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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン2-ラビーレマ編-
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第三十六話 有資格者達は象徴の生物に何処か似ている(だから何だ)



分岐していた道筋が、今再び交わり合う!

―前回より―


「「!?」」


 それぞれ魔術によって召喚したサイスと双剣を掲げる香織とクェインによる鍔迫り合いは、突如割って入った巨大な何かによって中断されてしまった。二人は一度大きく引き下がり、壁や天井に張り付いて相手の出方を見つつ熟考する。


「(そういえばそうだった……東ゾイロス高等学校と言えば、創設者の趣味で校内に色々と罠が仕掛けてあるんだった……)」

「(見取り図によれば岩石球の罠は東側にしかなかったはず……今更増設したのかそれとも、見取り図に無い隠し罠なのか、あるいは私の入手した見取り図に見落としがあったのか……)」

「(何はともあれ岩石球は止まったみたい…)」

「(あの音、さては直進して黒板を砕いたな?)」

「(引っかかったのは繁かな?それともニコラさん?そうでなかったら残る敵二人のどっちかだけど……)」

「(正直な所、あの場の状況を確認したいのは山々だ)」

「(あの岩石球の確保は大きなアドバンテージになる)」

「(古式特級魔術『ジュルネ・デカラビア』……)」

「(もしくは『ソワール』の方が良いかも知れない)」

「(どちらにせよ、岩石球ついでに砕け散った黒板も確保出来れば良いが……)」

「(どうだろうと、頃合い見計らって動くしか無いっ!)」

「(それより何より重要なのは他の二人だ)」

「(始まって以降連絡取って無いし、そもそも状況からして連絡取れないし)」

「(数も力の内だ。とすれば二人との合流も考慮すべきだろう)」

「(でも今は)」

「(ひとまず)」

「「((あの岩石球を確保して術を当てるのが最優先ッ!))」」


 二人はほぼ同時に飛び出し、空中を飛行するように岩石球へと向かう。


 岩石球へと放たれた魔術は、全く同時に対象へ向かう。

 根本の性質が同じ『ソワール』と『ジュルネ』の二つが対を成す様に存在する古式特級魔術。その中の一つである『デカラビア』は、砂泥や岩石を操る効果を持つ。

 しかしながら、対象外の物質には、単なる衝撃波にしかならないのだが。


「むぎゃひっ!」

「「((!?))」」


 ふと響く悲鳴の根源を見た二人は、硬直の余り落下した。

 それもその筈、岩石球の正面で強風程度の衝撃波を受けていたのは、岩石球に轢かれたまま転がり続けていたニコラだったのである。

 香織は思わずサイスを落とし、本能で危機を感じ取ったクェインはその場から逃げ延びる。


「ニ、ニコラさん!?」

「あれ?香織ちゃんじゃん。何でここに?」

「それはこっちの台詞だよ。まさかニコラさんが岩石トラップに便乗して助太刀に来てくれるなんて」

「いやぁ、そんな格好の良い話じゃ無いんだけどね?」

「そうなの? じゃあ一体何が?」

 二人は繁捜しのついでに互いの近況を報告しあった。

「あの馬鹿兎がクブスだったとはね。どうりで三月ピンクにド淫乱全開なわけだわ」

「私や繁も薄々感づいてはいたんだけど、さっきの流体種が色々吐いてくれたおかげで確定的な情報を得られたよ」

「クブスねぇ…悪い思い出しかないわ」

「大丈夫。私も悪い話しか聞いてない」


 そんなこんなで二人の繁捜索は続く。道中、香織とクェインによる魔術合戦(と、表現出来るかどうか曖昧な乱戦)の弊害で起こる天井や壁の崩壊に悩まされた。

 時間経過と共に複雑さを増して行く大教室(何故これ程に巨大なのかと言う程に体積が広い)の中をさ迷うこと数分。二人は積み重なった瓦礫の横を通りかかる。


 一方の繁はというと、変身を解除して瓦礫の上で黄昏れていた。

「(さて、変身解除したら全裸とかそういう弊害が無いのは救いだが、これからどうする? 二人を探すか、それとも残りを潰しにかかるか……って、居たじゃねぇか)」


 繁は瓦礫の山を下りながら、二人に呼び掛ける。かくして『ツジラジ』スタッフ三名が揃い踏む形となり、彼らは再び諸々の事を報告しあった。


「成る程。やっぱりヴァーミンの保有者が絡んでたんだね」

「そうだ。相手は四番ゴキブリ、油脂生成と温度操作と高速移動が厄介な奴だ。それはそうと、そっちも魔術師の流体種にビッチの禽獣種……しかも悪名高きクブスの奴等とは、油断ならんな」

「流体種はともかく、禽獣種はしばらくどうにかできそうだけどね。あいつ馬鹿だし」


 適当に報告や雑談をしながら歩みを進める三人だったが、ふと不穏な気配を察知した繁が動いた。


「避けろ!」


 瞬時に二人を左右に突き飛ばし、自らも大きく後ろに跳躍する。

 その直後、爆発音を伴って巨大な炎の塊が地面に激突し、砕けるのに伴って炎が広範囲に広がった。

「おや残念、直撃するかと思ったんですが」

 天井へヤモリのように張り付きながらそう言うのは、破殻化を解除した桃李であった。

「あの衝撃を受けて生き延びたか」

「それはお互いの事でしょう?我々は害虫というだけあり、そう簡単には死にませんし」

「ほうほう、まさかこんなに若い子が同胞とは驚いたねぇ」

「……その髪型……ニコラ・フォックス先生ですね?」

「ははぁ、私を知ってるとは随分とマニアだねぇ」

「貴方の本は高校時代読破しましたから。あの文体と、冗談にならないようなくだりであえてふざけるユーモアが大好きでしたよ」

「そりゃどうも。貴方も腐臭の肉塔王なんかに肩入れなんてしてないで――」

 ニコラの背後で浮き上がった巨大な白い四角柱が、彼女の頭部を刈り取るように叩き潰す。

「その名で私を呼ばないで頂けますか。不快指数が、上がりますのでね……」

 壁の隙間から這い出てきたクェインが言った。

「何言ってんの。全世界の人々の不快指数上げまくったのはアンタ等じゃん」

「不快指数を上げた? はて、何のことでしょうかねぇ。私はただ、小夜子様の御意思に従い、クブスの教義に基づき世界を快楽で満たそうと暗躍していただけなのですが」

「レイプで他人狂わせまくってただけの変態クズ集団がよく言うよ」

「不人気を王政批判で補おうとしたマゾヒストの貴方に言われるのは心外というものですねぇ」

 しょうもない罵り合いが白熱するかと思われた、その時。

 轟音と共に教室の壁が凄まじい勢いで吹き飛び、更にその余波で瓦礫が悉く崩壊する。

 濃い土埃は五人から視界を奪うが、その中でも彼らはどうにか降り注ぐ瓦礫を回避し続ける。

 土埃が晴れた先、丁度差し込む太陽光をバックに佇むのは、霊長種と思しき少女であった。顔つきから察するに年齢は15~18程度だが、胸や尻は年齢不相応に肉付きが良い。

 頭髪は薄いピンクのショートカットで、白の長袖ジャージにブルマという井出達だった。更に飾り物であろうか、頭頂部から白い兎の耳が生えている。

 類人形質の強い禽獣種ならば耳は即頭部から生えるので、一同は各自飾り物か何かだと判断した。

 盛り上がった瓦礫の上に立つ少女は、静かに言い放つ。



「無能は、いらない。新世界の神は、ひとりでいい」

突如現れた少女の正体とは!?

次回、思わぬ展開に!

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