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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン6-エレモス編-
320/450

第三百二十話 戦うゲスト様-ゲストは出てねぇよ大佐ァ、少なくとも今回はな-





調べに対し蠱毒成長中は『だって本当にゲスト出ないんだもん』などと供述しており

―CS社敷地内―


「なァ、嘘だろ……嘘だと言ってくれよバーディ」

「バーディって誰だよ」

「犬面のセスナ機じゃねえかな。それか鉄腕の何とかって奴かも」

「わけわかんねえよそれ。とりあえず落ち着け」

「OK、落ち着く」


 突然の敵襲を受けて物陰に身を潜めたリューラとバシロは、上記のようなやりとりを繰り広げながらタイミングを伺っていた。


「―――ぃよし落ち着いた」

「妙に早ぇなオイ、落ち着いてんのかそれ」

「落ち着いてるよ。何かわけわからん震えが止まらねえけど」

「世間じゃそれを"落ち着いてねえ奴"と呼ぶんだぜ……まぁいいや、とりあえず落ち着いたと仮定して話進めっぞ」

「おっし」

「まず私らは今現在敵襲を受けてる」

「おう。それも大人数とか生体兵器の群れじゃねえ、たった一人にだよな」

「そうだ。敵はただ一人、何の変哲も無――かった筈のな」

「そう。そんでその敵って奴はこともあろうに若え女だ」

「あぁ、あの見て呉からして種族は外殻種――いや、鬼頭種かな。いい体型カラダしてやがらァ、目測だがあの外骨格でズられんのも悪かね――「外骨格以外にも特徴があるよな。例えばあの青銅みてーなメタリック色した装甲板的なアレとかよッ」

「あー、あったな。アレが開いて中から小機関銃サブマ誘導弾発射筒ロケランが出て来た時ゃびっくりしたもんで、思わず栗が引っ込むかと思ったぜ」

「それは出すな、引っ込めとけ。ともあれ奴は驚えたのは俺も同じだな。だがまるで謎って訳じゃねぇ。ありゃ多分サイボーグだ。それも戦闘型で、弾薬大盛りの奴だろうよ」

「あぁ、しかも華奢な癖にとんでもねえ火力の持ち主だよな。あんなもん真正面から食らや、二分と待たずに原型失うぜ。全くよう、クロコス・サイエンスは生物学バイオロジー軸じゃねーのかよ」

「関連企業に機械工学メカニカル・エンジニアリング系のがあったんだろ。分業って奴だよ。生物の体組織がDNAという図面を元手に作られたRNAという形成型に蛋白質という素材をぶち込んで作られるようなもんだ」

「それとこれとはチト違うんじゃねーかな……」

「だとしても社名に"科学サイエンス"って付くからには何かしらそういうもんも扱ってたとしておかしかねえぜ。あれが"反乱軍"のメンバーかどうかは兎も角としてな」

「それもそうか」

「そもそも奴らが何を持ってようがぶっ潰しゃあ同じことなんだよ。だが問題は……」


 バシロは左目を巻貝のそれを思わせる形に伸ばし、遮蔽物の向こうを伺う。視線の先には件のサイボーグ女が佇んでおり、機械的な動作で辺りを伺っているようであった。


「奴の見て呉、だろ?」

「そうだ。特徴を列挙すっと、髪型はショート。色は根本から半分が紫に近いピンクで、残りは若葉色。全身は甲虫みてーなツルツルの外骨格とテカる青銅色の装甲に覆われてて、顔面の中央にゃ紡錘型に開くデケー単眼と来た。瞳は円盤の読み取り面よろしく構造色にテカってるな」

「OKOK、詳しく聞いたところであのサイボーグ女の正体が見えてきた気がするぜオイ」

「奇遇だなリューラ、俺もだ。序でに言うとその"正体"ってのの予想、俺としちゃ盛大に外れて欲しいとも思ってんだよ」

「マジか。実はそれ、私もなんだよ……」

「ほぉ、そいつぁまた……んで、お前としちゃあのサイボーグ女の正体は何だと思う?」

「そうさな……私個人としちゃあ、恐らく――「いや待て、こういうのは二人同時に言おうじゃねえか。その方が気が楽だ」――それもそうか」

「ぁぉし、じゃあ、言うぞ……」

「ぉ、おう……」

「俺があのサイボーグ女の正体として予想してんのは……」

「私があのサイボーグ女の正体として予想してんのは……」

「クロコス・サイエンス内部の……」

「社員食堂で働いてる調理師の……」

「「リネラ・ターナー」」


 二人が嘗て窮地を救ってくれた女の名を口にするのと同時に、身を隠していた遮蔽物が火薬を伴う爆発によって跡形もなく吹き飛んだ。榴弾によるものと推測されるそれはつまり、調理師リネラ・ターナー(即ちバシロの実質的な家族であった女、ケラス・モノトニン)であるかもしれないサイボーグ女が二人の所在を察知したことをも表していた。


「へっへっへ……ハモったと同時に吹っ飛ぶたぁ、何ともオイシイ展開じゃねえか」

「いや、俺ら芸人じゃねーんだから別にオイシくはねーだろ。寧ろ不味いだろ。ゲロ不味だろ」

「まぁいいんじゃねぇか。遮蔽物無くなったお陰で逆に踏ん切りつくだろ?」

「まぁなぁ……正直ケラスの生き写しみてーな奴かもしれんサイボーグが敵って時点でどうにも二の足踏んじまうんだが……頑張るっきゃねーか」

「おう。月並みな事しか言えねーが、こういうときは肩の力抜いた方がいいと思うぜ」

「ありがとよ、リューラ。やっぱ俺、お前にくっついて良かったわ」


 かくしてバシロは、相対するサイボーグ女が嘗て寝食を共にした義理の家族である事を知らぬまま戦いに身を投じていく事となる。

次回、クロコス・サイエンス最強の生体兵器が登場!

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