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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン6-エレモス編-
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第二百七十九話 異界民は集結しました





遂に始まりました、ゲスト召喚編!(まぁ本格登場は次回からになりますが……)

―解説―


 オンブラ・アッサシーノという形態に秘められた機能は、以前挙げた四つに留まらず数多く存在する。"戦闘能力半減のペナルティを負うことである一定数まで分身する"という『減退増殖』や、"分身を含む他者と脳内情報を共有する"という『脳内無線』、"攻撃性のないものに限り持ち主から魔術・異能の貸与を受けられる"という『忠臣恩恵』、"記憶している音声や映像を何らかの記憶装置に転写する"という『記憶転写』等がそれである。

 そもそもアダーラという精霊は他の13体と異なり、内部に無数の"身内(親兄弟姉妹祖父母等というような血縁関係のみならず、隣人友人知人など。その総数は当人達でさえ把握できていない)"をデータのような状態で保有しており、常に彼らを独立した精霊体として呼び出す事ができる(これもまたオンブラ・アッサシーノが有する『大数血統』なる機能である)。

 呼び出された身内は容姿・体格・性格などに差こそあれども基礎的には本体であるアダーラと同様の能力・機能を備えており、これにより彼女はどこぞの熱血怠惰探偵や性悪守銭奴刑事のような真似が出来てしまうのである(但し『大数血統』や『忠臣恩恵』は精霊状態での機能でしかなく、鎧の状態で発動することはできない。また、オンブラ・アッサシーノ自体はその非力さ故に最も消費が少なくて済む形態だが、精霊アダーラとして長時間顕現させその機能をフルに活用した際の消費はソレンネ・パッツィーアやアッヴェント・ティラトーレをも上回る)。

 今回の作戦に於いて香織は莫大な消費を覚悟の上でそれらの機能により作らせた『アダーラ大隊』とでも呼ぶべき精霊の群れに"過去に意識だけを飛ばしてその光景を見る"という古式特級魔術『ソワール・ヴァッサゴ』の力を貸与。未確認超存在(両組織の有する生体兵器)が出現すると予測される位置及び両組織のデータベースへと送り込み、徹底しての情報収集を行わせた。全てはコンクイスタ・ガヴァリエーレによって召喚される"別次元に潜みしムチャなコラボきかく選り選りの猛者さいだいのひがいしゃ達"の為に。


―前回より―


 繁達からの大々的な襲撃予告を受けた中央スカサリ学園とクロコス・サイエンスが取った行動は、図らずも殆ど同じようなものであった。

 先ず、被害を最小限に抑えるために生体兵器と無関係の人員を外部へ避難させ組織の敷地内を完全封鎖。幾ら極悪非道に外道を働く両組織と言えど、抗争と直接的な関係のない身内・・を巻き込む事には流石に抵抗があったのであろう。

 次に組織の敷地内を襲撃者の迎撃に特化させた仕様へと改装、生体兵器にとって有利な環境を整える事で、予想されうる範囲内の襲撃に備える。

 続いて予告状に表記されていた座標とそこから発せられていた強い電波から二手に分かれた繁達の位置を探知した両組織は、そこから予想される全てのルートに可能な限りの生体兵器を配置。敷地内に入るより前に駆逐しようと考えたのである。


 かくして三つ巴になった戦いはいよいよ後半戦に突入する。


―同時刻・異空間のホールにて・学園班―


「ぇぁーっと……皆々様、本日はお忙しい中お集まり頂き誠に有り難う御座います。本作戦で指揮を執らせて頂きます、清水香織と申します。短い間ですがどうぞ宜しく」

 ヘッドフォンからインカムのようなものを生やした香織の挨拶は、妙に余所余所しく堅苦しいようでいて、その癖どこかいい加減にも感じられた。

「はィ、それで作戦の概要ですが……事前にお配りした資料に予め目を通して頂けていれば大体の事はお判りかと思いますが、簡単に言えばモンスター狩りツアーになります」


―同時刻・異空間の会議室にて・企業班―


『出入りは所定の"扉"より可能となっております。時間割などは特に指定しておりませんので各自ご自由に行動して頂いて構いません。但し此方側で規定の範囲内に討伐対象が存在しないと判断した場合"扉"の移動を行います。事前にアナウンスしますので、なるべくならそれまでにこのこの空間の内部へお入り頂くようお願いします』

 桃李と羽辰の説明は、上記で香織が行っているものとほぼ同じ流れで淡々と進められていた。

「また、作戦中皆様には此方の端末を身に付けて頂きます。腕輪に指輪、イヤリングにピアスと大抵のタイプはご用意してありますので、どれか一つを必ず身に付けて下さい。これは皆様の位置や安否を確認するのに用いるだけでなく、功績に応じて加算されるポイントの集計にも用いますので」

「はい、質問!」

 そう言って元気よく手を挙げたのは、前回の映美平原戦から引き続き参戦が決定した唱道者メンターのラピカであった。

「何でしょう?」

「そのポイントって何処でどう使うんですか?」

「いい質問ですね。これから説明しようと思っていたところです」


 そう言って桃李は、パワーポイントの画面を切り替える。


―同時刻・ホールの学園班―


「此方が本作戦に於いて導入されたバトルスコアシステムの概要になります」

 ほぼ同じ流れでパワーポイントの画面を切り替えた香織の説明は、何処か若手社員のプレゼンテーションを思わせた。

「原理そのものは単純明快、リストにある怪物を倒すとそれ相応のポイントが手に入ります。弱い怪物なら得られるポイントも低いですし、強い怪物ならその分得られるポイントは高いです。但し、弱い怪物でも上手く数を稼げれば大型怪物一匹を倒すよりずっと多くのポイントを稼ぐこともできるでしょう。まぁゲームだとよくある話ですね」

 説明を受けている者の大勢が頷く中、香織は思わせぶりに『しかし』と口にする。

「そのポイントは単にどれだけ頑張ったかを表す得点としての役割以上に、作戦中の我が陣営内でのみ永続不変の通貨として機能します。つまり、ポイントを支払うことで物を買ったり施設を利用できたりするわけです。それらの殆どは作戦に関する物品やサービスですが、中には賭場や遊興施設などもあり、売店の商品はその殆どが皆様の次元に持ち帰る事も可能です。詳しくはお手元の資料をご覧下さい」

 映美平原での戦いでも活躍した異空間は、既に大規模な宿泊施設と化していた。

「それでは、基本事項の説明は以上になります。他に何か質問など御座いませんか?」


 かくして夜は更けていき、呼び寄せられた者達は思い思いに戦いへ思いを馳せていく。

次回、意気揚々と生体兵器に挑むゲストの一人に思わぬ危機!

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