第二百五十五話 ガマバスタード-陶酔注意
一つ解った事があるとすれば、私の尺伸ばしスキルは異常だということだ。
―第二百五十話より―
「グェゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲッ!幾ら砂塵の豹と呼ばれ世間から英雄視されていたお前と言えど、我が幻妖の力から逃れる事は出来ぬェ!人間としての無力さを悔いながら、絶望を儂らに向けて死に行くがいいェ!」
幻妖の術により巨大なヒキガエルの化け物へと姿を変えた上地華丸は、しんしんと雨の降り注ぐ草の生い茂った沼地―両生類や水鳥などの水陸両生である存在を大幅に強化する"貌"である『芳醇なる大平原』―にて自らの術で産み出した眷属(その姿はオタマジャクシ型の帽子を被り際どい身なりをしたほぼ全裸の幼女)達を引き連れ勝利を確信していた。
海洋学者を目指し勉学に励む秀才として過ごす上地華丸の本性はある意味小門と似通っているが、その性癖はよりコアでマニアックな"異種姦"=ヒトならざるもの全般との性行為と呼ぶのが相応しい。獣姦も異種姦の内ではあるのだが、獣姦があくまでヒトでない哺乳類や脊椎動物のみに限られる場合が多いのに対し、こちらは節足動物や刺胞動物、果てはロボットなど多岐に渡る。
上地はこの内特にナマコやタコ、或いは空想にあるような巨大触手を好む傾向にあり、空想だけに飽きたらず"人類の二世紀先を行く"とされる某企業の社員を裏で雇い、陵辱専用の人造生物を作らせて楽しむような事もしている。因みに幻妖の術は自雷也説話で有名な化け蝦蟇である。
「グェゲガガガガガガッ!それにしても我ながら最高の流れだェ!受け身で破片の飛来をやり過ごし魔力の流れからブランク・ディメンションの発動を予想!貌の行使顕現を奪取、即座に幻妖の術で眷属を量産、貴様の右半身とこの中途半端なチビめを我が"蝦蟇の油"で支配下に置き、貴様の変な剣をも我が舌で丸飲みにしてやったェ!どうだリューラ・フォスコドル!ぐうの音も出まいェ!」
「……」
地の文で行うべき状況説明を自慢げに行う上地に対し、戦線でただ一人孤立したリューラは沈黙を決め込んでいた。蝦蟇の油により同行した仲間二人を洗脳され(序でにバシロが洗脳されたことで右半身の自由も奪われ)、スカルバーナーまでも奪われた彼女にとってこの状況はかなり厳しい。
なればこそ、ここで表情を変えたりするような事があってはいけない。それが兵士として戦場を駆け抜けた彼女の出した結論であった。
「ゲゥン、相変わらず黙りとはつまらん奴だェ。やはり年増と巨乳はオワコンだェ。これじゃ拍子抜け――「てめえだろ」―ヌ?」
表情を変えぬままに口を開いたリューラは、感情を一切込めずに言葉を紡ぐ。
「オワコンはてめえだろ。子犬衝動買いして育ったら捨てるようなクズが、たかがヒト二人半と刀一本奪った程度で勝った気になりやがって。しかも相手はこんな女一人だろ、情けねぇ……」
「な……貴様、さては勝機を見失い自暴自棄に陥ったかェ!?」
「自暴自棄?それはてめえだろ、少人数相手にこんな大勢で襲い掛かりやがって。この砂利共の身なりもひでえの一言だしよ、おめー真面目に戦うつもりあんのか?」
「――だ、黙れ!黙れェ!貴様のような年増如きに説教をされる覚えは―「あとなぁ」
そこでふと、それまで無機質だったリューラの言葉に感情のようなものが宿る。
「これは言い忘れてた事だが……てめえが飲み込んだその刀、どんなに自己管理能力のねぇ奴に持たせてもいいような親切設計でよ、どこに居ようが呼びゃあ来るっつー優れモンなんだよ」
「な……いきなり何が言いたいェ!?」
「や、だからさ……呼びゃあ来るんだよ、持ち主である私の手元に。なぁ、そうだろ?スカルバーナー」
リューラが上地の腹にそう呼びかけるのと同時に、上地は胃袋の辺りに何やら壮絶な違和感を感じ取る。
「ま、まさかッ!?」
上地がリューラの言葉を理解していた時、既に彼の腹からはスカルバーナーの湾曲した黒光りする刃の先端部が突き出ていた。
「そう、そのまさかだ。てめえは内側から腹を裂かれて、そんで死ぬ」
「な゛ッ、に゛い゛ぃ゛!?」
「それで死なねえなら私が責任持ってぶった斬ってやっから心配すんなよ、な?」
「ッ、がァ゛ッ、ぎざま゛ァ゛、図に゛乗り゛お゛っ゛でがあ゛!グっ、眷属よ゛ォ゛、此奴を゛殺――がっぶげばぇあがひぎっ――ごぼぇばがぁっ!?」
上地の大口から盛大に血反吐と胃液と内臓片などが入り交じった吐瀉物を吐き散らされるのと同時に、薄い腹の皮をこれまた盛大に突き破って出てきたスカルバーナーが、遂にリューラの手元に握られる。しかしまだ息があるのか、眷属は死んでおらずバシロと春樹の洗脳も解かれていない。
「しぶてぇ野郎だなぁ……待ってろよ、今楽にしてやっから」
リューラの左手で水平に持ち上げられたスカルバーナーは、燃え盛る髑髏のような形をした指輪へと姿を変えた。
「カドム武器の基本技能『ミラー』で変異させた『起炎輪サレコウベ』……こいつは小さい癖にスカルバーナーの髑髏弾を更に強化したもんが撃てるっつー武器でよ、まぁ連射性能はクソだが……火力はやべぇぜ?」
水平にした左手を握り込んだリューラは燃え盛る髑髏の指輪を上地に向け、その巨体をも二口で喰らい尽くせそうな程に巨大な赤い髑髏型のエネルギー弾を放つ。
髑髏弾は瀕死の上地へ噛み付くようにして炸裂し、その脹れ上がった巨体を骨ごと跡形もなく焼き尽くす。連動するように際どい身なりをした幼女達の肉体は灰になり、バシロと春樹にかけられた洗脳も無事に解除された。
次回、議会メンバーがどんどん死ぬよ☆