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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン2-ラビーレマ編-
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第三十話 兄と私は共生中





戦闘開始! 繁VS桃李!

―前々回より・校内―


 ふとした事から遭遇した繁と桃李の交戦は、お互い一歩も譲らぬ侭に長引いていた。


「熱流!」

 桃李の手元から放たれる炎は流水のように床面を這い回り、繁を追尾する。

「ヘァッ!」

 それを繁は奇怪なステップで回避し、そのまま飛び掛かって鉤爪で斬り掛かる。しかしその攻撃は桃李の右腕によって防がれてしまった。

「ッ!?」

 まるで堅いロウソクを斬っているような感覚に陥る繁。

 まさかこいつの腕がロウな訳は無かろうと思いながら鉤爪を引き抜こうとするが、中途半端に柔らかい為刃が食い込んでしまい、脱する事が出来ない。繁が一瞬手間取ったその隙を突き、桃李の腹から細長い左脚が飛び出して、繁の腹に突くような蹴りを入れる。

 繁はどうにか桃李の右腕から刃を抜き取り、彼女の身体を踏み台にして後方へ跳ぶ事で衝撃を緩和しようとする。しかし食い込んだ刃は思うように抜けず、結果的に繁はかなり遠くへ吹き飛ばされてしまった。

「グがッ!?」

 バトルものの漫画にあるような『壁に激突して亀裂が入る』程の威力では無かったにせよ、繁にとってその蹴りは若干の深手となった。


「(何だったんだ昨期の蹴りは……? あの位置から出るなんて有り得ねぇし、かと言って見間違いとも思えねぇ……。だがそうだとして、さっきのは何だ? 物理法則を無視してた時点で学術ではねぇだろうが……まさかESPの類じゃねぇだろうな? 臭いから判る……コイツはジュルノブルのバカ共やあの軍人達とは桁違いの手合い、別格だ。つか、どうにも気分が妙だな――ッ!」

 考え込む繁の正面へ、炎を纏った桃李の拳が飛び込んできた。

「うぉっ!?」

 繁は咄嗟にそれを両の鉤爪でどうにか弾くが、火の粉に一瞬視界を奪われる。その隙を突くように桃李の身体から再び謎の左脚が飛び出し、今度は繁へ踵落としを放つ。しかし繁はその攻撃を直前で回避し、その勢いに任せて爪で脚を切り落とした。


「っっ!」

 切り落とされた脚はまるでゲーム画面に於ける死骸のように消滅し、残りの部分も桃李の体内へ戻っていく。桃李の左脚には鋭利な刃物で切断されたような激痛が走り、激痛の余りバランスを崩した彼女は着地に失敗。

 対する繁は瞬時に体勢を立て直し、桃李の肩へ爪先を引っかけて掬い上げて宙へ浮かせ、そこへ両腕を上下から振りかぶって叩き込もうとする。しかしその攻撃は、桃李の身体から飛び出た正体不明の両腕によって止められてしまう。

 それを好機と見た桃李は繁の股座を蹴り上げようとするが、咄嗟に繁が両腕へ溶解液を放った事で状況は一転。両腕は引っ込められ、激痛に耐えかねた桃李は思わず絶叫し廊下を転げ回る。

 暫く転げ回った後、落ち着きを取り戻した桃李は繁に言う。


「貴方のその力……魔術や学術によるものではありませんね?」

「まぁそうだな……だが、そりゃこっちの台詞だ。お前の身体からチョイチョイ生えるその手足、それこそ並のブツじゃねえんだろ?」

「えぇ、その通りですよ。しかし素晴らしい。貴方が初めてですよ。私と兄の連携に対してここまで対応してきたのは」

「……兄だと?」

「えぇ…兄ですよ」


 桃李の言葉と共に、桃李の背中から緑髪で長身痩躯の男がぬっと現れた。


「初めまして、私小樽桃李の兄で羽辰と申します」

「驚いたな……妹の肉体に寄生とは、どんな兄貴だ?」

「産まれて間もなく死ぬ事を覚った私は、自ら霊体と生物の中間的存在へと形を変え、妹を影から支えようと彼女の体内へと潜んだのです」

「それで定期的に姿を現しては妹を助けていると。確かに兄妹なら、感覚器官共有でも納得が行く。ましてやその面構え、信じられねぇがお前等……双子だろ?」

「その通りで御座います」

「性別の異なる双子か。架空だと思ってたが、よもや拝見できる日が来ようとはな」

「お褒めに預かり光栄です」

「さして褒めたつもりもねーがな……」


 繁は両腕の鉤爪を再度展開し、小樽兄妹へと突進しようとした。


 しかし


「――ッ!? 何だ!?脚が、上がらねぇッ!」

 見れば、繁の長靴は靴底の辺りから正体不明の白い個体で塗り固められていた。しかも足裏が妙に冷えている。

「何だコレぁ? 接着剤の類じゃ無さそうだが……」

「お手数ながら、暫くそこでじっとしていて下さいませんか。他のお二人がどのような方かは存じ上げませんが、貴方は余りにも厄介すぎる。やはり同胞ともなると、先天的な格の違いという奴を思い知らされますよ」

「同胞……やっぱお前、ヴァーミンの――」


 繁が話し掛けようとした時、桃李は既に姿を消していた。


「なんちつー逃げ足だ……どっちが格上だ、ド畜生めが。それにしても……この白い奴はロウか油だろうな。それなら足裏が冷えんのも納得が行く……。それに、確かにこの強度なら、ロウが溶けきるまで並大抵の奴は動けんだろう。だが……」


 繁の手先から緑色の水滴が滴り落ちていく。水滴は長靴の表面を伝って下へ下へと流れていき、冷え固まったロウ状の物体だけを的確に溶かしていく。


「小樽桃李はしくじった。俺にとっちゃこんなもん、拘束にもなりゃしねぇ」


 自身の能力により生成される溶解液を用いて白いロウ状の物体だけを溶かした繁は、桃李を追って再び歩き出す。


「待ってろ主犯共。ヘッピリムシなりの戦い方って奴を見せてやらァ」

桃李はヴァーミンの保有者だった! 果たして彼女のヴァーミンとは!?

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