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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン6-エレモス編-
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第三百三十四話 戦うゲスト様-ファンタジーのお約束-





"胎児"と"惨事"の実態とは!?

―前回より―


「う、そ……弾丸が……確かに、防いだ筈なのに……」


 零華は動揺していた。弾丸が当たったことにではなく、まして防御に失敗したことにでもない。

 ただ、"弾丸がコートを擦り抜けた"という、ほんの一瞬目にした出来事――たったそれだけのことが、冷静な彼女を大変に動揺させていたのである。


「あーらら、立ち止まっちゃった。撃たれたのがそんなにショックだったのかしらねぇ」

「いや、どちらかというと"胎児"の弾丸そのものに驚いたんじゃないですかね。ほら、あれって大体の障害物は擦り抜けてしまうでしょう?確実に防いだ筈の攻撃が防御を擦り抜けて飛んできたらそりゃ誰だって吃驚びっくりしますよ。ましてその瞬間を直に見てしまったのなら立ち止まりもするでしょう」

「それはそうなんだけど――「セイッ!」

 アイルの言葉を遮り斬り掛かってきた零華であったが、彼女の斬撃はアイルの右腕より―アオザイの袖を跡形もなく引き裂いて―飛び出してきたロボットアームの先端に据え付けられた白い刃によって弾かれてしまった。

「―――ッッ!?」

 隙を突いたつもりが思わぬ反撃を受けてしまった零華は、咄嗟の気転で弾かれた衝撃を上手く利用しその場から飛び退いた。一方のアイルは引き裂かれたアオザイの袖を外しながら淡々と言葉を紡ぐ。

「話し込んでいる隙を突いて斬り掛かる気転と立ち直りの早さは認めるけど、月並みな作戦じゃあたし達は殺せなくってよ」

「"惨事"の自動防御機能オートガードシステムは攻撃の意志を察知し防御に転ずるもの故、"胎児"のような必中攻撃こそ不可能であるものの貴女の刀を弾くくらいの事は余裕なのですよ」

「へぇ、それはまたご丁寧にどうも……で、惨事とか胎児っていうのはまさか、その銃とか刀がついたアームのこと?」

「如何にも。これなるは『双子使徒』――"胎児"と"惨事"から成る一対の腕輪」

「白が惨事で、黒が胎児ね。まぁこれだけじゃさしてお洒落って訳でもない地味なだけの腕輪、念じれば攻撃や歩行補助用の脚が幾つか出てくるけどそれも大したことはない、そんな今一パッとしない武器なんだけど……一度固有効果を発動すれば話は別」

「変形した双子使途による攻撃は本質が第一系統でない者に対し一定エネルギーでの確実な破壊をもたらします。惨事の自動防御機能は例外的に相手の攻撃を弾き、意志のない準攻撃を保脚で回避するものですがね」

「OK、つまりさっきの銃弾が私のコートを擦り抜けたのは―――「言ってしまえば弾丸が特殊だったというだけの話です」

「うん、それは分かった――んだけども……系統って何?」

「あら、知らない?まぁ無理も無いのかしらね、かなり的確な癖に専門家の中でも相当マイナーで知名度の低い学説だし」

 会話文ばかり続くのもどうかと思うので地の文で解説するが、アイルと永谷が零華に言い聞かせた"系統"とは、言わば多くのファンタジー作品に於ける"属性"に似たものである。世界中の"カドム・イム"達には古来からこの概念を熟知しており武器の固有効果に組み込む技術も確立させていたが、(一説に依ればカドム武器の持ち主と学者との関わりが薄かった為に)長らく表沙汰にならなかった為か魔術・学術の両界隈でこれらの概念の存在が囁かれ始めたのはつい最近になってからのことである。

 正式名称を"精神系統"とか"心理系統"という(未だまともな正式名称すら定まっていない)この概念は、ヒト(意志を持つ生命体全般とする説あり)の人格や心理を魔術或いは学術的な手法・観点から解析し大きく六或いは七通りの分類をしたものである。それらは人格や思想、動向と言ったようなものに限らず、主だって適性のある(或いは好んで習得・行使する)魔術や発現する異能の傾向をも左右する。これらの詳細な分類については諸説あるが、一般的に定説とされるものを以下に挙げる。

 第一系統:強欲、邪悪等ネガティブな性質が強いが、それらを理解し背負いつつも信じるものに向かって突き進む意志の強さも意味するなど一概にネガティブなものではない。魔術としても破壊力・殺傷能力に特化したものに適する。

 第二系統:高潔、善良等ポジティブな性質が強いが、それらに陶酔する余り独善的な思想のままに悪と化す者や、全面的に一般的な常識を外れた異常者もこの系統に属する事がある。魔術としても浄化・治癒に適し、光線等を用いる事もある。

 第三系統:寛容、真面目等の性質を持ち、転じて融通が利かない堅物としての側面もある。魔術としては大地や岩石に関するもの、防御的なものに適する。

 第四系統:思い遣り深さ、冷静等の性質を持ち、転じて消極的な臆病者としての側面もある。魔術としては流水や氷雪に関するもの、戦略的なものに適する。

 第五系統:熱意、積極的等の性質を持ち、転じて気性が激しく攻撃的・暴力的な側面もある。魔術としては火炎や高熱に関するもの、攻撃的なものに適する。

 第六系統:陽気、活発等の性質を持ち、転じて自由奔放故に怠惰、主体性の欠如といった側面もある。魔術としては風や大気に関するもの、補助的なものに適する。

 第七系統:存在が仮定されているだけで発見例がなく、その存在を実証する明確な根拠もない謎の系統。一説によれば六神器の内の三種がこの系統を持つとされる。

 また、一個体が複数の系統に属する事もあるらしいが、一個体が同時に属する系統の上限数には諸説ある(定説としては二種類或いは三種とされる)。


「で、私はその第一系統に属してないと」

「厳密には"第一系統以外の系統にも属している"といった所ですかね。貴女様は第一系統と第六系統に属していますので」

「へぇ、第六かぁ……(まぁ、事故前の性格はそんな感じだったし強ち間違いでもないか……)」

「ちなみにあたしも第六で、永谷ちゃんは第四よ」

「え、あんたも第六なの!?」

「や、何でそこで露骨に嫌そうな顔するわけ?そんなにあたしと一緒の系統に属してるのが嫌?何か地味に傷付くんだけど」

「まぁ、アイル様なので仕方ないでしょう」

「永谷ちゃんまで何言ってるの!?今のはちょっと本格的にサクっと来たんだけど!」

「さて、種明かしも終わったことだし再会しましょうか。次回辺りで決着つけないと。七時半に剣道の稽古があるの」

「さらっと流された!しかもメタ発言つきで!っていうか剣道の稽古って何よ!?そこは普通空手でしょ!?」


 そんなこんなで戦闘は再開される。

次回、決着(させたい)!

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