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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン6-エレモス編-
268/450

第二百六十八話 聞き込め!刑事さんW





老婆の導きによりCS社を訪れた二人は……

―前回より・CS社の研究施設―


「怪物ねぇ……」

「何かありませんか?どんな些細な情報でも構いません」


 俗に言う"警察特権"でロビーや社屋を通り抜けクロコス・サイエンスの研究施設へたどり着いた高宮と真壁は、早速"未確認超存在"関連の聞き込みにとりかかった。


「そんなご大層なもんじゃなくていいんです。どう聞いても変な鳴き声だとか、有り得ねー形の足音だとか、そういうのでいいんですよ。曖昧でもこっちで適当に肉付けして調査に役立てますから」

「いや、適当に肉付けするのはやめなさい。それじゃマスゴミと同じになっちゃうから。ともあれ、何か無いでしょうか?どんな些細な事でも構いません。情報さえあれば、我々には充分ですので」

「うーん……"そういうのでいい"と言われても、そんなのそうそうお目に掛かれるものじゃありませんからねぇ……」

「あー……やっぱそうですよねぇ。いや、何か無茶言ってすんませんね……こっちも人命がかかってるもんで必至になりすぎてたようだ」

「いえいえ、こちらこそすみません。こういった場合本来ならば我々のような者が自ら出向いて捜査に協力すべきなのですがね、此方も此方であれこれ手一杯なもので。とは言え"未確認超存在"は我社わがしゃにとっても厄介な敵故、捜査に協力するよう上層部に掛け合ってみましょう」

「お心遣い痛み入ります」


 その後も二人は敷地内で遭遇した者へ手当たり次第聞き込みを行ったが、芳しい情報は得られなかった。


―昼前―


「結局のところ皆無に等しいわね、収穫」

「ほぼ皆無ですね、収穫」


 一通りの聞き込みを終えた二人は、前回の冒頭で繰り広げられたようなやり取りを交わしながらとぼとぼと歩いていた。


「やっぱあの婆さん信じた俺らが馬鹿だったんですかね」

「どうかしらね。でも情報提供してくれる事になったんだからまだマシな方じゃないかしらね」

「それもそうですけど……はぁ、とりあえずどっかで適当に飯食って帰りますか?」

「そうね。あの守銭奴本部長の事だから、御飯代は経費じゃ落ちなさそうだけど、たまには何か高いものでも食べに行きましょうか」

「あぁ、いいですねぇ。んじゃ俺、奢りま―「おーぅい、刑事さんよー」―ぁン?」

 呼び止める声に二人が振り向くと、淡い紫色の作業着を来た鬼頭種と思しき大男が手招きしている。よく見ればその男というのは、新米警備員のナイジェル・カッター(もとい、バシロによって男性に擬態したリューラ)であった。

「あら、カッターさん。お仕事はもう終わったんですか?」

「おぅ、丁度交代の時間が来てな」

「それより刑事さん、大変だよ。ついさっき、あんた達が探してそうなもんが見付かったんだ」

 急かすように言うのは、ナイジェルの胴体と一体化した流体種スザンヌ・メイトランド(を、名乗るバシロ)。

「俺らの探してたようなブツ?」

「そうさ、そうとも。いや本当びっくりしたよ」

「まぁ立ち話も何だし、直接見せた方が早ぇかな。とりまこんな時間だ、ひとまず社食で飯にしようや」


 かくしてクロコス・サイエンスの社員食堂(社外の者にも解放)で昼食を摂った二人は、ナイジェルとスザンヌ(という名のリューラとバシロ)の案内で警備員の詰め所へ向かった。


CSクロコス・サイエンス社・地下警備員詰め所―


「おゥよろず、刑事さん達連れて来たぜ」

「ありがとうございます」

「それで、ブツってのは……」

「此方です」

 そう言って万(という名乗る璃桜)は詰め所の冷蔵庫から白い箱を取り出し、その蓋をそっと開けた。

「こ、これは……!」

おどれぇたろ?漂流物捕捉ネットに引っ掛かってたんだよ」

 クーラーボックスに釣られたばかりの鮮魚よろしく納められていたのは、犬のような頭に手長猿のような胴体を持つ謎めいた獣の死体であった。体毛は一切なく、その肌はくすんだ緑色であった。

「最初は食あたりで毛の抜けた野良犬か禽獣種の水死体なんじゃねぇかとも思って捨てようと思ってたんだがどうにもこじつけ臭くてな。捜査の足しになりゃいいが……」

「とんでもねぇ、こういうのを待ってたんですよ。ねぇ、高宮さん?」

「そうね。うろ覚えだけど、現場に遺されていた骨や牙を元手に描かれた復元図にこんなのが居たような気もするし……有り難く頂戴致しますわ」

「何かよくわかんないけど、捜査に役立てられるんなら良かったわ」

「ですね。警備員である私達にできることは限られていますが、何か協力できそうな事があったら言ってください。力になりますから」

「三人とも、有り難う御座います。クーラーボックスも後日必ずお返しします」

「俺らもなるべく早めに事件を解決できるよう頑張りますんで、皆さんもお気を付けて……」


 かくして二人は謎めいた獣の死体が入ったクーラーボックスを受け取り、クロコス・サイエンスを後にした。詳しい調査の結果、高宮の言った通りその獣は復元図が描かれていた個体と同じものと判明。その後も詳細な調査が進められ、結果として"エレモスの在来種ではない"との結論が出され、事件は大きく動き出すこととなる。

 同時に警察上層部は高宮と真壁を本来の所属部署である三課に戻そうと考えたが、手掛かりを掴めたことで捜査意欲の高まった二人はこれを拒否。引き続き超存在襲撃事件についての捜査を続けさせて欲しいと上層部に訴えかけたという。

捜査に進展あり!

次回、学園側のメンバーが遂に"未確認超存在"と対決!

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