表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン6-エレモス編-
364/450

第三百六十四話 戦うゲスト様-バシロ死す-



砂突「ネタだけどー!」

命「ネタじゃなかったー!」

―第三百二十話より・CS社敷地内―


 クロコス・サイエンスの調理師にして防衛システム・・・・・・であるリネラ・ターナー(こと記憶喪失状態のままサイボーグ化したケラス・モノトニン)とリューラ及びバシロの戦いは、真実を悟ってしまった後者が劣勢のまま長引きつつあった。

 サイボーグであるリネラの体内に備わった火器類による攻撃は"苛烈にして猛烈"の一言であり、只でさえ"数多の戦場を駆け抜けてきた元軍人"と"殺人道具として売り出されそうになった程の柔軟性を誇る人造生命体"というかなり強い筈の組み合わせですら一方的に圧倒されるばかりであった。

 無論そんな状況に陥っている大きな原因は"嘗て親しげな態度で初対面の自分達にも極上の料理を振る舞ってくれた調理師に刃や銃口を向けるという行為への躊躇い"であったが、それらを抜きにしてもケラスの内包する火力は凄まじく、リューラは全身銃創や切り傷同然の掠り傷で血まみれ、常人よりも耐久力に優れるはずのバシロですら外傷が目視出来ないだけで実際にはかなりの傷を負っていた。

 それ故に―


「は……ぁあ……クソッ、タレがぁ……」

「……ィやっ、べぇ……なッ……」

「ぅぉぃ……バシロぉ……」

「……なンだぁ?」

「おめぇ、大丈夫か……?」

「……大丈夫ッ、だろ……――……多分」

「そりゃあ……大丈夫ったァ、言わん――だろ……」

「……そう、かねぇ……」

「いや、そうだろ……」


 いざ喋ろうものならばこの有様である。リューラの衣類は血で染まり、彼女の右半身に寄生しているバシロもまたその状態さえ維持できず徐々に剥がれ落ちつつある程に衰弱してしまっている。一方有事とあらば"防衛システム"として定められたプログラム通りに一切の自我なく職務を遂行するよう仕組まれているリネラはというと、無抵抗で攻撃意志と生命エネルギーの消えかかっている二人に銃口を向けたまま動こうとしない。相手が完全に事切れるか逃げ出すまでその場で威嚇ついでに待機しつつ、ハルツの命令を待ち続けているのである。


「ケ、何だよ……ボロボロならさっさと殺すなりシカトかまして立ち去りゃいいじゃねぇか……」

「……"殺すまでもねぇ相手に無駄弾使うな"……"どんな場合でも不意打ちを疑え"……とか、そういう理由なんだろ……」

「そうかよ……なら、ここは大人しく……拠点に、連絡、を――っっ!」

 端末を操作しようとしたリューラだったが、途端に身体が大きく揺らぎスカルバーナーを落としてしまう。

「あぁ――くそぅ――もう、身体がまともに動きゃしねぇ……」

 リューラは屈み込んでスカルバーナーを拾い上げ、専用の鞘に納めようとする。その際ほんの一瞬だけ、ヒトの椎骨を模した黒光りする刃の切っ先がリネラに向けられた、刹那――その何気ない動作を攻撃行動と誤認した自衛プログラムに命じられるまま、リネラは構えた銃のトリガーを引く。


「――ぁ?」

「リューラ、危ねぇっ!」

「はっ――ぉご!?」



 宿主リューラの危機をいち早く察した寄生者バシロは、その身を守るべく彼女を突き飛ばす。そして自らも弾丸を回避せんとする――が、衰弱した身体は本来ならば何ら問題ない動作さえ取れず、結果的にバシロは被弾してしまう。


「ぐぉ、あが――!」

「バシロっ!?」


 リューラは最早完全に右半身を離れてしまった最愛の者―勢い任せとは言え夫とまで呼んだ存在の名を叫ぶ。だがその声が届くことはなく、不定形な黒い寄生生物は跡形もなく溶けてしまった。

 それ則ち、彼の絶命と同義であった。


「あぁ―バシロっ!おいバシロ!返事しろ!何か言え、何か言えコラぁ!」


 その現実を理解しながら認めたがらないリューラは、傷だらけの身体を引きずりバシロの亡骸へ歩み寄りながら彼の名を呼び続ける。それは自暴自棄な罵声となってその場の空気を虚しく揺らし続けたが、やがてリューラは怒鳴り散らすだけの気力さえ使い果たし"逃れられざるどうしようもない現実"に直面。ふさぎ込んで泣き出してしまった。


 然しながらそれに対面するリネラは尚も微動だにせず、荒れ果てた屋内には伴侶同然に思っていた最愛の友を失い悲しみに暮れる女の泣き叫ぶ声だけが響いていた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


――良うし、来たぞ!逃すなよっ!

――安心せい!逃しゃあせんわっ!

――本当逃さないでよ!捕まえ損なうと後が大変なんだから!

――回収ニ向カウ我々ノ事モ考エテ下サイヨ!

――えぇい、逃さんと言うとろうが!そう急くでないわ!



――大丈夫かなぁ、お兄ちゃん……。

――大丈夫だよ。おっちゃん達を信じよう。ね、慎一さん・・・・

――そうだ、今はまだ僕らが動く時じゃない。ただ信じて待つだけさ。バシロ・・・は生きるべき男だ。僕らが導き、救ってやらなきゃならない。

――そうだよね。

――あと、ケラスさん・・・・・もね。

――その通りだ。




――待ってろよ、バシロにケラス。お前達の人生、こんな所で終わらせはしない……。

次回、バシロ霊界へ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ