表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン6-エレモス編-
274/450

第二百七十四話 中央スカサリ学園の狂気:前編





学園側にまたも進展!

―前回より・警察署の給湯室にて―


「『中央スカサリ学園、秘宝回収隊結成』……か。ようやるわねぇ、あそこも」

「金と人員に余裕がある故のパフォーマンス的なもんでしょ。ドゥレイ神話の映画化にせよ外来海竜討伐にせよ今回の秘宝回収隊だかにせよ、表でどんな目的を言っていようが結局の所は学園の宣伝にさえなりゃそれでいいんですから」


 その日、高宮と真壁は珍しくも警察署内の給湯室で呑気に新聞など読んでいた。と言うのも今日は、件の未確認超存在に関する重要な情報を持っているという人物から話を聞く予定が入っており、予め先方から警察署に来てもらうことになっていたのである。

 因みに高宮が読んでいた新聞の見出しに書かれていた『秘宝回収隊』とは、学園にとっての魔力供給源である"根源"の老朽化を防ぐ効果を持つとされる謎の物体"秘宝"の探索・回収を行うという使命を負った者達であり、人員の多くは学園関係者の内から立候補・推薦・各種審査によって選ばれ、それぞれが秘宝の在処と仮定される幾つかの"候補地"に派遣されるという。活動期間は十二月中旬から始まる"夏"休み(エレモスは南半球にあるため暦の指し示す四季が北半球の真逆に位置する為こうなる)のほぼ半分から三分の二程度で、参加学生は課題等の免除と同時に莫大な奨学金や単位(職員ならば特別手当)を獲得できる(但し参加自体が命懸けであるため審査はより厳しくなる)。


「宣伝目的なのは解りきった事実だけど、本当に凄いのはそれでも何だかんだで成功させちゃう所よね。そういう所は初志貫徹って言うのかしら、まさにそれよね」

「ですね。警察おれらなんて何かと託けちゃあアレコレゴネて途中放棄しちまうってのに、本当凄いですよダンパーとかいう爺さんは」

「だからそういう話はここでは……まぁ、的を射てるからいいけどね」


―同日・プロセルピナ邸の大広間にて―


「しつこいようじゃが何度でも言わせて欲しい。皆、おめでとう」


 その日のプロセルピナ邸は、これまでに無いほどの賑わいを見せていた。生徒会長であるエリスロを初めとする生徒会の役員達が中心となって、プロセルピナ邸にて大規模なパーティを開いた為である。パーティの概要とは件の秘宝回収隊結成を祝い、選ばれた隊士達を祝福し、作戦の成功を祈願するものに他ならない。参加者は学園関係者を初めとした秘宝回収作戦に携わる者、またその関係者など軽く見積もっても千人は居るだろうか。プロセルピナ邸の規模は一般人からすれば恐ろしいものがある。


「ほげぇ、何か凄い規模ねぇ。音圧で耳が落っこちそう」

「耳落ちる云々はともかくスゲェ熱気だな。冷房効いてんのに汗止まんねぇ」

「それは熱気じゃなくてあんたが辛いものばっかり食べてるからでしょ」

「胃に悪いのだー」


 そしてそんな祝賀パーティには、例の如くかの新任職員三人と転入生一人(を、装って学園に潜伏中の繁達)も招かれていた。先の災害鎮圧の実績を讃えられ、ルラキ共々回収隊に大抜擢されたのである。


「……んで、向こう・・・は何つってる?」

「会社の有罪クロを証明できる確かな情報は掴めたし、あとはもう一息だってさ」

「ふむ……となりゃ俺らもそろそろ段取りを済ませるか」

「お、合流すんの?」

「まぁ、予定としちゃあな。だがその為にも準備が必要だ。あと念のために、学園内ももう少し調べときてぇしな。何か怪しい所とか……」

「怪しい所ねぇ……あ、そういえば」

「ん、どうした櫻井・・?」

「前に僕だけで生徒会長に会った時、何か物憂い表情でため息ついてたのだ」

「ほう、物憂い表情だと?」

「うん、それで『どうかしたんですか』って聞いたら、『ここだけの話、特秘業務の日が近付いてる』って言ってて」

「特秘業務?」

「そ。何か生徒会長って定期的に特別な業務を任されてる事みたいで、思い出すのも嫌になるような内容だから事後に記憶消去と精神浄化を受けてるらしいんだけど、本能的に刻まれた恐怖や苦痛は拭えないとか何とかで。確か明々後日しあさっての22時から翌1時までだっけ、翌日は休めるらしいんだけどそれでも辛いみたいで」

「確かに怪しいな……だが特秘となりゃ専用の場所で行われるだろうし」

「わざわざ尾行するのもねぇ……」

 三人が頭を抱える中、調査を買って出たのは牧瀬麻美こと清水香織であった。

「なら私に任せなさい。丁度適任なのが居るのよね」


―後日・『列王の輪』内部にて―


「アダーラ、報告を」

《はい、我等が主よ》

 ふと若い女の声がしたかと思うと、香織の眼前に細身の黒い蛙系半水種の女・アダーラが現れた。奇妙な白骨の仮面を被り蛙という割に尾のある彼女の服装は極めて簡素なものであり、動きやすさを優先したものであることが見て取れる。

《"高貴なる生徒会長の特秘業務"……こう言えば聞こえはいでしょう。しかしながらその実態は、この上なく狂気じみたものでした》

「へぇ、あんたが主観でそう言うってことは……よっぽど酷い目に遭ってたのね、生徒会長」

《はい。諜報員が報告に私情を持ち出すなど本来ならばあってはならぬ事ですが、今回ばかりはお許しを》

「今回どころかこれからも出していいよ、私情くらい。それで、何があったの?」

次回、精霊アダーラが見たものとは!?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ