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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン6-エレモス編-
333/450

第三百三十三話 戦うゲスト様-しっぽのひみつ-



永谷誕生秘話(冒頭のみ)

 アイル・ア・ガイアーの尾を成すボールニシキヘビの永谷。元は動物への知能強化や言語能力付与等による"ヒト化"の実験に用いられた被験体の一匹であった彼女は、同じくヒト化実験によって知性と言語能力を与えられた動物達共々クロコス・サイエンスの医務室に於けるマスコット的存在であり、室長であったアイルとは特に強い絆で結ばれていた。

 その絆の強さはアイルが"反乱の四凶"として生体強化改造を受ける事が決まった際、自らもクロコス反乱軍のメンバーとなるべく生体強化改造を希望したほどである。とは言え件の技術は元々ヒトの肉体を想定したものであり、身体が先天的にヒトでない彼女への施術は危険と判断されてしまう。

 しかしそれでも諦めきれずアイルの役に立ちたいと思った永谷は、彼への生体強化改造の一環として彼と融合し"尾"となったのである。


―前回より・地下駐車場―


 剣士レイカ魔術師アイルによる高速の戦いは尚も続いていた。

 アイルは蜻蛉トンボの翅をフルに動かし、まるで瞬間移動を連発しているかのような動きで地下駐車場の薄暗い空間を自由自在に飛び回る。当然飛び回ってばかりという事もなく、得意の風や大気に関する魔術で作り出した飛び道具(例えば圧縮空気による不可視の矢、塵や砂粒を固めた弾丸等)で零華を狙撃せんと狙う。

 対する零華はアイルのような飛行能力こそ持ち合わせていなかったが、持ち前の機動力に任せて地下駐車場内を縦横無尽に駆け回り(そして跳び回り)、刀やコートでアイルの飛び道具を凌ぎながらひたすらに攻撃の機会チャンスを掴み取るべく待ち続ける。


「はぁ、思ったより当たらないわねぇ」

「全然の間違いでは?というか車への被弾がそろそろ洒落になってませんけども」

「大丈夫よ。社内に敵を入れるのなら社長だってこの程度は想定の範囲内でしょうし、どうせ保険下りるし」

「保険とかそういうレベルじゃない気がしますけど」

「大丈夫よ。生体災害に巻き込まれて踏み潰されたとか爆破されたとかでも保険下りる時代だもの、窓ガラスの百や二百くらいはどうってことないわ」

「いや、百や二百もガラス割らないで下さいよ」

「それより永谷ちゃん」

「(さらっと無視されたよ……)何です?」

「もうそろそろ"アレ"が撃てると思うんだけど、どうかしら」

「アレというと、どっちです?」

「どっちってそりゃあ、"胎児"の方よ。あの子のスピードじゃ"惨事"はまともに届かないでしょ?」

 アイルがそう言うのと同時にボタンで留められていたアオザイの左袖が外され、色白で女性的な色気の漂う細腕が露わになる。その二の腕には黒い腕輪が填められており、これこそ世界中に存在する"カドム・イム"の一人が造り上げた武器の一つ『双子使徒』が片割れ『胎児』である。生体強化改造を受けたアイルが身に付けているこの武器は片割れの白い腕輪『惨事』共々本来永谷の持ち物なのであるが、彼女の意向によりアイルが身に付けている。

「そう言われるとそうですね。"惨事"はどちらかと言えば反撃カウンター向けですし」

 目を閉じて力無く垂れ下がった永谷は、『胎児』の固有効果を発動する。細く細い腕輪が質量を完全に度外視したかのように展開・変形していき、瞬く間に腕へ据え付けられたSFめいた黒い砲台を形成する。

「(あれは……銃!?奴らあんなものまで用意してたなんて、どんだけ飛び道具好きなのよ!?)」

 砲台が機関銃のような連射式のものか、或いは直線的な光線を撃ち出すタイプのものであろうと予測した零華は、予めリューラから教わった"銃砲の照準から逃れる動作"を実行に移す。これで狙いはつけられなくなっただろうし、回避に失敗したり追尾式の弾丸であっても血風丸やコートで防げる。被弾の心配は殆どないだろうと、零華は高を括っていた。

 だが、砲台に変形した"胎児"の機能は零華の予想という、薄平たくも凄まじい強度を誇る防護壁を、思いも寄らない(或いは最早、実質的に有り得ないであろう)死角から潜り抜けてきた。


 撃ち出された弾丸は、ただの一発。

 サイズや形状などは砲台の見掛けに依らず一般的な拳銃の弾丸に似ていて、速度もその程度。

 しかし失速することなく、目標追尾仕様故の曲がりくねった弾道を描きながら零華を追尾する。

「(そんな、予想と全然違うっ!?)」

 "違う"を通り越して"真逆"ですらあったその弾丸に戸惑う余り、零華はこれの接近を許したばかりか、刀で防ぎ損ねてしまう。

 仕方なく防弾・防刃仕様のコートで弾丸を防ごうとしたが、何とも奇妙なことが起こったのはその直後のことであった。


「(この程度の弾丸ならこのコートで―――がふっ!?」


 零華の腹に突き刺さり、銃創だけを残して消滅する弾丸。"弾丸の消滅"という、ただそれだけの現象でさえも奇妙であるというのに、よりにもよって変形した"胎児"から放たれた弾丸は、強化繊維で作られた彼女のコートを擦り抜けたのである。


「う、そ……弾丸が……確かに、防いだ筈なのに……」

擦り抜けたぁぁぁぁぁ!?この程度今更珍しい事でもないが、これは一体どういう事なのか!?

次回、『双子使徒』の固有効果とカタル・ティゾルにひっそり根付く概念の存在が明らかに(なったらいいけれど)!

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