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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン6-エレモス編-
352/450

第三百五十二話 戦うゲスト様-二度と使われない切り札-





最強無比の『決して使われない切り札』が動き出す……

―前回より・中央スカサリ学園校舎内―


「シえァっ!」

「ぉおっとゥ!」

 新たに目覚めた"幻想体"の力でセミともカニともつかない謎の生命体に変じた繁の右手先端部から放たれた赤色の光線を、ランゴはギリギリの所で何とか回避してのける。光線の触れたコンクリートの壁は瞬く間に凍り付いてしまった。

「チぃクソう!ならこっちでどうだぁ!?」

 続いて繁が左手の先端部から放ったのは、赤い光線よりも細めの白い光線であった。太さに見合わぬ火力を誇る光線の照射を維持したまま、繁は腕を薙ぎ払うようにしてランゴを両断せんと狙う。しかしスズメバチのスタミナと機動力を有するランゴは光線を余裕で避け続ける。

「(く、やっぱ俺飛び道具の扱い下手だな……もっとなんか別の技使ってみっか)」

 かくして繁はランゴを練習台代わりに自身が幻想体の力によって得た様々な技を試していく。

 それらは先程の赤白光線の他、目にも留まらぬ早さでの瞬間移動とそれを応用しての分身、特定の攻撃を反射する作用も持ち合わせているらしい障壁、範囲こそ狭いが威力は絶大な重力操作、浮遊とそれの応用による飛行、火炎放射、衝撃波等である。

 何れも抗力は絶大だったが、瞬間移動・分身・障壁・重力操作といった技の持続時間たるや世辞にも長いとは言えず、繁はこれらの使用を一旦保留にした。運用方法については後々考え直せばいいと判断したのである。

「(さて、そうなるとやっぱ飛び道具と格闘だよな。鉗脚は掴むより切る形だから上手く扱わねーと――っぉう!?」

「――んっ!?」

 突如校舎内に響き渡る、大型捕食性脊椎動物のそれと思しき破壊的な咆哮。その衝撃はその場に居た二人を戦慄させ、一瞬異能の制御が不安定になった保有者達の姿が大きく揺らぐ。

「な、何がどうなってんだ……?」

「あー、こりゃいかん。まずいぞ、まさかこのタイミングで"彼"が来てしまうとは……」

「何だ、"彼"って?何か知ってんのか?」

「あぁ、知っているとも。"何か"に留まらず"何もかも"な。"彼"は名を――」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「――"フォルティドラコネム・ウェールス"。察しの通り、我が学園が産み出した生体兵器の一体だ」

「聞いたことのない名前ね。襲撃前に中央スカサリ学園そちらのデータを部下に粗方調べさせたけど、そんな名前出てこなかったわ」

「それはそうだろう。奴は元々学園が来たるべきクロコス・サイエンスとの戦での切り札として育てようとしていたものの、想定外のトラブルにより手放さざるを得なくなってしまった個体だからな」

「想定外のトラブル?」

「反逆―いや、脱走と言うべきか。孵化から僅か数日のことだったそうだ。水槽を破壊した奴は飼育員を喰い殺しそのまま樹海へ脱走したという。発信器を埋め込んでいた為に位置は特定できたが設計ミスにより殺処分もままならず、仕方なく大規模な結界の内部へ囲い込んだわけだが、それにも不備が見受けられてな。術者は結界の崩壊と奴の脱走を必然と予測し、期日までに何らかの手を打つよう理事長に進言したんだが……脱走はもっと先だった筈だろ、話が違うじゃないか……」

「こういうのは期日が早まるもんよ。まぁ脱走ったって必ずしも私に攻撃が飛んでくるわけじゃ―――」

 慌てふためき狼狽えるオップスとは対称的に何とも暢気でマイペースな香織の言葉は、壁一枚を隔てた向こう側で響き渡った凄まじい破壊音と再びの咆哮によって悉く遮られた。

「――ないにしてもやばそうね」

「"やばそう"なんじゃない、"やばい"んだ。奴はとにかく凶暴で身勝手だからな。視界に入れば何をされるかわからんし、何をされても文句は言えんぞ。いや、厳密には"文句を言う隙もなく殺される"というべきか」

「だったらもう私らこの場で戦ってる場合じゃなくない?」

「そうかもしれんな」

「っていうかさっき崩れた場所って、うちの従兄弟とあんたの上司が戦ってた場所だよね?」

「そうかも……そうだったか!?」

「うん。不確かなんだけ―「何てこった、こうしちゃおれん!おい青色薬剤師、戦いは中止だ!お前もツジラを助けに向かわねば、どうなっても知らんぞ!」

「御忠告どうもー」

「ドライシスさん、今行きます!どうか私の到着まで無事で居て下さい!」

 酷く取り乱した様子のオップスは、一目散に問題の部屋へと向かっていった。一方その場に取り残された香織はというと、依然としてマイペースな態度のままゆっくり歩き出す。

「はぁー、何て脚力。しかもあの勢い、半端じゃないわね。もう主従とか通り越して、恋仲に発展しデキてんじゃないのあいつr――「ご明察。何か成り行きだが奴らは既に恋仲っぽい雰囲気のようだぜ」

 突如背後から音もなく現れそう語るのは、我らが主人公・辻原繁。

「っ――吃驚したじゃないのよ。一瞬敵かと思ったわ」

「そりゃ悪かったな……んで、どうするよこれから。俺ぁついさっき奴―"フォルティドラコネム・ウェールス"だったか―アレを実際にこの目で見たんだが、ありゃやべえぞ。見向きもされなかっただけ助かったが、目ぇ付けられたら確実に死んでたからな」

「あんたがそこまで言うって相当やばいって事ね……んじゃ、一旦拠点に戻って作戦を立て直しましょうか」

「あぁ、それがいい。ネルンボ討伐は遅れようが、そもそも所在すら判明してねー代物だ。無闇に動き回って損害を被ることに比べりゃ屁でもねぇ」

次回、玲VSファープ!

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