表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン5-ヤムタ編-
258/450

第二百五十八話 Dahlia-光を求めようとしたけど無理でした~ッッ!-


もしかして:そもそもダリアに光なんてない

―樋野ダリアの独白―


 幾度考えても答えの見えない疑問というものは何処にでもあり、また誰にでもある。

 当然私にもそういったものは存在する。それはひとえに『何故小児性愛は社会的禁忌と見なされるのか』ということに尽きる。

 以前語った通り私は産まれながらの小児性愛者であり、それは半ば本能に近いものであった。ならばそれが社会的にどう扱われていようとも、周囲から白眼視されるのは世の理に反しているのではないだろうか。特殊性癖の社会的少数派である以上、小児性愛は同性愛や対物性愛と同義であるわけで、それを恥ずべき悪徳と考える社会倫理そのものに問題があり、即ち小児性愛の否定とは、社会的多数派の身勝手な差別意識によるものではないのか。歳不相応に教養のあった私は、中学生にしてそんな事を真面目に考えていた。

 だが成長してものを知る内に、私は小児性愛の否定が単なる"多数派の好き嫌い"とも言い切れないのだということを知った。例えば身体への負担、教育上の悪影響、感染症の危険性などがそれである。その事を知ってからは、少女達との行為に於いてもそれらに配慮するよう気を遣った。

 だがそれでも、小児性愛は否定され続け、私達は投獄された。カタル・ティゾルこちらで真宝を支配下に置いてからはそのしがらみが無くなったので自由にやっていたが、闘技場の客や主要な取引先から白眼視されるのは変わりなかった(貴様等の下手な取り繕いで隠せるとでも思ったか、愚物めが)。


 だから私は考えた。私を認めない世界など、作り替えてしまえばいいと。

 思い立った私は亡き恩師レジョ・マドムの遺した資料を元手に研究を開始。調査の末に我々は古代"成長し性格の歪んだ娘を昔に戻す"という名目でさる国の王が開発した魔術薬の製造法を入手し、材料を揃えることに成功した。

 この薬物をエアゾル状にして撒き散らせば、吸った者はヒトに限り老若男女問わず幼女と化す。成長も老化もせず、同性間での繁殖も可能という至れり尽くせりの理想的な幼女世界が完成する。我々はそこで自らも幼女と化し、己の本能がままに生きられるのだ。

 更に私はその頃、図らずも地球とカタル・ティゾルを自在に行き来する"次元の門"を開く秘術をも手に入れていた。この術を用いればカタル・ティゾルのみならず地球をも幼女の世界とすることができるだろう。


―前回より―


「ダぁぁぁリーアくゥゥゥゥン!?どーっしたんでっすかァ?げぇん気ないでっスよォん!?」

 これ以上ないほどに相手を侮辱するように闘技場の地面へ倒れ伏すダリアを嘲ってみせる、繁。彼の手には相手を弱体化させる手甲鉤『爪牙虫-愉悦-』が展開され、前半部が藍色で後半部が鈍色の柄に鮮やかな紅色をした多角形の穂とエメラルドグリーンの宝玉が如し石突きが特徴的な槍が握られている。

「ッぐ……あ、クソっ……何故だ……何故、こんなことに……」

 一方のダリアはというと絵に描いたような劣勢……というか、明らかな絶対絶命ピンチであった――それも、逆転の可能性がまるで見えないタイプの。


 小さな蜘蛛達が繁用に作り上げた闘技場『塵蜘蛛ゴミグモの破壊工作』は、ケージ・マッチで用いられる金網ケージのような狭めの空間であり、その内部で繰り広げられている光景も"ヘル・イン・ア・セル(数ある中でも最も危険とされるプロレスの試合形式)"を彷彿とさせる猟奇的で残酷なものとなっていた(こらそこ『そんなのいつもだろ』とか言わない)。また、空間系魔術にしては若干狭い印象のある『塵蜘蛛の破壊工作』に備わった機能は、寧ろ狭いからこそ本領を発揮するような代物であり、繁の残虐行為に拍車を掛けるものであった。

 一見木の枝を蜘蛛の糸で結んだだけに見える内壁には様々な仕掛けが施されており、場内に居る何れかの者が壁面に衝突すると様々な罠(例えば降り注ぐ画鋲、落ちてくる火炎瓶、壁から飛び出してくるナイフなど)がランダムで発動する。しかもそれの全ては身体能力が平均以下の一般人でも充分防御・回避・武器への転用が可能な代物であり、発動したからと言って必ずしも被害を被る訳ではない―――のだが、それが逆にダリアを追い詰めていた。

 確かに幻妖の術によりヒトを超えた身体能力を誇るダリアにとって、一般人が回避可能な罠を避けることは容易い。だがそれはあくまで彼が好調な場合の話。体調不良などで弱体化していれば避けられるものも避けられなくなるのは当然である。ともすれば対象物を弱体化させる"爪牙虫"を操る繁は天敵と言えた。そしてまた繁は、その特性をより効率的に生かすための策を忘れない。


 その策というのはデッドのそれと似たもので"最初の二~四回程は敢えて弱体化させないでおく"というもの。すると大抵の相手は"この罠は生温い"と思い込み、徐々に身体を蝕む弱体化にも殆どの場合気付かない。となればあとは此方のもので、受け身の動きを繰り返すだけで相手は勝手に自滅してくれる。しかしそれでも飽き足らない繁は、そこに更なる隠し味を加える事にした。

 その"隠し味"こそ先程描写した奇妙な槍―もとい、嘗てデゼルト・オルカ号にて船長の八坂より授かった代物の真なる姿である。普遍的な姿に擬態していたこの槍は『等打槍とうだそうズムワルト』なる名であり、嘗てカドム・イムに作られながらふとしたミスで持ち主不在のまま店に戻れなかったという曰く付きの武器である。

 真の姿を取り戻したズムワルトの固有効果は『相手の攻撃を能動的に相殺へ持ち込む』という、まさに等打槍という名に恥じぬ強力なものである。もし仮に相手の攻撃へこの槍で触れることが出来たなら、それが如何に強大であろうとズムワルトと相殺或いは一方的に防御され打ち消される程度までエネルギーが小さくなってしまうのである。

 更にこの固有効果に一工夫加えれば相手の攻撃だけを一方的に打ち消したり跳ね返すような事も可能になる。これによって攻撃を跳ね返され続けたダリアの手足は既にボロボロであり、鋭く長い犬歯に至っては原型を留めないほどに砕け散っていた。

「は……っぁ……クっ――ぅを゛ヴぶェッ!?」

「おうおう、ここで吐血か?だらしねぇな、天才ならもっと粘れよお前。童貞云々の説教ん時と同じだ、普通逆だろ立場がよ」

「……っグ、かッ……ぎヒ、げふェッ!」

「何だよ何だよ、これじゃあ破殻化も爆生も要らんじゃねえか。こっち換算でダラダラと五年近く続いた俺らの因縁だ、こんな地味な決着でいい訳ねぇだろうが!」

 繁は余りにも身勝手な言い分でダリアがあっさり瀕死に陥ったことを悔やんだが、舌の根も乾かぬ内に『ま、いっか』という具合に開き直るや否や口吻に変化させた舌でダリアの頭蓋骨と大脳を刺し貫き、脳諸共彼の記憶を吸収し殺害した。


 かくして対立する邪悪二つの因縁には終止符が打たれ、同時に国家としての真宝も壊滅した。

次回、最終決戦後の反省会とか色々!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ