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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン6-エレモス編-
311/450

第三百十一話 戦うゲスト様-分身キャラを主役に使う難しさ(の、話でもない)-




でも実際分身キャラって扱い辛いよね。いや、私の文章力がカスなだけだけどさ。

つーかこれ無双回じゃないよな……

CSクロコス・サイエンス社敷地内・T字型通路―


「ぃよッ―――と……はァ、長かった……けど、とんでもない奴だったわね……あんな事になってもまだ生きているなんて……」


 通気口ダクトを通ってT字型の通路に降り立ったのは、革製と思しき戦闘服に身を包んだ銀髪の女―もとい、強化人間クレイドの零華。夫の亜塔(という表記を用いた理由がわからない読者は『獣道-白ノ刹那-』をプレイするかプレイ動画を見よう)とは別のルートを進んでいた彼女は、つい先程までクロコス反乱軍のメンバーを相手に医務室で死闘を繰り広げていた。相手は頭足類とプラナリアの形質を得たホスト風の男。バランスの取れた(しかしその癖我流の)格闘センスと高い生命力を併せ持つ為、機敏な動作で二枚刃の直刀・血風丸ケップウマルを振るう零華にとっては面倒なことこの上ない難敵であった。物の多い医務室の中、あらゆり動作がその場凌ぎにしかならない状況は最早単なるワンサイドゲームでしかなかった。

 最終的には偶然にも敵が倒れた薬品棚の下敷きになり敏感な全身にあらゆる薬品を浴びて再起不能に陥ったことで戦闘は実質的に決着したが、それでも(全身がケロイド状に爛れ、部位によっては骨が露出する程の重体でありながら)辛うじて生きながらえ、尚も自身に戦いを挑まんとするその不死性と執念に、何故か敬意のようなものを感じた零華は、既に指一本動かすのがやっとな程に衰弱した男へ速やかに止めを刺し一礼。戦闘の余波で扉も窓も塞がれた医務室より通気孔ダクトを通って脱出、T字型通路の中央へ降り立ったのであった。


「しっかし、ダクトの中這って進むのって案外楽なのね。昔映画で見た時は結構進みづらいんじゃないかと思ってただけに意外だったわぁ。ねぇ、あんたらも・・・・・そう思わない・・・・・・?」

「ま」「あ否」「定は」「し」「ないけ」「どあな」「が言」「うと一」「部」「のヒ」「トにとっ」「て」「は完」「璧嫌」「味だ」「よ」「ね」

 振り向くまでもなく三人分の気配を察知した零華の問いかけに答えたのは、異なる角度からの異なる声が入り混じって一つの台詞を成すかのような、実に異質で薄気味悪い三人分の声であった。

「―――えっと……うん。まぁ、確かに嫌味よね。望んでこうなったわけじゃないにせよ、母親譲りのスタイルだし。そりゃ自慢ではあるけども、だからって驕りがあるわけじゃ――ッッ!」

 刹那、左右と背後から何かを察知した零華は身体を回転させつつ血風丸で自身の背後180度を素早く薙ぎ払う。笛の音にも似た甲高い音が響き渡り、零華の左右と背後から一歩半辺りの床に、両断された小さな金属円柱が転がり落ちる。

「……三方向から改造エアガンは卑怯でしょ。しかも妙に斬りにくい大きさだし……」

「試合ならともかく」

「戦場で"卑怯"なんて言うなよ」

「こっちは非力さを数で補ってるんだ」

「それは立派な戦略だろ?」

「叩かれる覚えはない」

 三人一組で交互に言葉を紡ぐのは、一卵性三生児ミツゴと思しき12歳程度の少年三人であった。それ故かそれぞれ髪色と着ているTシャツ以外に外見的な差違は見られず、声さえも距離や向きが同じなら聞き分けることは不可能であろう。

「それとこれは改造エアガンなんかじゃない」

 黄色の髪に唇の描かれたTシャツを着た前方の一人がそう言えば、

「コイルガンっていう、火薬の要らない銃さ」

 水色の髪に歯と顎骨の描かれたTシャツを着た一人が補足し、

Eエレクトリック・M(マグネティック・Lランチャー……電気や磁気の力で弾を撃つ武器の一種だよ」

 オレンジ色の髪に舌の描かれたTシャツを着た一人が締め括る。空中を浮遊しながら語りかける彼らの姿は、まるで西洋の浮遊霊を思わせた。

「そういえば」「自己紹介が」「まだだったね」

「僕らはオース」

「三つ子のオース」

「長兄ラビウム」「次兄デーンス」「末弟リングア」

「社長が僕らに」「くれた名前」

「捨て子の僕らに」「くれた名前」

「この名前こそ」「僕らそのもの」

「完全連携」

「「「即ち"(クチ)"」」」

「……口?」

「「「そう、クチしかくけいじゃなくて、クチ」」」

「僕らの本質はそこにある」

「このシャツの絵が示す通り」

「僕らの連携は貴方を"喰らう"」

「包み込み」「擦り潰し」「飲み込む」

「意図せず」

「無意識に」

「行われる」

「「「完全連携」」」

「成る程、それで"口"って訳ね……」

 オース三兄弟の話を聞いた零華は、つい先日食事の席で聞いた話を思い出していた。

「(そういえばジゴールさんも言ってたっけ。"単純なように見えてその実汎用性が高く柔軟で種毎の個性がよく表れている器官が口だ"って。考えてみれば、頭や手足が別のことをしてても口に含んだ食べ物を噛んで飲み込むっていう動作だけはよっぽどのことがない限りおざなりにならない……完全連携の呼び名も強ち間違いじゃないってことね)」

 鞘より血風丸を抜いて身構えた零華は、前方と左右の三方向へ交互に目を遣りながら策を練る。

「(さて、どうしよう……多人数相手なら断然"アレ"が思い浮かぶけど閉所向きの技でもないし、かと言って一人一人一騎打ちで倒す余裕もない……一人に気を取られた瞬間、他の二人に殺される気しかしてこない……これはそう、まるであの女(・・・)のそれにもどこか似たような、確固たる意志……肉欲や雑念に囚われない、純然たる忠誠心故の殺意……)」

 浮遊したままゆっくりと迫り来るオース三兄弟から染み出る気配は、零華に嘗ての宿敵(この宿敵が何者なのか気になったなら原作をプレイするかプレイ動画を見よう)を思い起こさせる。

「(……ただ当然、それ以外はまるで違う。力の源、仕える主、目指す理想……挙げればキリがないけれど、この場合重要なのはあいつ等の"根底"と"年齢"―――そして私とあいつ等の"性別"……私の推測が確かなら、この三点を上手く利用して奴らを仕留められる……失敗すれば地獄を見るけど、蒸し暑くて他に手段も思い浮かばないし……やるっきゃあ、ない)」

 決意を固めた零華は全身の力を抜いて通路の壁にもたれ掛かり、力無く通路に座り込む。同時に血風丸が手を離れ、悩ましげな体勢でへたり込む持ち主の傍らへ、金属音を立てつつ転がった。

コドク「蠱毒の話だァッ!」

蠱毒「次回、零華の策に掛かったオース三兄弟――のォ、筈でしたがァッ!」

KODOKU「ズワチャアッ!」

(バサッ!)

蠱毒「そろそろ単なる噛ませキャラばっかり出すのも何か飽きてきたので、可能ならそれなりに苦戦させます!要するに多分、尺がまた延びます!」

読者「もう嫌ぁぁぁぁ!」


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