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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン6-エレモス編-
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第二百七十六話 調理師R





調理師R……一体何ラs(ry

―ある日のCSクロコス・サイエンス社・警備員詰め所―


「いやぁ、助かったぜ。有り難うな」

「いえいえ、この程度ならお安い御用ですよ。また何かあったらお申し付け下さい」

「あらそう?そう言われるとまた頼みたくなっちゃうわねぇ」

「本当ですね。貴女のような素晴らしい料理を作れる方ならば、自ら店を持ち天下を取る事も夢ではないでしょう」


 ナイジェル・カッター、スザンヌ・メイトランド、村瀬万という新米警備員としてクロコス・サイエンスへ潜伏中のリューラ、バシロ、璃桜の三名は、無気力になるほどの(気分的に言えばそれこそ飢餓状態と言うに等しいような)空腹状態から自分達を救ってくれた(つまり、三人に自作料理を振る舞った)異形めいた外見の人物に礼を言っていた。

 その"異形めいた外見の人物"というのは、根元から半分程度が濃いピンク色で残りが薄い緑色というショートヘア、角度によって色の変わる大振りな単眼、全身を覆う紫の外骨格等が特徴的な鬼頭種と思しき若い女であった。更に補足すると身体の各所には失われた部位を覆うかのようにして機械的な青銅色の装甲版らしきものが備わっており、その他にも機械的なパーツが備わっている。


「ありがとうございます。そう言って頂けるとサイボーグになってでも生き延びた甲斐があるというものです」

「サイボーグ?ってことは、そのメタリックなのって……」

「はい、失われた外骨格を補うためのものです。私自身は記憶がないんですが、どうやらガス爆発事故に巻き込まれて身体の殆どが修復不可能なくらい壊れてしまっていたそうなんです」

「それで、ぶっ壊れた身体を機械で補ったってか?」

「はい。お医者様方の間では意識もないし無理に治療するより安楽死させるべきとの流れになりつつあったのですが、そこでサイボーグ技術を研究していた研究者の皆様がストップを掛けて下さったようで、こうして無事に生き長らえることができたんです。最初は動き辛かったりショートしたりと散々でしたが、丈夫で健康な身体が手に入りましたし、今ではメンテナンスや修理も自分一人でできるようにして頂きました。それだけのことに対する代価が過去の記憶だけだというのなら、これほど美味しい話もないでしょう」

「まぁ確かにそうだが、エラいポジティブだな……」

「ポジティブでいいじゃないですか。どんなに辛くても悲しくても、希望を捨てさえしなければいつか何かで救われるのは確かなんですし、明るく構えてなくちゃやってられませんよ」

「いいわねぇその考え――そういえばあんた、名前何てぇの?」

「私ですか?記憶喪失なので本名は思い出せませんが、私を拾って下さったハルツ社長がリネラ・ターナーという名前を下さいまして、そう名乗っています」

「リネラ……いい名じゃないの。私はスザンヌ・メイトランドよ」

「ナイジェル・カッターだ」

「村瀬万と申します」

「メイトランドさんにカッターさん、村瀬さんですね。よろしくお願いします」


―その夜―


「という事があってな。後々聞いたら施設の食堂で働いてる調理師なんだと」


 ロディアの外れにあるホテルにて、三人は昼間の一件を桃李と羽辰に・・・・・・報告していた。原戸に殺されたと思わせてトリックでまんまと生き延びた二人は、社外から情報収集を続けつつ時たまこうしてリューラ達と情報交換をしているのである。


「ほう、サイボーグですか。我が故郷ラビーレマにも技術自体はありましたが、セルフメンテナンスが可能とはかなり高度な代物のようですねぇ」

『そしてそれより気掛かりなのは、そのターナーという調理師を見たバシロさんの様子が変だったという事ですかね』

「そうなんだよな。まぁ、その話は本人から聞くとしようや。なぁ、どうなんだよ」

 話を振られたバシロはさして躊躇うわけでもなく、さらりと言ってのける。

「どうっつってもな、そう大した事じゃねぇよ。ただ、似てたんだよあの調理師」

「似てたって、何にです?」

「生き別れになった、俺の顔なじみにに」

「顔なじみ?」

「そうだ。まぁ、話せば長くなるわけだが……」


 バシロは自らの過去をより詳しく語って聞かせた(読者諸君は外伝『バシロロロロロロ~王の名を冠す男~』を参照)。

 自分が刻印術なる秘術の使い手であったこと、しかし衰退の波に押され術者を諦め学者を志したこと、黒い人造生命体の研究とレーゲン反逆のこと――そして、ケラスとの出会いと余りにも呆気ない別れのこと。


「そうか……やっぱ苦労してたんだな、お前」

「まぁな……だがその苦労が報われて今があるんだ、贅沢は言えねぇよ。兎も角あの調理師はケラスそっくりだったんだ。料理の腕が神がかってんのもそうだし、注文取るまでもなくその時そいつに最適なブツを拵えるのは奴の特技だったしな……」

「そういや何であいつ私が鷹の爪入りの辛味噌ラーメン好きだって解ったんだ?しかもご丁寧に芽出し玄米の冷や飯まで用意してくれやがって、冷や飯粥無茶苦茶美味かったぞ」

「そういえば私も丁度明太釜玉うどんと天麩羅てんぷらが死ぬほど食べたかったんですよ。しかも海老、芋、竹輪、茄子、烏賊、海老と玉葱たっぷりの掻き揚げ……全て私がその時食べたいと思ったものばかり出てきたんですよね……」

『となると、リネラ・ターナーは……』

「いや、そいつは早計って奴だろ。確かに可能性はあるが、断言できるレベルじゃあねぇ。その件はひとまず保留としようや」

「それもそうですね。そういえば向こう・・・からそろそろ合流しないかとの話が出ていました。そろそろ準備を進めるとしましょうか」

「だな……会社からも秘宝回収隊襲撃計画、希望者募集中とか出てやがるし……一雨来るかな、この流れは」

次回、恒例のアレ!

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