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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン6-エレモス編-
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第二百七十八話 (回収隊が)ずたぼろてぃっく





秘宝回収隊の運命とは!?

―十二月中旬・CSクロコス・サイエンス社地下生体兵器製造施設・通称"子宮"―


「ファープ、首尾はどう?」

「順調に追跡を続けていますよ。この調子なら回収隊五つ程度潰すのにも三日とかからないでしょう」


 緑色の人工羊水で満たされた培養槽が立ち並ぶ中をゆっくり歩きながらハルツと語らうのは、身体の所々に灰黒色をしたヒレのようなものが見受けられる線の細いコーカソイド風の少年であった。

 そしてそんな二人の話題はと言えば、腕っ節に自信のある警備員を動員しての『秘宝回収隊殲滅作戦』についてのものであった。と言うのも、中央スカサリ学園の秘宝回収隊結成が公に報じられたのを好機と見なしたハルツはそれに乗じて特殊な音波の社内放送で"超存在襲撃事件は中央スカサリ学園の陰謀であり、それを止められるのは我が社のみである"という暗示を社全体に施し(リューラ、バシロ、璃桜は別件で社外に居たため運良く暗示にかからず済んだ)、社員の内から募った希望者に秘宝回収隊を襲撃させる作戦を練っていたのである。


「そう、それは良かったわ。個人的な事を言うと、会社の方も疎かにしてはいけないとはいえ一隊三、五人なんて少なすぎるんじゃないかと不安だったのよ」

「それは杞憂でしょう。というか、そう思うのなら何故僕を部隊に配属しなかったんです?」

「貴男には引き続き会社に居て欲しかったのよ。いざという時に会社を守る戦力は多い方がいいし、貴男の柔肌・・は切り札級だもの。安易に表には出せないわ」

「そう言われちゃあ仕方ありませんね。このケン・ファープ、ハルツ社長には義がありますから」


 そう言うファープの額に、先端部が丸く削れたような上下に細長い紡錘型の文様が浮き上がる。二本の曲線が通り上端部から二つの突起が生えたようなそれは、ある種の陸生巻貝を思わせた。


―それから―


 夏休み初日より人々の期待や希望を背負って意気揚々とそれぞれの候補地へ向かった秘宝回収隊であったが、その有様たるやまさに"絶望的"の一言に尽きた。謎の武装集団(クロコス・サイエンス社員)や得体の知れない化け物(勿論俗に未確認超存在と呼ばれるもの)からの度重なる襲撃を受けた回収隊は死者・行方不明者が続出、最早秘宝探しどころの話ではなくなってしまっていた。

 予想だにしない事態に陥った学園側は急遽生き残った回収隊を呼び戻し、"数多の犠牲を出しながらも秘法回収は完了した"と発表。行方不明者については後に捜索隊を派遣すると発表した。

 当然ながら各種報道機関は学園側を大々的にバッシングし、死亡或いは行方不明となった生徒・教員の保護者や遺族は(参加者死亡の可能性も十分にあると事前に説明を受け、その上で契約書に署名までした癖に)学園側に民事訴訟も辞さないと主張。結局それらの騒ぎは主立って動いていた人物が謎の失踪を遂げたことで半ば無理やりに終結した。

 一方そんな中央スカサリ学園の"陰謀"を暴きにかかったクロコス・サイエンスはというと、多少の死人こそ出たもののそれを除けばほぼ損害なしに目的を達成でき、更に周囲から怪しまれることもなしと良いこと尽くめのままに経営を続けていた。


―十二月下旬・学園地下―


「はぁ……回収隊は壊滅し死者行方不明者多数、世間からは白眼視され、おまけに秘宝も手に入らず……これじゃあ泣きっ面に蜂の所を四方八方から金属バットで袋叩きにされるようなものじゃないか……」


 エリスロの"特秘業務"を眺めながら虚しげにぼやくのは、中央スカサリ学園の学園長たるザリガニ系外殻種の老人・伊達焦土。元来気弱で物事に自信を持てない彼は、どうにも物事をネガティブに捉えてしまいがちなのである。


「学園長、そう暗い表情をしなさるな。学園を引っ張っていかねばならぬ貴方がその調子では、下々の者どもの志気も下がりましょう」

「それはそうですがねダンパー理事長、こんな状況で明るく居ろなんて、よほどの楽天家でもないかぎり無理な話じゃあないですか。我々は大損害を被ったのですぞ?」

「ふむ……そういえば学園長には伝え忘れておりましたかな。これは悪いことをしてしまいましたね、」

「……伝え忘れ?一体何のことです?」

「あいや、申し訳ない。実を言うと今回の秘宝回収作戦と言うのは、いわゆる囮とか隠れ蓑とか、そういった部類のものでしてな」


 ダンパーは伊達に、伝え忘れていた自分自身の真意を語って聞かせた。


「なんと!そういうことだったのですね!それならば成功といって差し支えない―――否、成功以外の何物でもありませんなぁ!いやはや、こんな素晴らしい話を聞き逃し勝手に落ち込んでいたとは私も大概間抜けでありましたわ」

「いえいえ、非は伝え忘れていた私にも御座います故」


 ダンパーが伊達に伝えた真意とは何なのか?その答えが明らかになるのは、まだそこそこ先の話である。


―同日・フリサリダ北西部に広がる広大な樹海にて―


「さて、何やかんやあったもののどうにかこうにかこうして一同に会す機会を設ける事ができたわけだが……」


 樹海の中にぽつりと佇む怪物型ロボット――もとい『列王の輪』が有する形態の一つ『ソレンネ・パッツィーア』の機内にて一同に会した繁達は、それぞれの情報交換と近況報告も兼ねての打ち合わせに入っていた。


「何つーか、俺らが二手に分かれて動いてた期間ってぶっちゃけ一ヶ月にも満たねーわけじゃん。でも何か、こうやって再会すっとざっと三ヶ月くらい離れてたんじゃねーかって気分になるんだよ。気のせいかな?」

「気のせいかどうかは兎も角、よくある心理なんじゃない。私も今そんな気分だし」

「月並みに言えば"絆が強い"という事なんでしょうかね。それで、これからどうするんです?」

「おぅ、さっきも言ったようにひとまず学園とCS社を派手な予告上で挑発して、奴らを攻め落としに行く。なるべく戦力を集中させる必要があるんで、ここまで化け物を誘き寄せて樹海を下りながら駆除しつつ学園まで進んでいくコースを取ろうかと思う。この辺りは学園側の化け物のテリトリーらしいしな」

「成る程。こっちもスタート地点こそまるで違う場所になるが、方法そのものは同じだな。なるべく誘き寄せて狩り尽くし、徐々に戦力を衰退させながら総本山まで徐々に突っ走る作戦で行く」

「狩り損ねる不安もあるにはあるが頭数は揃ってる、心配には及ぶめぇよ。璃桜が頑張って空間系魔術覚えてくれたお陰で、安全な駐留地も難なく手に入ったしな」

「覚えたわけではありませんよ。夜魔幻の異能で清水殿の魔術を模倣・複製することができるようになっただけですから。出入り口の指定範囲だって狭いですし、本家本元に比べればまだまだです」

『それでも安全な場所が取れたことに変わりはないでしょう。香織さん、例のアダーラさんが集めたという資料と、補充戦力のリストはどちらに?』

「機材共々そっちに置いてあるから、開始時刻になったら持ってってね」

『畏まりました』

「これが資料……よくぞここまで調べたもんなのだ。正直ぶったまげなのだ」

「私も正直驚いたんだけど、立つ鳥跡を濁さずの原理でどんな所にでも入り込めちゃう子が居るらしくてね。詳しいことは組織のコンピュータからくすねてきたそうよ」

「凄いわねぇ、そんなの居たんじゃ安易に隠し事もできやしないわ」

「ははは、言えてらァ。持ち主が香織みたいな味方の奴で安心したぜ」


 かくして適当に語らいながら諸々の準備を済ませた九人は、再び二手に分かれて大規模な生体兵器討伐作戦へと打って出たのである。

次回、ゲストが続々登場!?

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