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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン2-ラビーレマ編-
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第三十五話 女神様の言うとおりっ!




一方そのころ、ニコラの非道な罠にかかったラクラは…

―前回より―


 今の今まで自慰と騎乗位性交を主軸に、満たされることなき性的欲求の処理を行ってきたラクラには、肛門性交の経験などと言うものが一切無かった。この事はクブス一派の教義に反するものでなく、感染症のリスク等もある程度軽減できる為、彼女にとっては都合がよかった。


 しかし今回ばかりは、それが裏目に出てしまったようである。


 自分の大便より太いものを通した事の無かった彼女の肛門にとって、角を削った角材はあまりにも太すぎた。故に女性器では余裕に快楽と感じる刺激も肛門では激痛へと成り代わり、その痛みは彼女を気絶にまで追い込んでいたのである。

 意識の飛ぶ中、彼女は謎の声により起こされる。


――クラ、ラクラ。起きなさい。


「(ん……ここは……一体?)」


 目覚めたラクラは、光り輝く幻想的な花畑に居た。


「ここは……まさか、天国? もしかしてラクラ、死んじゃった?」


 立ち尽くすばかりのラクラ。

 しかしそこへ、穏やかな女の声がラクラに優しく語りかける。


『ラクラ、ラクラ、漸く起きたのですね。辛かったでしょう?でももう大丈夫です』

「誰?」

 ラクラが振り向いた先に居たのは、肌の白い全裸の女だった。年齢は見たところ20~30代程。膝の間接まで伸びたピンク色のロングヘアはウェーブが掛かっており、その体つきは諸々に於いてラクラ以上に肉付きが良かった。

というか、細い胴体や手足に対してアンバランスなほど乳房が肥大化している。


『私は性愛と快楽の女神パイオ・マンマン。クブス一派が開祖・小夜子の甘美で気高き意思の象徴』

「女神、さま……?」

『ラクラ・アスリン、我が愛娘よ。貴女はこの世にある他の何より尊く崇高なクブス一派の栄光が為に戦わねばなりません。その戦いは辛く厳しいものとなるでしょう。ですから私は、貴女に至高の力を授けます』

 女神の言葉を受けたラクラが静かに頷く一方、他の面々は未だ戦場にあった。


―蟲と虫―


 唐突に繁の全身から解き放たれた衝撃波は、元々軽い小樽兄妹を軽々と吹き飛ばした。

「す……凄まじい力……無自覚初級者かつ見よう見まねとはいえ、これだけの威力とは…」

 地面に倒れ付す桃李は、ふと衝撃波の根源に目をやる。

塵と土煙の舞う中にたたずむのは、当然我等が主人公・辻原繁…である筈なのだが、土煙が晴れるに従って現れたシルエットは、人を乖離した異様なものであった。

 完全に土煙が晴れ、露になったその姿を見て桃李は絶句する。しかし誰より驚いていたのは、他でもない繁自身であった。


「(何だこいつは…? これが俺の、パワーアップって奴なのか?)」


 見様見真似の上、何が起こるかも全く解らない状態で全身に力を入れてまった繁は、桃李以上に人を離れた姿になっていた。


 全体的なフォルムこそ長身痩躯な人間のそれであったものの、全身黒い外骨格に覆われ、手足も節足の様な形状であった。頭は滴型とも多角錐とも言える形状で、首と呼べるものはない。

 背には折り畳まれた翅が備わり、腹部側面からは細い節足が生えている。

 そんな姿になった繁が驚きとある種の感動により立ち尽くしていると、桃李が言った。


「破殻化成功おめでとうございます。これで貴方も晴れて並の保有者の仲間入りです」

「破殻化? この変身の事か?」

「はい。能力への順応が進行したヴァーミン保有者には、象徴である生物種の力を最大限に活用する変身能力の使用が許可されるのです」

「それが破殻化か」

「はい。『外殻を突破し新たな己へと変化する』という意味合いでしょうね」

「そうか」

「しかし驚きましたよ。まさかこれ程早期に破殻化を達成する保有者が居るとは」

「……何故俺の破殻化が早いと判った?」

「それは判りますよ。先程の貴方の動向や、私の破殻化を見た時の反応がまず素の驚愕でしたし、外皮の質感も違いましたし」

「質感まで見通すか。流石だ。兄妹揃って敵なのが惜しまれる。お前が居れば良いラジオ番組が作れるだろうに」

「私達もそう思います。貴方と一緒なら、きっともっと大きくて面白い事が出来たでしょうに」

「まぁ出来ねー事あれこれ言っても空しいだけだ。敵対しちまった事を悔いつつ、最後くらい派手に行こうじゃねぇか」

「そうですね。今は出て来れませんが、兄もそう言ってます」

「んじゃ一丁、やっちまうかァ」


 桃李は背の翅で空へ舞い上がり、追う繁目掛けて炎の塊を放つ。

 中枢に油を仕組んだメラミンスポンジの球体を据えたそれは、突風はおろか流水でも簡単には消せない火力を誇る。

 しかし、それらが飛来するべき時、繁は既に姿を消していた。


「(何処へ消えた……?まさか、光学迷彩ッ!?それともまさか……)」

 考えを巡らせる桃李に、内部から語りかける者が居た。兄・羽辰である。


『(桃李、彼は上です! 天井にしがみついて、今にも飛び掛からんとしています!)』

「(上…? …!)」


桃李が気付いた時、彼女の首は繁の腕四本に捕まれていた。


繁は空中で身体を巧みに高速回転させ、桃李を床に投げつける。

投げつけられた桃李は、立て続けに降り注ぐ溶解液を、凝固させた油の盾で受け流す。

当然盾は溶解液の前に成す術も無いが、桃李はそれを、流体力学の知識を生かした造形と裏側からの素早い補強で補い繁に対抗せんとする。


お互い譲って精々数歩という戦いが続くも、その終わりは当人達の意思とは無関係に訪れた。


桃李の身体を支えていた床が、盾を縁取るようにして丸ごとえぐられてしまったのである。


「!? (しまった! まさかこんな事になるなんて!)」


 桃李はまたも出遅れた。落ち行く床の上で天井を見上げれば、既に繁がドロップキックを放っている。軽く硬い外骨格同士がぶつかり合い、桃李の下腹部に衝撃が走る。

 そのまま二人は下の階まで落下していくが、事態はここで思わぬ方向へ進んで行く。

 下の階の床に差し掛かる直前、突如横から凄まじい運動エネルギーを内包した物体が現れたかと思うと、二人を勢い良く跳ね飛ばしたのである。

 二人を跳ね飛ばし、上の階の床材兼下の階の天井であった建材の塊を打ち砕いた末に黒板へ激突し動きを止めた。


「いでぇ……一体何が起こったってんだ……?」


 繁が辺りを見渡すと、そこは散々に散らかった大教室であった。

 しかもどういう訳か―否、訳そのものは分かっているのだ。兎に角魔術に伴って発生する残り香がそこらじゅうから漂ってくる。


「いや、冗談抜きで……何が何だよ?」


 繁はひとまず、隠れて様子を見ることにした。

遂に目覚めた繁の新たなる力!

次回、戦いは思わぬ方向へこじれ始める!

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