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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン6-エレモス編-
267/450

第二百六十七話 不遇の警察官高宮と真壁




警察関係の記述、間違いだらけだろうけどあまり突っ込まんで下さい……

―ツジラジ製作陣潜伏開始から五日目の午前中・CSクロコス・サイエンス社前―


「何だかんだ言いつつも結局来ちゃったわね、クロコス・サイエンス」

「えぇ、来ちゃいましたねぇ、クロコス・サイエンス」


 それこそ建造物というより都市のそれに等しいクロコス・サイエンスの社前に佇んだ警官二人―豹女の高宮とヤモリ男の真壁は、その常軌を逸した得も言われぬ威圧感に気圧される余り掠れ気味の声で意味もなくぼやき合っていた。

 そもそも九月の勃発依頼三ヶ月に渡り世間を騒がせている"未確認超存在襲撃事件"の捜査を(余りにも進展がないことに半ば空しさと苛立ちを感じながらも)続けていた二人が、何故事件現場ですらないクロコス・サイエンスへ来たのか?その理由について詳しく語るには、二時間ほど時を溯らねばならない。


=二時間前・田舎のあぜ道=


「はぁー……相変わらず収穫ないですね」

「まぁ、遺物らしい何かが見付かっただけ幸運だと思いましょうよ」

 現場視察を終えた二人は、田畑ばかりのあぜ道をとぼとぼ歩いていた。

「それはそうですけど……はぁ、また大学に回して化け物の復元図描いてもらうだけで終わりますねこれ」

「復元図描いて貰うだけで終わり、じゃないでしょ。報告書あるんだから」

「あー報告書、ありましたねそんなの……何か何時も同じような事ばっか書いてる気しかしないですけど。違いと言えば足跡の形とかサイズとか、落ちてたもののスケッチや現場の写真くらいで」

「そんな数少ない差違さえもある程度のパターンが見え始めてる辺り、もうどうしようもないわね」

「本当ですよ……もういっそ清書した報告書のコピー束で持っといて細かい所書き換えるってのができたらどんだけ楽かっていうね」

「気持ちはわかるけど、それやっちゃうと警察云々以前に公務員としてアウトな気がするからやめときなさい。もしもの事もあるんだし……っていうか、私達元々三課よね?何でこんな科捜研や魔捜研みたいなことやんなきゃならないの?」

「そういう質問は俺じゃなくて本部に……まぁ、"いいからさっさと仕事しろ"で一蹴されるでしょうけど。俺だって高宮さんと空き巣狩りしたいですよ」

「やめなさいよその言い方……私相手だからいいけど、上層部にバレたらまた警察の威信がどうとかグチグチ言われるわよ?」

「うぁ、すんません。新人の頃のが癖になってて――「もし、そこのお二人」―はぇ?」

 突如背後からの声に呼び止められた二人が振り返ると―何時の間に現れたのであろうか―彼らの背後にボロ布を何重にも身に纏い身を隠した小柄な人物(声から察するに老婆であろうか)が佇んでいた。

「つかぬ事をお伺いしますが……もしやお二人は、向こうのダフニ村に何か御用でもあったのですかな?」

「ダフニ村ですか?えぇ、少し人と会う約束がありましてね」

 等とフレンドリーな口ぶりで答える高宮だったが、彼女と真壁はどこか怪しげで信用ならない雰囲気の老婆を警戒してもいた。

「ほう、それはそれは……ふぅむ……しかし失礼ながら、とても人と合う約束をしていたようには見えませぬなぁ……」

「……何故そう思うんです?」

「ぬふぅん……"年寄りの直感"といえばそれまでですが、ダフニの村民は病的に疑り深く、行き過ぎたように排他的なのですよ。家族の絆は強くとも、外の者とは関わろうともしない……最早村とは名ばかりな、家の集まり……そんな者共が、まさか異国の民と触れ合おう筈がない……」

「(なッ……このババア、何故俺達が国外から来たと解った!?)」

「(そもそもエレモスに決まった血筋はない、外見から出身を推測するなんてほぼ無理な筈なのに……)」

「ぬほほ……これは失礼、驚かせてしまいましたな。こんな身なりですが私はさる魔術師の家系の者でしてな、体表面を流れる魔力から相手の素性を読み取るなんて真似ができるのですよ……」

「そりゃあ凄ぇ。じゃあ俺らが何者で、何の目的でここに来たのかも?」

「勿論わかりますとも……あなた方は警察の関係者で、ダフニ村には捜査のために行った……そうでしょう?」

 老婆の的確な発言に、二人は思わず押し黙った。

「序でに言えば……あなた方お二人がお求めであろう情報モノの在処もわかりますよ?」

「……ほう、それは面白い。ではその"在処"とは一体何処なのです?」

 高宮の問いかけに、老婆は芝居がかった動きと大袈裟な喋りで答えてみせる。

「芝居臭い言い方になりますが……蕾の中に咲く柘榴……或いは、その中央に据え付けられし、学者の集うクロッカス……それこそがあなた方の求めるモノの在処に御座います……」

「蕾の中のザクロ?学者の集うクロッカス?なぁ婆さん、そりゃ一体何の――って、あれ?」

 今一つ言葉の意味を理解できなかった真壁は老婆に解りやすい形での答えを求めようとするが、いつの間にか老婆は消え失せていた。

「ありゃ?あの婆さん何処行った?クソっ、気取った言い方しやがって――「急ぐわよ、真壁君」

「行くったって高宮さん、あんな答えじゃどこ行きゃいいかなんて――「わかったわ」―えッ、どういう事ですか?」

「地名よ。蕾に柘榴とクロッカス、これらをノモシアの古代語に置き換えるとそれぞれフリサリダ、ロディア、クロコスとなるの」

「つまり、単純にクロコス・サイエンスを目指せって意味だったんですか?」

「そういうこと。確証はないけど、行ってみる価値は十二分にあるわ」

「ですね……何やかんやで怪しい話もよく聞きますし」

次回、二人がクロコス・サイエンスで目にしたものとは!?

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