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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン6-エレモス編-
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第二百七十三話 目撃者になっちゃったら:後編




こういう時ならヤバいもんは見ないに限るね(他人事)

―前回より―


『そもそも世間のバカ共は、我が国ヴラスタリと隣国フリサリダの対立状態なんざ遙か昔の話なんだと思い込んでいるんだろうが、そんなもんは表面上の話に過ぎねぇ!対立は二つの組織を代行者に据えて密かに続いてんだよ!』

 グゴンの声量は凄まじいもので、画面越しでありながら部屋全体の空気が震えているかのようであった。

『その代行者ってのが、要するにクロコス・サイエンスウチと中央スカサリ学園でな!無論表立って派手にやり合う事は無かったが、その分互いに影で準備を進めてたっつー寸法よ!』

「その"準備"こそ、先程貴方が見た人工羊水入り培養槽よ。あの中で製造されているのは、我がクロコス・サイエンスの兵―――いえ、もっと厳密に言うなら"グゴン様の兵"とでも言うべきかしらね」

「彼の……?」

『そうだとも!テメェが見てきたアレらはただの改造生物じゃねぇ、俺の細胞を組み込んでパワーとタフネスを無茶苦茶強化した超生命体なんだよ!』

「今は試験段階で本格的な運用には至ってないけれど、いずれはあの忌まわしい中央スカサリ学園へ我社の大隊を派遣し、ゆくゆくはエレモス全土を掌握してみせるわ!」

『そうだなぁ!いい加減シケた田舎をぶっ潰す"テスト"にも飽き飽きしてた所だしよォ、近ェ内にもっとデケー獲物狙ってみっかァ?グェハハハハハァッ!』

「田舎を潰すテスト……まさか!?」

「あら、気付いてくれた?嬉しいわねぇ。そうよ、最近新聞を騒がせてる"未確認超存在"……あれは私達が作り上げたモノ……施設じゃスペースに限りがあるし、まぁ野外訓練みたいなものね。途中中央スカサリ学園に邪魔立てこそされたけど、おかげでいいデータが得られたわ」

「……そんなの、単なる虐殺じゃないですかっ!」

「あら、貴方がそれを言うの?"智の為なら法や倫理の無視も妥当"という私の言葉を引用した貴方が?」

『ヘァハハハハハハハハァ!てんで傑作、全くお笑いだぜぇ!いいか小僧、冥土の土産に教えといてやる!学術ってなぁ――いや、科学ってのはなぁ、テメェのような甘ったれが許される程生温ィ世界じゃねぇんだよッ!ハルツ、例の新作はあるか!?』

「えぇ、この通りに」

 ハルツが手元から取り出したのは、樹脂製の飲み口スパウトが付いた透明な軟包装パウチ容器であった。中はピンク色に透き通ったゲル状の物体で満たされており、その中にBB弾程の白い小さな球体が点在している。

「な、何ですそれは――ッが!?」

「何でもいいから飲みなさい。大丈夫よ、味と食感だけは保障するわ」

「ほぅ、はぉご、ぉぁぁぁぁ!?」

 パウチ容器の中身はハルツによって強引に原戸の体内へと流し込まれた。


「――ッ、ぁ――は――な、あ――」


 容器の中身を飲み干してしまった原戸はそれの危険性を本能的に察知し何とか吐き出そうとしたが、当然それは叶わない。そして直後に凄まじい悲鳴を上げたかと思うと、唐突に白目を剥いて動きを止め倒れ込んでしまった。


「第一チャプタークリア、続いて第二チャプターに移行します」

『よし、やれ!』

「では早速―――リガアキオ・テタ」

 ハルツが謎の言葉を発すると、倒れ込んでいた原戸は突如むくりと起き上がり、まるで操られているかのように立ち上がり静止した。

「第二チャプタークリア。続いて第三チャプターに移行します。何かご要望は?」

『なら侵入者を探させろ!見つけ次第殺せと言え!』

「畏まりました。では―――ヤシウユニ・ンシ・ヲセガサ。イダシケツ・ミ・セロコグス」

 再びハルツが謎の言葉を発すると、立ち尽くしていた原戸は一切無駄のない動きで部屋を出ていった。命令のまま、秘められた地下施設の中に入り込んだ侵入者を捜し出し殺害する為に。


CSクロコス・サイエンス社地下生体兵器製造施設・通称"子宮"―


『それにしても凄いですねぇ、地下にこんな設備を有していたとは。この流れから察するに、この会社はクロで間違いないようだ』

「ですねぇ。詳しくはもっと調べねばならんでしょうが、新聞で騒がれている"未確認超存在"とやらもこの化け物共で確定としていいでしょう」


 新米研究員ショニー兄妹(兄タストロ、妹ラコドゥ)を名乗りクロコス・サイエンスの研究施設に潜伏した桃李と羽辰は、地道な調査の果てに漸く確かな情報を掴むに至っていた。


『となれば長居は無用ですね。とっとと脱出して適当にこの情報を向こうに伝えたらば、何か美味い物でも食べに行きましょう。養殖エビの天麩羅テンプラかフライでも食べたいところです』

「相ッ変わらず養殖エビ好きですよね兄さん」

『安っぽさも一つのブランドなんですよ。やれ天然だやれ純国産だと、大してものを考えて食事をしている訳でもない連中があれこれかしているのを見ると腹が立ってきて仕方ないということもあるのでしょうがね。そういう貴女こそ遺伝子組み換えのトウモロコシ好きじゃないですか』

「遺伝子組み換え作物は偉大ですよ。あれのお陰でどれだけ無駄な農薬を減らし、商品を長持ちさせることができるようになったことか。少なくとも虫食いだらけの無農薬や、農薬だらけの作物よりはマシですよ。こう言うと兄さんと似たような話になってしまいますが」

『いえいえ、立派な理論じゃないですか。いいと思いますよ、それでこそ学術派出身の女だ――ねぇ、貴男もそう思いませんか?』


 思わせぶりに話題を振った羽辰の視線の先には、謎のゲルを飲まされ死んだ目となった原戸が佇んでいた。


―部屋―


「居ました、侵入者です!」

『何!?マジか!よし殺せ!すぐ殺せ!出来るだけ派手に殺せ!とにかく殺せ!』

「落ち着いて下さいまし、グゴン様。焦らずとも大丈夫ですわ、アレにかかればあの程度の相手などすぐにでも殺して差し上げましょう」


 そう言って再びハルツが謎の言葉を唱え始めると、原戸の動きがいきなり活性化。秘められた力により二人を圧倒、子宮端にある排水口に突き落とした。翌日ハルツは二人が施設内で発生した事故に巻き込まれ死亡したと発表(但し死体は上がらず)、これに対するリューラ達の反応は余りにも素っ気ないものであった。

次回、学園側でも大きな動きが!(え?桃李と羽辰?大丈夫大丈夫、こういう場合そこは心配に及ばないから)

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