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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン6-エレモス編-
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第三百五十一話 戦うゲスト様-爆生を超えた先にあるもの-




破殻化→爆生→?←今ここ

―前回より・中央スカサリ学園校舎内―


「なんなんだこりゃあ……」

「ほう、そうなったか……」


 その姿は所謂"セミ"であった―――少なくとも、頭部だけに限れば。

 ここで"頭部だけ"と表記したのは無論それ意外の部位が蝉からかけ離れた形質をしているからに他ならない。当然ながら大まかな骨格はホモ・サピエンスであったし、外観は節足動物としか言い様がないほど外骨格に覆われていた。ただ、問題なのはその詳細である。

 先ず頭だが、これは先程も挙げたようにセミそのものである。それは繁も、以前の爆生で感覚を掴んでいたために理解できていた。何故サシガメへの破殻化がセミへの爆生になったのかはともかくとして。

 次に胸から腰にかけての胴体だが、上下に引き延ばされたかのように細長くなっている。(元の骨格から三割山勘で推測した)臍より少し上の位置で滑らかに括れており、背部より腹部の色が薄く体節のあるその形状は大蛇の胴を思わせた。

 そして最も変異が激しいように感じるのが手足である。先ず両足だが、心なしかそれらは延長されており、どこかバッタの脚を思わせる。カメムシとバッタはまるで別物だというのに、である。そしてこの時繁は気付いていなかったが、今の彼の脚はホモ・サピエンスの骨格構造からは考えられないほど自由自在に動かせるし、外骨格に埋もれたと思しき足指さえより器用な動作が可能な形で足に格納されている。即ち繁の脚は第三、第四の腕として機能するようになっていたのである。

 一方の両腕にも若干の延長が見られ、両手に至っては指さえなく完全な鉗脚(カニやサソリに見られる、所謂"鋏"の形をした前脚)と化していた。


「おめでとう、図らずも高みに進んだようだな」

「あ?高みだぁ?いきなり何言ってんだお前。こちとら破殻化しようとしたら変な姿になっちまって内心困惑中なんだよ。何かしら説明する気があんなら順序立てて説明しろってんだ。知ってんなら教えろ、俺のこの姿は何だ?」

「よしわかった。知ってるから教えてあげよう。君のその姿は"幻想体"という。爆生の上に位置するものの一つだ」

「幻想体、ねぇ……」

「僕も実際に習得したわけではないが、以前夢に出た先代のワスプ保有者を名乗る浮遊霊に話を聞いてね。その姿は何れかの次元と時代に神話・古典として扱われた作品に登場する象徴種の形質を持つ存在に似ていて、総合的な能力もその存在に基づくんだったかな」

「何れかの次元と時代って何だよ。それだと何でもアリじゃねーか」

「心配することはない。さっき作者から連絡があったんだが、君のそれも含め作中に登場する幻想体の元ネタは読者に充分理解可能な範囲のもので統一するらしいから」

「信頼していいのかそれ……」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「デおルぁっ!」

「ぬをっ!?」

 跳び上がったオップスの振り下ろした鈍い黄金色こがねいろのバトルアックス―もとい、掌握斧シンザンの刃を、香織はすんでの所で上手く回避する。優雅ながらも重厚な刃は床材を粉砕し深々と突き刺さる。元より格闘戦を取り入れた魔術師であるが故か体格にしては若干筋力が低めなオップスは斧を引き抜くのに少々手間取っているらしく、この間に香織はオップスと距離を取りつつ障壁と身体能力強化の魔術を発動することで列王の輪にエネルギーを溜め続ける。

《よし溜まった!賢者よ、力が十分に溜まったぞ!これで鎧を展開し技を打つだけの余裕ができたというわけだ!》

「うん、それ私が一番把握してる。それ私が一番把握してるから」

《わかっているのならば早く鎧を展開せんか!余のロッソ・スパーダであの黄色鬼めを細切れにしてやるのだ!》

「いやぁ、スパーダ使うならここはロッソあんたよりノッテアルトゥーロでしょ」

《何だと!?賢者よ、そなたよもやこの局面にあって余よりあれを選ぶとは、柄にもなく血迷ったか!?打点も乳も余を下回るあのアルトゥーロを、よもやこの場で!?》

「いや乳関係な――《はッ!まさか……まさか賢者よ、そなたあれか!?貧乳好きか!?己が巨乳である故に、対照的な体格の相手を選んだ方がバランスが取れて絵になるとかそういう心理か!?》

「……あんたは何を言ってるのよ。そんな事微塵も思ってないんだけど」

《む、そうなのか!?》

「当たり前でしょ……そもそも鎧として展開するのに精霊本来の姿とかあんま関係ないし、っていうか私ヘテロだし」

《うぅむ、それもそうか》

「そもそも作戦に起用する人員の選定基準が体格ってどうよ」

《ツィンショーフゥとかいう組織を率いる海軍将官共は大体そうなのではないか?》

「何だってそこで中国語読みなの……いや、確かに言われてみればそんな気がしなくもないけど勝手なイメージでそういうこと断言しちゃ可哀想でしょ。抽選とかレシピとか必死なんだし金はさほどかからないまでも何だかんだリスキーな世界に生きてるんだし」

《ふん、上玉の艦船おなご共と毎日あんなコトやこんなコトまでヤり放題なのだ。この程度の風評被害、あって然るべきであろう?》

「相変わらずね……」

《そも、この意見にはアレクスのみならずあのクソ忌々しい毛玉アメイウス青い犬っころクーラン年増の魔女メーディエイもやし侍ミキシなどという連中までも同意したくらいだ。余を疎み嫌うこれらより同意されたということは、つまり余の意見がそれだけ筋の通ったものだということだ。違うか?》

「まぁ、あんたがそうだと思うんならそうなんでしょうよ……曲がりなりにもリーダーだもんね、あんたって(アレクスは宥めるつもりで適当に流したんだろうけど、他の奴らは何やってんのよ……)」

《ふふん、そうであろう?何せ余、カドムより定められし鉄側精霊の指揮官であるからな。本気を出せばこの程度どうといことはないのだ。さてそういうわけで賢者よ、早速だが余の鎧を――

「行くよ、アルトゥーロ」

《畏まりました、我が主よ》

《Open up-Blass Saber》

《……結局そうなるのか……》

破殻化→爆生→幻想体←今ここ(但し繁に限る)


次回、遂に決着なるか!?

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