第三百十六話 戦うゲスト様-T.O.R.O.四神登場 その3&4-
残る二人のT.O.R.O.四神はまさに対照的!
―前回より・中央スカサリ学園襲撃班の動向―
ルートごとに三つのグループへ別れた11(実質16)名は、迫り来る生体兵器やT.O.R.O.隊メンバーを打ち倒しながら広大な校舎の中を(負傷兵より聞き出した道筋を頼りに)進んでいた。
―同時刻・理事長室―
「りりりり、りりりりりりっ、理事長ぉぉおおぉぉぉ~!」
「どうしました学園長?何時になく落ち着きがありませんが、またお嬢さんが"敗北を知りたいのでちょっとスラム街でストリップかましてきます"とかそんな置き手紙一つ残して姿を眩ましてしまったんですか」
「ち、違いますよッ!うちの娘はそんなこと――したことは……過去に、軽く30回くらいありましたけど……それとは違いますッ!」
「では何をそこまで取り乱しているのです?」
「何をって、我が中央スカサリ学園の置かれている状況に決まってるじゃあないですかッ!僅かな侵入者の攻撃により学園の有する兵力は恐るべき勢いで衰退しつつあるんですよ!?」
「如何にも仰有るとおり。ですがまだ"四神"や"スプレーマントロプス"、更には"左右大将"と"彼女"も残っています。もし万が一侵入者によってそれらが打ち倒されようとも、デイパラは守られる筈です」
「そ、それはそうですが……それでは理事長、あなたは彼らを見殺しにせよと仰有るのですか!?」
「無論見殺しにしろなどとは言うつもりもありません。ただ、彼らが彼らなりに全力を尽くしているよう、我々は我々なりに全力を尽くすべきだというだけですよ。不安だからと騒いでも仕方ないでしょう?」
「……そうでした、本当にすみません。不安の余りこの学園を統べる長の片割れとして成すべき事を失念していたようだ」
「自覚して頂けたのならそれで構いません。さて、そうと決まれば早速"彼女"にも声を掛けましょう。単純な力は"アレ"に劣りこそしますが、"彼女"もまた心強いことに変わりはありません」
―同時刻・広大なサッカー場―
「おおッ!これはこれは!なんとまあッ!斯様な場所にお客人とはッ!」
度重なる生体兵器の襲撃やT.O.R.O.隊メンバーによる妨害を潜り抜け、回り道をしながらも目的地を目指す内、どういうわけかサッカー場へと辿り着いてしまった聡子(及び彼女の装備であるラガン)、結花(及び彼女の装備であるハッチー、ボラット、ミューズ)、凛(及び彼の装備であるケイコ)、エリニムの四人(及び一頭と四匹)を待ち受けていたのは、全身の外皮全てが合金製の装甲版に置き換わったような竜属種の女であった。
「お初にお目に掛かるなお客人!我が名は神下!神下矢留!我らが偉大なるガロン・ダンパー理事長より強者と認定されし"T.O.R.O.四神"が一人!」
神下矢留。T.O.R.O.四神随一の熱血漢にして大の派手好きであり(ダンパー曰く『やる気があるのはいいが、声と態度が無駄に大きすぎて困る』)性格に違わず火炎での広範囲無差別攻撃を最大のアイデンティティとする彼女は、周囲からも疎まれがちでさえあった(無論人望が皆無というわけではない)。
「何なのだあれは……」
「知らないですよ……」
「っていうか暑い……」
「同感だけどとりあえず手噛むのやめなさい……」
【あら、ゴルドさん何時の間に寝返ったんでしたっけ】
【え、あれってグリッド君じゃないのかい?】
【いや、寝返ってないだろ!】
【寝返ってませんよ!】
【そもそも参加してすらないじゃないか】
―同時刻・体育館―
「これは……やばいわね……」
『どう考えても……やばいわね……』
「本当、アリシスが守ってくれてなかったら今頃どうなっていたことか……有り難うな、アリシス。素質がどうだろうとお前は僕にとって自慢の妹だ」
「有り難うお兄ちゃん。でもお礼なら私よりシルフに言ってあげて」
サッカー場が燃え盛る一方、嘗て爽やかな体育館であった筈の空間は色鮮やかに蠢く砂礫が壁面という壁面を液体のように覆い尽くし、その中を複数の岩石破片によって成された風変わりな岩人形の使い魔達が泳ぎ回る人外魔境と化していた。空気中には人体に有害そうな雑菌混じりの土煙が目視可能な程に充満し、生身のホモ・サピエンスがこの中に居れば感染症の二つや三つも併発しそうである。
そんな空間に迷い込んだのは、イリア、エルシトラ、シルナス、アリシスといった四人のけいむ市民。現在精霊シルフによる風の障壁で土煙から身を守っている少年少女達は、相対する相手―もとい、この空間を作り出したT.O.R.O.四神の男への対抗策を練り続ける。
「(……動く気配無し……呼吸異常無し……周囲に大気系の魔力反応有り……直接出向く他なし、か……)」
そんな四人をステージ上から見据えるのは、T.O.R.O.四神の一人"ハ・セゥ"。深成岩で成された細身かつ胴長な鬼の姿をした彼は、先程登場した神下とは対照的にT.O.R.O.四神の中で最も寡黙な人物であり、砂礫や岩石を操る魔術と高い格闘能力により"フィールドを支配する"かのような堅実な戦術を得意とする。
「(……できれば能動的な攻撃は控えたかったのだが……この戦況を終わらせる為には思えばそれもやむなしか……)」
次回、やっぱり"奴ら"が登場(予定)!