第三百三話 戦うゲスト様-幼獣の真相:前編-
読者「アンタ一体何なのよ!?無計画にゲストは呼ぶ。
更新は遅れる。解説は手を抜く。ファンアートを寄越せなんて突然滅茶苦茶は言い出す。
かと思ったら勝手にツイッターでキレてフォロワーに心配はかける。
挙げ句は折角Pixivで入った『うちの子描いて下さい』のグループを大して行動も起こさない内から自棄起こして退会する。
あんたそれでもなろう民なの!?お次は意味不明なパロネタと来たわ。
まぁそれでもいいかと思って寛容に流したわ。そうしたら借りてきたバキを読みふけって今日の投稿もこんなに遅れるし、そもそも一体何でまた尺が延びたのか説明して頂戴!」
蠱毒「駄目だ」
―CS社最奥部―
「グゴン様、我が社の残存兵力について最新の集計結果が出ました」
『ほう、御苦労ッ!どこの馬の骨とも知らねぇクソ雑巾に圧倒されている様だが、それにも負けねぇ勢いで増え続けてるようじゃあねえか!流石は俺様の血肉を分け与え育て造り上げた、俺様だけの所有物ッ!』
先の第二百九十五話から引き続いてグゴンの口から飛び出したこの『俺の血肉を分け与え育て造り上げた所有物』という発言からも解るとおり、クロコス・サイエンスの擁する生体兵器とクロコス反乱軍メンバーの全ては例外なく―例え、余りにも荒唐無稽な行程を経て"製造"されるテラーギガスでさえも―この傲慢で野蛮な謎の爬虫類型生命体から切り出した細胞を、ゲノム(テラーギガスに限り"原液")の段階で組み込まれ(テラーギガスに限り混ぜ込まれ)ている。
その力は余りにも凄まじく、余波により身を滅ぼしかねない為普段は抑止されているが、一度解き放たれれば比類無きパワーと生命力を発揮する(という事にしておいて頂きたい)。
「やはりグゴン様の細胞を解放した事が功を奏したのでしょう。開放率は未だ二割程度に留まっていますが、それでもここまで力に順応しているのならば、或いは……」
『あのクソ雑巾共をこのままブチ殺せるかもしれねぇなぁ。最悪兵士が全滅しようと、中央スカサリ学園のゴミ共なんざウチの中枢だけで十分だしよォ……なァハルツ、動いてンだろ?ウチの頼れる"中枢"共はよォ……』
「えぇ、動いていますとも。未だ敵との遭遇は報告されていませんが、何れ遭遇を果たすことでしょう。そうなれば幾ら格闘でオリバー・クラッカーを打ち負かす逸材を擁するかの敵勢と言えども、かの六人にかかれば一溜まりもないでしょう」
―前回より・CS社敷地内―
「では、一度そちらに戻りますので」
『はい。よろしくお願いします』
あの後食事を終えた桃太郎組の面々は、ひとまず道中拾った謎の獣を調査・保護すべく管制塔へ連絡を取り、拠点へ戻るルートを進んでいた。道中数度に渡り敵襲を受けもしたが、やはりそこは魔物退治のエキスパートである桃太郎組の面々。確かな技術と経験で、襲い来る生体兵器や反乱軍のメンバーを次々駆除していく。
「大丈夫よクゥちゃん、きっと助けてあげるからね」
「クプヮゥ、クュフー」
玲はその鳴き声に因み"クゥちゃん"と名付けた謎の獣を大切そうに抱き抱え、仲間達に守られながら拠点への道を急ぐ。両手が塞がっている関係上親の代から引き継いだ体術で直に戦うことは出来ず、抱き抱えた獣の安全を考慮する関係上素早く飛び回る事も控えざるを得なかった。
だがだからといって彼女と獣が危険に晒されたかと言えばそんな事はなく、仲間達の活躍によって入り組んだ社内を順調に進みつつあった。"このまま無事に拠点へ戻り獣を保護する。折角助けた命を、易々と死なせるわけにはいかない"――経歴等の関係上何処かかみ合いの悪くなりがちな隊士達の心は今、一匹の幼い獣を守り通すという共通の目的を得たことで次第にまとまりつつあった。だがしかし、やはりというか何というか、そんな時でもお構いなく"現実"はその常軌を逸したサディストぶりを発揮する。
◆◇◆◇◆◇
異変が起こったのは走り出して十数分が経過した頃の事。
恐らくは食堂か会議室と思しき部屋へ差し掛かった広大な部屋へ差し掛かった一行へと、頭上から透明なゲル状の物体が降り注ぐ。
「な、何こ―れぶっ!」
「クゥちゃんだけはッ――!」
「ガリバーバンどぶぇっ!円筒形だから防ぎきれなッ!」
「音術で――……無理……ッ」
「ぅおい犬丸よ、何とかせあぼろばっ!」
「聖羅ッ、危な―ぶフぐッ!」
上記の有様から解るとおり、結果として玲によって守られた獣以外の全員が頭上から降り注いだゲルをもろに浴びる事となってしまった。だが奇妙なことにそのゲルは、どういうわけか衣類等へ染み込むのと同時に―まるでアルコールが蒸発してしまうかのように―瞬く間に消え失せてしまった。
「何、だったの」
「……さぁ?」
「一瞬敵の攻撃かと思ったんだけど……」
落ち着きを取り戻した桃太郎組の隊士達は"浴びたと思ったゲルの消失"という理解不能な状況に若干困惑しながらも周囲の状況を確認すべく立ち上がろうとした―――その時。
「―――ッッ!?」
突如一行の身体に加わる、想像を絶する強烈な重力。全身が石膏像と化したかのような重みは、ゲルを浴びた全員の動作のほぼ九割方を封殺。辛うじて生命維持に必要な分の臓器と頭が動きこそしたが、それ以外の部位は何をどうやってもまるで動かない。
「(この状態で敵が来たら、間違いなく死ぬ……私達全員……それこそ、クゥちゃんもッ……)」
玲の脳裏に最悪の光景が過ぎり、更に何処からか敵らしきものの気配まで近付いてくる。可能な限り感付かれないよう、無駄とは解っても息を殺しやり過ごそうとする玲。本当なら今も心配そうに自分達を見守る獣へ逃げるよう警告したかった。
卵のまま食われそうになっていたのを助け出し、名前までつけてやったのだから、生き延びて欲しいと思うのは当然である。だが、今ここで声を出せばそれこそ獣を危険に晒しかねない。連絡を取ろうにも腕さえ動かせず、まして端末のキーを押す所の話ではない。最早これまでか―――玲がそう思った時。
「いやぁ、流ッ石だねぇ室見ちゃん。やっぱり君は最ッ高ォだ」
或る一方より現れる、線の細いコーカソイド風の少年。
外見から察するに理華や玲と同年代であろう彼の身体の各部には灰黒色のヒレが散見される。
硬骨魚の条鰭でなく、かと言って毛や鱗の類も見受けられない、光沢を放つ頑丈で力強いヒレは、偶蹄目から派生したある種の海棲哺乳類――即ちハクジラの前脚や背鰭や尾鰭などと言ったものに他ならない。
彼こそはケン・ファープ。若くしてクロコス・サイエンスの生体兵器達を率いる立場にある、鯱系禽獣種の少年である。
「やっぱり格の違いってのかなぁ、他の奴らじゃこうは行かないよねン」
ふざけた態度で喋る少年の視線――その直線上に佇んでいたのは、青く透き通った流体種のような女であった。豊満な体型から察するに少なくとも成人済みであろう彼女は、心底不愉快といった表情でファープを睨み付け、憎々しげに言葉を紡ぐ。
「……世辞はいらないわ。それより早く仕事を済ませなさい、ゲルの効力は無限じゃないのよ……」
「あぁ、解ってるさ。大丈夫、大した手間はかからないさ」
そう言って玲の元へ歩み寄ったファープは、あろう事か動けない義母の傍らにてただひたすらその実を案じている謎の獣に手を伸ばし、易々と掴んで持ち上げる。
「――クゥちゃんッ!クゥちゃんッッ!」
動けない玲は、何も出来ぬままにただただ義子の名を叫び続ける。一方のファープはそんな彼女を『黙れよ』と一喝し、片手で乱暴に掴んだ獣を見つめながら気怠げに言う。
「……"クゥちゃん"って、もしかしなくてもこいつのことかい?お目出度いねぇ、動物拾って刷り込みで懐かれたからって、正体も知らずに名前まで付けて可愛がるなんて――「あんた、その子をどうする気!?」
「……どうする気かって?処分するに決まってるだろ、言わせるなよ」
次回、クゥちゃんと名付けられた獣の正体とは!?




