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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン5-ヤムタ編-
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第二百四十九話 怒ルおぺれぇたぁ





遺跡発掘手伝い行ってた所為でかなり遅れた……

―前回より・アリーナ―


「……とまぁ、粗方自己紹介的なこたぁしてみたわけだが……」

「ッグ、ゴゥッ」

 次は何をしようかと迷う繁は、三号機の後頭部を強く踏みにじりながら辺りを見渡す。

 そして破殻化したまま硬直・絶句するデーツを見付けるや否や、まるで旅先で図らずも仲のいい同級生と再会した陽気な学生のようなノリで呼びかけた。

「お、デーツ。デーツじゃねーの。こんな所で逢うたぁ奇遇だな、一体どうした?」

「どうしたって……それを聞きたいのは寧ろこっちなんだけど。まぁ何か色々あってそこのロボット三人組に喧嘩吹っ掛けられたんだけど、逃げ回るだけのジリ貧になってたのよ。正直デッドと一緒に居ればよかったと今更後悔してる所」

「ヲイ」

「そうか。まぁさしたるロックパーツも無しにお前一人が相手しきれる人数じゃねーわな」

「ヲイ……」

「そうなのよ。で、そっちは?」

「ヲイ、貴様等……」

「はっきり言うが成果はショボい。あちこち必死で探し回ったのに、見付かったのはダセェ着ぐるみの警備兵カカシ十余人、どいつもこいつも相手になりゃしねぇ」

「貴様等、話ヲ……」

「そりゃあそうでしょうよ。あなた自分のこと散々弱い弱いって言ってるけど総合的に見るとかなり強い部類なのよ?」

「トイウカ何故無視スル!?」

「あ、そうなん?いやー自覚ねーわ、マジで自覚ねー――「「話聞ケヨ、ヲイ!」」


 自分達を無視して勝手に話を進める繁とデーツの態度に怒り狂ったオペレーター二号機と四号機は、思わず感情を剥き出しに怒鳴り散らした。


「一体ゼンタイ何様ダ貴様等!昨期カラ我々ヲ散々無視シヤガッテ!」

「ソウダソウダ!三号ヲ足蹴ニスルバカリカ、我々マデ虚仮ニスルナド言語道断ゾ!」

「あァ゛?五月蠅ェな、俺の華麗かつハマり過ぎの女装に見とれて戦闘放棄したてめーらが悪ぃんだろうが」

「え、これって女装だったの?コスプレじゃなくて?」

「いや、どう見ても女装だろ。公式オトコの娘だろ。実質バイの癖にその事実を認めたがらねー、下半身でモノ考えてるようなクソ共から尻穴狙われるようなナリだろ」

「いや狙わないでしょ。よほど飢えた物好きのゲイでも狙わないでしょ。っていうかそれで本当にそんな目に遭ったらどうするのよ?」

「そん時はまぁ、どっかの死刑囚兎よろしく力押しで血の海にして切り抜けられそうな気がする」

「気がするって何よ……まぁ貴方なら本当にやりかねないけ―「「待テイ!色々ト待テイ!」」

「……何だよ?」

「貴様等、イイ加減ナ事ヲ抜カスデナイワ!」

「ソウダソウダ!我々ハ無機物ノボディヲ得シ人工知能、貴様等有機生命体ノ姿ニ見トレルワケガナイ!」

「マシテ貴様ノ仮装ナゾ不愉快ナダケダ!アト三号ヲ放セ!何カ既ニ動イテ無イゾ!?」

 四号の言うとおり、繁に踏み付けられた三号の動きは死んだように止まっていた。

「え?あぁ、こいつ?返す?いいよ、ほい」

 作者でさえもえらく適当だと感じるような態度で三号機ら降りた繁は、その頭髪を掴んで乱雑に放り投げる。二号機と四号機はそれを必至で受け止めようとするが、投げられた三号のボディはそれより前に空中で大小17個のパーツへと分割されてしまった。


「「サ、三号ォォォォォォォ!」」

「貴様、ヨクモ三号ヲッ!」

「残念だったなぁ、トリックだよ。そいつの胴体に俺の溶解液を流し込み、空中で十七分割してやったのさ」

「溶解液……?貴様、マサカ……」

「そう、そのまさかだ。流し込んだ溶解液の一筋をそいつの中枢部まで到達させ、中身を空洞にした。てめえらがどれ程強かろうが、中身抜かれちゃガラクタだよなぁ?」

「……貴様ァ、何処マデ我々ヲ虚仮ニスレバ気ガ済ムッ!?」

「コノチッポケナ虫ケラ共メガ、我々ノ底力をヲ思イ知ラセテクレル!」

 そう言って二号と四号は武装を展開し、それを察知した繁とデーツも身構えた―――刹那のこと。

「「サァ、思イ知ルガイグバベェッ!」」


 突如現れた"途轍もない質量"によって跳ね飛ばされた二機のガイノイドが、これでもかというほど盛大に宙を舞う。二号機の華奢なボディには大きな亀裂が入り、四号機に至っては臍を起点に上下真っ二つになってしまっている。その傷口からは蛍光塗料のような色合いをした不透明な緑色の液体が流れ出ており、これが璃桜やデーツを悩ませたあらゆる性能の根幹を担うものである。

 衝撃によりそれら全てが流れ出た二機はやがて力を失い、魂が抜けるようにパッタリと動かなくなってしまった。

 一方オペレーター達を跳ね飛ばした"途轍もない質量"―もとい、肉食恐竜や鰐や甲殻類を組み合わせたような荒々しい風貌の巨大なキメラ型ロボットはというと、機能停止に至った三機の残骸を前脚で執拗に踏み付け粉砕。そのまま床面に座り込んだ。


「……どうなってんのよ、これ」

「……知らねぇよ、俺に聞くな」


 二人がどうしようかと考え押し黙る中、ふとロボットの方から聞き慣れた声が響き渡った。


《ありゃ、繁にデーツさんじゃん。どうしたの?》

「その声……もしかしなくても香織か。いやな、適当に彷徨ってたら変な幼女ロボ共とデーツが戦っててよ。景気付けに遊び心交えて加勢してたらそいつが乱入してきて敵が勝手に事故死した」

「っていうか、どうしたのってのは私達の方が聞きたいんだけど……」

《んー、どうしたのって聞かれてもなぁ……別に大したことないよ?相手探してこの『ソレンネ・パッツィーア』に乗り込んでたら成り行きでみんなと合流して、じゃあこの流れで繁とデーツさんも探そうって流れになって、偶然ここに突っ込んだら二人が居て》

「十分大したことじゃない……」

「あのロボ共を執拗に潰したのはどういう風の吹き回しだ?」

《それは璃桜さんからの指示。偶然ぶつかって吹っ飛ばしちゃったんだけど、何か並大抵の事じゃ止まらないからしつこいくらい潰しといた方がいいって》

「そうかよ……」

《まぁ何にせよ乗りなよ。流れからして残るはこの建物に閉じこめた国の上層部くらいだろうし、こういうのはみんな一緒のがいいでしょ》

「それもそうね、じゃあ乗せて貰おうかしら」


 かくして今回のツジラジメンバー全員を乗せた巨大キメラロボこと、列王の輪が形態の一つ『ソレンネ・パッツィーア』は、香織の操縦によってアテもなく走り出した。


次回、今度こそ議会と対面!

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