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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン6-エレモス編-
271/450

第二百七十一話 友と事後処理と機能解説




事件が終わって

―解説―


 前回終盤以後の出来事についてダイジェスト形式で述べる前に、前回登場した『列王の輪』の形態二つについて解説させて頂く。

 先ず繁が香織からの貸与を受けて用いた形態は、名を『インダコ・アッサシーノ』という。前回も記したとおり全体的に寒色中心のカラーリングから成る和装に獅子口というタイプの能面に似た仮面を身に付け長刀を振るう様は、どこか侍を思わせる。とはいえそれもその筈で、この形態を担当する真鍮側の男性精霊・ミキシは、青紫色の外骨格に四本角と赤い五つ目という異形の姿ながらに慎ましやかで義を重んじる武人然とした、所謂"侍キャラ"である(しかもそれでいて堅物というわけではなく、ある程度の冗談も通じるため精霊同士の間での評判もそれなりにいい)。

 性能としては見た目通り長刀を用いての接近戦に特化されており、さして特殊な機能などはあまり持ち合わせていない(あって精々瞬間移動と斬撃強化のみ)。しかし反面列王の輪が擁する形態の中では最高クラスの精密動作性と機動力を誇り、純然たる戦闘能力ならばトップクラスなのだとは、製作者であるカドムの言葉である。


 続いて香織自身が用いた形態の名は『ラーゴ・パッツィーア』という。パッツィーアの名が付く事から解るとおり、担当精霊であるロットはまともに喋ることができず(無論、根の性格は少々気が弱く自分に自信を持てない以外は至極真っ当である)、温厚な副精霊・シンガの各種サポート(通訳など)は必須と言える。全体的なデザインとしては"顔面を除く右上半身が甲殻類である黒豹系禽獣種"というロットの容姿を反映したかのような漆黒のプレートアーマーであり、ヘルクル同様どこか機械的なイメージが見受けられる。

 性能としては(ヘルクルやアメイウス程ではないものの)燃費が高く扱いづらいが、汎用性や総合的な戦闘能力に関してはトップクラスのスペックを誇る。全身から放出するガス状の微粒子で身を隠す、手にした物体へ魔力を注入し性能をある程度強化した上で支配下に置くなどの機能をを有し、専門の運用でこそ真価を発揮する形態と言える。


―前回より―


 中央スカサリ学園で巻き起こった生体災害は学園側に死傷者の出ないまま鎮圧された。

 後先考えずに封鎖されているプールやグラウンドへ向かった五人は学園側から厳重注意を受けたが、同時にその勇気と正義感を讃えられ、学園を危機から救ったとして周囲から英雄視されることとなる。対して、理事長相手に文句を言って事態を深刻化させた者達もそれ相応の報いを受けたわけだが、具体的にどうなったかは読者諸君の想像にお任せしたい(要するに尺の都合である)。


―後日・プロセルピナ邸はエリスロの自室にて―


「先の生体災害の一件、御苦労であった。親友として誇りに思うぞ、ルラキよ」


 生体災害鎮圧に関する一件を聞きつけたエリスロはその日、都市部にある豪奢な自宅に五人―ルラキ、小藪(もとい繁)、牧瀬(もとい香織)、マクラウド(もといニコラ)、揚羽(もとい春樹)―を招き自家製の紅茶と侍従に作らせた菓子を振る舞っていた。


「お褒めに預かり光栄です、エリスロ様。しかし件の災害鎮圧に於ける真の英雄は此方の皆様に御座います故、讃えられるべきは彼らかと」

「ふむ、相変わらず謙虚じゃの。しかし其方の言うことにも一理ある……転入生殿並びに教員方、貴殿等こそは本学園を救って下さった、まさに英雄に御座います。心からお礼を申し上げたい」

「いやいや、英雄なんて畏れ多いです。僕なんて精々場外で英雄の勝利を祈ってた脇役くらいのもので……」

「そうですよ。我々としても最初は二の足を踏んでばかりで飛び込む勇気が出せなかったんです」

「ルラキさんはそんな私達に勇気をくれました。私達が英雄なら彼女は差詰め英雄を導いた勝利の女神ですよ。神話時代の英雄はその多くが大いなる神格の導きや手解きを受けてきました。そういった英雄と私達を同一視するのは気が引けますが、ルラキさんはまさに女神です」

「そうでなければ生命進化の切っ掛けという概念のようなものです。如何に優れた形質も、切っ掛けが無ければ獲得し得ない。我々はまさしく、規則を破ってでも正義のために行動する勇気という形質を彼女という切っ掛けによって獲得し、魂を持つ者として格上になれたのです」

「ほぅ、"女神"に"切っ掛け"とはまた粋な例え方ですな。流石は様々な分野に造詣ぞうけいの深い研究者殿で在らせられる。幾ら例外的な立場にあるとは言え、貴殿等と妾の関係を只"同じ組織に属する者同士"で終わらせるのは些か惜しい気もしますなぁ……うむ……そうじゃ!」

 暫く頭を抱えたエリスロは、大袈裟な動作を取りつつ言い放った。

「転入生殿並びに職員方ッ!このエリスロ・パナギア・ハラ・エフティヒア・プロセルピナ、貴殿等に一つお願いがあるのですが、宜しいですかな!?」

「え、あ、はぁ、どうぞ。何なりとお申し付けを」

かたじけない……ではお願い申し上げます」

 改まって立ち上がったエリスロは、頭に乗せていた被り物を取り跪きながら言葉を紡ぐ。

皆々方みなみながた……どうかこの小娘めを親愛なる友として認めては下さいませんでしょうか?貴殿等のような才知溢れる方々と親交を結び互いに認め合える関係となる事こそは、ヒトの上に立つべくして産まれし妾の使命と言っても差し支えありませぬ故」

「あぁ……頭を上げて下さい生徒会長、そんな私達なんかに頭下げちゃ駄目ですよ」

「そうですよ。その位態々頼み込むまでもありませんって」

「こうして語らい会う時点で、既に親交を結ぶという目標は果たされてる訳ですし」

「その程度ならお安い御用ですよ。僕らで良ければ是非に」

「エリスロ様、皆様もこう仰有って居られる訳ですし……そろそろ頭をお上げになっては如何です?」

「うむ……それもそうじゃのぅ……皆々方、見苦しい様を見せてしまい申し訳ありませぬ。そしてお礼を言わせて頂きたい、認めて下さり誠に有り難う御座います」

 立ち上がって被り物を頭に乗せたエリスロは、再び椅子に腰掛けながら最新型の携帯電話で何処かに連絡を入れる。

『お呼びで御座いますか、お嬢様』

「うむ。そろそろ昼時じゃ。お客人―否、我が親愛なる友らの為に昼食を拵えてくれぬか」

『畏まりました』

「そう言うわけで御座いますから皆々方、お好きな料理などありましたらお教え頂けませぬか?それとルラキよ、其方は何時も通りのメニューで良いか?容貌が在れば好きに申すが良いぞ、何せ今日は無礼講じゃからな」


 かくして豪邸で昼食を満喫した四人は満足げな様子で帰宅した訳だが、後日揃って(個人差はあれども)口内炎に悩まされたという。

次回、クロコス・サイエンスの支配者が登場!?

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