表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン5-ヤムタ編-
257/450

第二百五十七話 Kill you~ここでお前を殺したいから





さぁ、遂に最終決戦だ!

―第二百五十話より―


「久し振りだなぁ、樋野……元気そうで何よりだ」

「……言いたいことはそれだけか」


 ブランク・ディメンションの有する"貌"が一つ『一万と二千の蜘蛛を宿す創聖樹海魔境』にて対面した二人の第一声は、そんな他愛もないやりとりであった。


「おいおい、怖い顔すんなよ。そんな箔の付いた面で睨まれちゃあ、ビビって話もできゃしねえ」

「……それが怖がっている奴の態度か。どうせ内心では頭から指先まで嘲っているんだろうが」

「はぁ、ヒっデェ言い掛かりだなぁオイ。頭から指先まで嘲るなんて、そんなわけねぇだろ。嘲ってんのは頭から指先じゃねえ……細胞の一片から衣類の繊維までだ。若しくは分子でもいいがな」

「……巫山戯たことをかしおってが……やはりお前はあそこで殺しておくべきだった……」

 ダリアが力無く垂れ下がっていた右手に力を込めると、肌荒れのない手は高級毛皮製品のような美しい白金色の長毛で覆われ、指先の爪は長く延びて刃物のように鋭く変化。対称的に指そのものは短くなり、腫れ物のように肥大化して肉球のようなものを成した。

「まぁそう早まるな、落ち着けよ。まだ慌てるような字数じかんじゃねえだろ」

「私より先にそんなものを手に取っているお前がそれを言うか?」

「ン……あぁ、こりゃステッキ代わりみてーなもんだ。この辺は足場が不安定だからなぁ、下手すっとスッこけちまって大変なんだよこれが――……」

 刹那、黒い人魂のようなものが銃弾ほどの速度で繁の顔面を掠める。幸いにも彼自身には傷一つ無かったが、彼の背後にあった樹木は大きく削れており、それに巻き込まれたのか掌ほどもあるような蜘蛛がバラバラになって死んでいた。

「あぁ、エルジェベート……産卵を控えて張り切ってたのに……おいおい樋野よォ、おめー鬼かっ?このエルジェベートは今まで三回も流産(という名のカマキリモドキ寄生)で泣きを見てきた薄幸のコガネグモだぞ?それで今回こそはと産卵に向けて頑張ってたってのに、お前って奴は――「黙れッ!」――何だよ?」

「ああ畜生ッ、辻原ァ……お前って奴は……お前って奴は何故そうも私を苛立たせる!?何がステッキだ!?何がコガネグモだ!?巫山戯やがって!折角上手く行ってたのに、お前に邪魔されてから全てが台無しだ!ぇウア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ!MYGyaaaaaaAAAAAAAAAHHH!!」

 いきなり狂ったように大声で怒鳴り散らしたダリアは、立て続けに獣じみたポージングで仰け反りながら妙に甲高い―まるで風呂場で抱き抱えられた飼い猫が上げる悲鳴のような雄叫びを上げる。それと同時にダリアの右手を覆う毛皮が全身にまで広がり、左手も右手同様刃物のような鋭い爪を有する攻撃的なものとなる(無論、指が縮んで肉球化もする)。続いて脚が骨格レベルで肉食獣を思わせるようなつま先立ちの構造へ変形し(当然高級感溢れる革靴は崩壊し、爪は延長され指は肉球化)、頭骨が変形し腰か尻の辺りから尾てい骨が延長されたものであろう長毛に覆われた細長い尾が、何故か二本も生えてくる。


 行数にしてパソコン表示で6行、字数にして改行・空白を除き279字にもわたる行程を僅か二秒足らずで終わらせたダリアの姿は、差詰め直立に足歩行する猫又といった所であろうか。長く伸びた鋭い犬歯は彼の隠された野心や獣性を物語るかのようでもある。


「んー、著しいカルシウム不足だな。ガキ臭い趣味の猫だろ、もっと乳製品や魚介を摂――「辻原ァァァッ!」――……話聞けよ(´・ω・`)」

「辻原ッ、繁ゥ……まさに忌まわしき害虫よッ!遊びは此処までだ!幻妖の術によって私に宿ったこの力で、貴様を華麗に駆除してくれるッ!」

「駆除だぁ?寝言は寝て言え腐れペド。どうせそれより先に三味線な――」

 言い切るより前に、先程エルジェベートなる薄幸のコガネグモを殺した黒い人魂が再び繁の顔を掠めた――というよりは、直撃の寸前で繁が回避したというのが正しいか。

「――……あッぶネェーなぁおい、そう慌てんじゃねぇよ。バトルアリーナならすぐにでも(俺のみにとって)とびきりのを作ってやる。そんなせっかちじゃあ、ただしガキ抱くにも不自由すんぞ。しつこい野郎はモテねえたあよく言うが、交尾る時んなって順序弁えずにブッ込もうとするようなせっかち野郎も女ウケはよくねーだろ。俺みてーなトーシロ童貞カメムシ如きより、幾多のただしガキとヤって来たお前のが早漏とかギャグにもなんねーよ。つーか童貞にこんな説教さすなよ、普通立場逆だろ?だからお前はそうやって俺みてーなのに妨害喰らって何でもかんでも失っち――「黙れェィ!」――どぅおぃっ!?……っッブねーなァおい!つーか話遮って攻撃すんのにそれしか言えねーのかこのバカタレがッ!もっと語彙ごい力つけろこのペド猫ォ!」

「喧しい!屁放り虫如きが耳障りな声で囀るなッ!」

「おーおー、少しはボキャブラリーあるんじゃねぇか。その調子だぞペド猫。てめーを出迎えるのが閻魔かミノスかは知らねーが、そんだけの語彙でもありゃちったぁ減刑してくれるかもなぁ」

「騒ぐなと言っているだろうが!鬱陶しい害虫如きが幾ら調子付こうと、我々の前では壁の染みに過ぎん!」


 五体に備わる爪牙をこれ見よがしに見せつけながら、ダリアは攻撃的に身構える。


「……我ら七人の栄光ッ……"楽園"の為にも、死んで貰うぞ、辻原ァ!」

ダリアの目指す"楽園"とは!?

次回、虫VS猫!忌まわしき因縁に決着(が、ついたらいいよね~)!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ