に見渡せる窓を指差した。

「窓の外……?」

 言われるがままに外を見た一同は、驚愕の余り言葉を失った。

 窓の外、荒れ果てた校舎の中に見えたのは、身につけている物共々加速度的に巨大化を続けるラクラの姿だった。

 その光景を目にした香織、思わず呟く。


「これはひどい……かなり馬鹿げてる」

謎の少女の正体は、裏切りを決行したラクラだった!?

次回、巨大化したラクラに繁達が挑む!

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