表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン6-エレモス編-
360/450

第三百六十話 戦うゲスト様-読者と作者しか知り得ない真実-




荒ぶる巨獣の正体とは!?

―前回より・CS社敷地内・屋内人工巨大池―


 クロコス・サイエンスの切り札として製造―否、改造・・され誕生した生体兵器・ドラゴマンドラ。

 産まれながらに"戦う捕食動物"であった彼にとって、自分より遙かにちっぽけな外敵の群れに襲われるなどということは日常茶飯事であった。寧ろ幼少期・・・などは自分より遙かに巨大な敵に襲われることさえザラであり、それら敵から時に逃げ延び、また時にそれらを追い払い喰い殺す。

 それこそが習わし・・・であった。

 彼と彼の一族・・は、遙か昔からそうして生きてきたのである。

 このように書くことで、読者諸君は彼の正体を幽かに予想することができるかもしれない――その予想が当たるかどうかはともかくとして。


 さて、何時までも勿体ぶっていても尺が伸びるだけなのでそろそろ"答え"を明かすとしよう。

 彼ことドラゴマンドラ―厳密に言えば、彼の属する"一族"―に与えられた本来の名は"ギガウェルミスクス・アンブラブーナ"。約3憶5000万年前―地球で言えば古生代石炭紀―に棲息していた水棲両生類"ウェルミスクス科"の一種であり、要するに化石種なのである。"歩くもの"を意味する種小名に違わず、水棲故に四肢の退化が著しい同科にあって例外的に陸上で満足に歩けるだけの脚を持つ。この事から科の中でも原始的と言われ、発見当初はそもそもウェルミスクス科に分類すべきでないとして物議を醸した種としても知られる。

 だが後にこの種がウェルミスクス科であることの確証たりえる化石が発見されたことで論争は無事に終結することとなる。その化石が何であるかはまた後程。


 ギガウェルミスクスは両生類らしく卵生で、深い池や沼に産み落とされた卵から孵化した幼生は生まれながらに獰猛な捕食者である。更に底なしの食欲故か共食いも日常茶飯事であった――と、ここまでならば単なる"獰猛な巨大イモリ"なのであるが、本種―というより本種の属するウェルミスクス科―には、他科の両生類には見られないある行動を取ることで知られていた。

 と言うのもこの科は、棲家である水場が干上がる等の危機的状況に陥ると現代の肺魚よろしく"夏眠"と呼ばれる休眠状態で過ごすことができるのである。繊維質の粘液と泥を練り合わせて作った被膜に包まり繭を形成した本科の種はそのまま再び雨が降るまで地中で耐え忍ぶというわけである。しかし時に不運な個体はこのような"夏眠"状態のまま化石化してしまうことがあり、先に述べた分類に関する論争を終結させた"確証たりえる化石"もこの状態のギガウェルミスクスである。


 さて、時数も丁度いいので生物種としてのギガウェルミスクスの解説はこの辺りで切り上げるとして、続いてはクロコス・サイエンスにてドラゴマンドラへと改造されたギガウェルミスクスについての解説をしようと思う。『何故化石種である筈のギガウェルミスクスが現代で生体兵器なんぞに改造されているのか?』『化石種の生存個体が発見されたのならそれ自体が世界的なニュースであり、その手柄を以てすれば中央スカサリ学園を潰すのに生体兵器など不要なのではないか?』これらの謎に迫ろうというわけだ。


 後のドラゴマンドラである"彼"は元々(両生類にしては)数少ない兄弟姉妹達の中でも変わり種で、一見脆弱で頼りなく見えるほどに小柄であった。だが"彼"の成長速度は凄まじく、平均的な個体の倍以上のペースで独り身のまま成長を続け、定期的な暴飲暴食と夏眠を繰り返すことでその寿命と生命力は最早不老不死と呼べるほどに膨れ上がっていた。

 他の兄弟姉妹達はおろか、甥や姪、またその子である大甥・大姪、それに続く曽姪孫、玄姪孫、来姪孫、昆姪孫、仍姪孫、雲姪孫の代までも寿命で追い越し、遂に地質年代の節目とされる大絶滅までも乗り越えた"彼"は、驚くべきことにそのような生活を何千万年、何億年と続け、各地質年代毎の主要な捕食動物や大型動物と激闘を繰り広げることとなる。

 だがそんな"彼"の生活も永遠に続くことはなかった。中世或いは近代のある日に目覚めた彼は、何時も通り空腹を満たすべく活動を開始。その道中で偶然にも幾つかの農村を襲撃してしまい、悪の魔物としてさる放浪の魔術師に討伐され辺境の洞窟に封印されてしまうのである。魔術師のかけたその術は"封印対象の内包するエネルギーを吸い出し魔力へ変換。魔術の維持に用いる"という古式特級魔術"ジュルネ・シャックス"であり、どうにもこうにも動けない"彼"は自身の終焉を悟り思考を停止する。

 しかしその数十年後、さる邪教の信徒達により勝手に信仰対象に祭り上げられ封印を解かれた"彼"は唐突に意識を取り戻し、本能の赴くまま邪教の信徒を含む百数十余りの人畜で空腹を満たすも当時の政府軍に追い回された挙げ句大砲や攻撃魔術等といった未知の攻撃により負傷し崖から海に転落。人々が死を確信する一方でしぶとく生き残った"彼"は本来両生類に適さない海洋という環境にも何食わぬ顔で適応。サメや海棲ワニ、果てはクジラをも食い殺しながらエレモスに流れ着き、疲弊しきっていた所をクロコス・サイエンスによって極秘裏に捕獲され、生体兵器ドラゴマンドラへと改造され今に至るのである。

次回、激戦の中でドラゴマンドラの記憶が!?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ