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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン6-エレモス編-
313/450

第三百十三話 戦うゲスト様-不死身因子のトリック-

読者「お前何考えてるんだ!?

せっかく上手いこと三話で締めくくれるチャンスを逃がしちまって!」

蠱毒「……」

読者「話してるのに目を逸らすな!お前字書きとして恥ずかしくないのか!?」

―前回より・T字型通路―


 クロコス・サイエンス北区七号ビル四階のT字型通路で巻き起こった三対一の戦いは、規模の小ささに反して熾烈を極めた。


「ジョわッ!」

「さィッ!」


 壁面を利用した調薬で空中から斬り掛かるリングアのフランベルジェ(フランベルジュ)は笛の音に似た音を立てて振り上げられた血風丸ケップウマルの二枚刃によって受け止められ、そのまま器用に押し返されてしまう。小柄かつ華奢であるが故に"押し返し"が実質的な"投げ"として作用しているかのような有様で吹き飛ぶリングアだが、それを補うかのようにデーンスのククリナイフ、次いでラビウムの連接棍棒フレイルと、兄弟達は次々に攻撃を繰り返していく。

 その攻撃はまさに変幻自在の一言で、三人は文中で挙げた三種以外にも様々な武器(槍や拳銃、鈍器等)を互いに交換する等複数であるが故の方法で巧みに使いこなし、それら武器の類を失った素手の状態でも様々な武術や格闘技の動きを取り入れた変則的な体術を使いこなす。その動きはさながら武道家・格闘家(プロフェッショナル)の体格を子供サイズに縮めたかのようでもあった。

 対する零華は持ち前の敏捷性と反射神経で三つ子の連携攻撃を無駄なく回避し、受け流していく。


「(――――よし、守りに関しては問題なし……っと。何かしら不備があるかもって心配だったけど、何事もなくて安心だわ)」

 零華は安堵しつつ(安堵する彼女のモノローグが理解できない読者は原作をプレイした後でゲスト解説を最後まで読もう)攻めに転ずべく思考を巡らせる。

「(問題があるとすれば攻めよね。まぁこっちも守りと同じように、動作そのものは大丈夫――な、ん、だ、け、どー――問題は奴らが言う因子だかの所為で殺しても殺してもどんどん復活されちゃうってことなのよねー。サインを見分けることもできないし、相手の出方を見ようにも時間が経過するとサイン切り替わっちゃうし、切り替わる時間の差が開きすぎだし、正解の奴を殺せたと思っても実は時間を遅らせて蘇生させただけだったりするし……うーん……血が出るなら殺せる筈なんだけど、何か打開策はないものかしら……)」


 上記にある独白モノローグのように、零華が本気で状況を打開せんと頭を捻っているという事実をオース三兄弟が知ったのなら、恐らく彼女を嘲笑うことは間違いないであろう。と言うのも、前回彼等が零華に述べた"不死身因子"の複雑かつ厄介なシステムは、三人が零華を混乱させ戦闘を有利に進めるが為の根も葉も無い単なるハッタリだったのである。

 真実である点は"時間と地点が任意である個々の完全蘇生"のみであり、これは三人が内包・共有する生命エネルギー(感覚としてはSTGに於ける残機やアーケードのガンシューティングゲームに於けるライフに近いもの)のストックを消費して行われるものであり、当然ながらその回数には限りがある。

 以上の文面を読むことでオース三兄弟の姑息極まりない作戦の真相を知ることとなった読者諸君の殆どは『何だその程度のことか。くだらん』『やっぱり蠱毒は蠱毒でしかないな』『何が"呪術の成り立ちに準えてどんな苦境も打ち倒す"だ馬鹿が』と言った具合に呆れ返るかもしれない。

 しかし言葉の持つ拘束力というものは時に絶大であり、一度ひとたび思い込みに囚われてしまうと中々抜け出せないのがヒトのサガ。環境や体調の悪化はそれに更なる拍車をかけ、何気ない思い込みや勘違いが時に死人を出すこともある。現に零華もオース三兄弟の策に嵌められ妙なループに陥っており、そのままループから脱け出ることは困難と言えた。だがここで、零華の脳裏にある考えが過ぎる。


「(――……サインが不正解である限り蘇生され、死ぬ度にサインは変わる……――そうよ、そうだわッ!だったらこうすればいいんじゃない!)」


 思案の末に何かを悟ったらしい零華は、改めて血風丸を掲げ身構える。その顔に曇りや陰りはなく、表情は自信に満ち溢れ生き生きとしていた。


「(どうしよう兄さん達、彼女の表情が変わった)」

「(落ち着くんだリングア。慌てることはない、冷静に対処すればいいだけの話だ)」

「(デーンスの言う通りだ。僕らには余裕がある。計画的に戦えば負けはない゛ぎがっ!?」


 念話を遮るように、ラビウムの背後へ回り込んだ零華の斬撃が彼の背を切り裂く。常軌を逸した速度の剣は彼を一撃で絶命させるが、生命エネルギーのストックがその身体を蘇生する。


「(ふん……何をするかと思えばただ斬り殺しただけか。そんな事をした所で無駄―「外れ、かぁ」

「そう、外れだ。これでまたサインはがぶれっ!?」

「「!?」」

 零華の取った行動は、余りにも予想外であるが故に三人を一瞬絶句させた。何と彼女は、つい先程斬り殺したラビウムを再び袈裟斬りにして瞬殺したのである。

「な、何をしてるんだ貴女はッ!?」

「勝機を見失い血迷ったかッ!?」

「血迷ってなんかないわよ?ただ、あんた達の殺し方・・・を見付けただけよ」

 デーンスとリングアの問い掛けに答えた零華の口ぶりは妙に軽々しく、薄気味悪いほどの余裕を感じさせた。

「僕達の殺し方を見付けただと!?」

「まさか、因子が示すサインの見分け方を覚ったとでも言うのか!?」

「そんな馬鹿な!そもそも因子など――「はぁ?何馬鹿言ってんの?」――!?」」」

「あんた達を殺すのに、あるかどうかもわからない因子の示す、見えもしないサインを見抜く必要性なんてありゃしないのよ。必要なのは、根気とやる気と殺しの道具――私が用意するのはそれだけよ。他に必要な諸々は、大体この身体に入ってるんだから」


次回、零華が思い付いた『オース三兄弟の殺し方』とは!?

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