第二百四十五話 これはリューラ回ですか?R.はい、色々閲覧注意です:前編
調べに対し蠱毒成長中は『リューラが只のエロキャラじゃないのだという事を解って欲しかった』などと供述しており……
―前回より・暗い通路―
「ふと、思うことがある。人体で最も秀逸な部位は何かってな」
どことも解らない、薄暗く肌寒い無機質な通路に差し掛かったリューラは、ふと独り言のように言う。
「機能で言やァ、何と言っても脳だろう。だが脳って奴はデザインに若干捻りがねぇ。となると心臓が候補に挙がるが、どっちも持ち主が生きた状態で空気中に出せねーっつうのがどうにもいけ好かねぇ。となると人体で最も秀逸なデザインの部位ってのは……個人的にゃ、性器だと思うわけだ」
「ほう、そりゃあまた何故だ?性器っつったら基本醜いモンだとされがちだが」
「まぁな。そりゃ美醜の基準なんてもんは個人差があるから一概に断言はしたくねーんだが、個人的にあれほどブレねぇ美しさの自然物ってなそうそうねーだろなと確信してるわけだ。動物の性的二形って奴を顕著に表してるしな。雌雄にはそれぞれの良さがあるって奴だ」
「ふゥむ、成る程な。一丁前に生命科学なんてもんに傾倒してた身だが、その考えに至った事は無かったな」
「そりゃ人体は生命科学より医療の分野だからな、無理もねーさ。第一美しいだ醜いだなんて話は芸術家の専門よ、ノれる学者ばかりじゃあるめぇよ」
「そうかね」
「でな、興味本位で色んなモンを見る度、ふとある事に気が付いた。どんなに醜い奴だろうが、自然なもんである限り性器の美しさってのはそうそうブレやしねぇってな。それを醜いと感じちまう要因は、そいつを全体的に見ちまうからなんだよ、性器に罪はねぇ。まぁ万人受けするネタじゃねーから隠すのは作法だし、隠されてるのも隠されてるなりの風情ってのがあるがね。さらけ出してばっかじゃ風情がねぇしよ」
「ほう、モザありで萎えるような連中は邪道か」
「それも個人差なんだが、私個人としちゃ性器の魅力をわかってねぇ青二才と言わざるを得ねーかな。ともあれ性器ってもんは、敬われ愛されるべき代物なんだよ。繁殖に使わねーなら無価値とかいう奴も居るがそりゃ間違いだ。繁殖に使うだけが性器じゃねぇ、そこに存在することもまた性器の役割なんだよ。何かしらの不備があろうが、それはある意味不完全なりの美だし、そいつを修繕すんのもまた一興だからな」
「つまり家畜の去勢は悪行か?」
「んー、それもまた馬鹿な主張って奴かな。正当な理由がありゃ去勢もまた必要とは私も思う。問題は正当な理由も持ち主の意志もない上での、言わば性暴力にあたるような行為全般だ。そもそも性暴力自体吐き気を催す邪悪なのは言うまでもねーが、それが性器へのもんとなるとゲロに混じって内臓まで吐き出す悪になる。性器は繁殖の象徴で、繁殖は命そのものとも言うべき神聖な行為だ。となると性器への冒涜は……」
「命への冒涜か?」
「そうなるだろうな。私もまだまだ未熟なんで考えが纏まんねーがそこだきゃ断言できる。まぁセクシャルプレイやギャグ、格闘術として軽度の金的ぐれーはあってもいいと思うがね、度を超したのはやっぱ駄目だ。それなりの理由がありゃまだ許せようが、完全な正当化はさせねーぜ。まして金的なら何だろうが笑って済まされるなんてな論外よな――――なぁ、あんたもそう思うだろ?」
立ち止まりスカルバーナーを床面に突き立てたリューラは、バシロでない第三者に語りかけるようにそう言った。刹那、背後に何者かの気配を感じ取ったバシロが振り返ると、そこには確かに何者かが佇んでいた。体格と服装からして真宝政府の関係者であろうその小柄な女は、語りかけるリューラを嘲るように鼻で笑い、見下すような口調で答える。
「……笑止。実にくだらない、くそのような考えね」
「ほう、何故そう思う?」
「何故って、答えるまでもないでしょう?確かに女の子の性器は素晴らしいものだけど、男のそれは醜くて汚らしくて、使う使わないを問わずあるだけ無駄なものだからよ。それを美しいだなんて、あなたどうかしてるわ。精神科か脳外科に言ったらどうかしら。いい医者を紹介するわよ」
「結構、医者なら知り合いがいる。元よりどうかしてんのは自覚済みだしなぁ……」
「そう、それならいいのだけど……そもそも私からすれば、男なんてのは存在そのものが笑いの種にしかならないような、取るに足らないものなのよね」
「……」
「浮世の愚物共は恋愛だの結婚だのと小綺麗な言葉を使って男に幻想を抱いているようだけれど、全くお笑いだわ。男ってのはね、所詮女の奴隷でありATMでしかないの。金のない男なんて、それこそオモチャにしかなりゃしない」
「……」
「まして男性器に何の意味があるっていうの?あんな汚くて臭いもの、潰されて当然じゃない。まして敬い愛す価値なんてありゃしない。金的なんてギャグ以外の何だって言うの?そもそも男なんてのは女に飼われてなんぼの下等生――っ!?」
声高々に語る女の顔面を、スカルバーナーの髑髏型エネルギー弾が掠める。
「っ、何すんのよこの素人処女!自分の間違いを指摘されたからってキレて暴力振るとか最低ね!」
「安心しろ、元よりクズの私におめーとまともに話すつもりなんぞねえからな」
「……言ってくれるじゃない……いいわ、だったらこの私―官邸特選隊隊長にして、影の真宝最強と名高きビレッド・ペーションが直々に教育してあげる!真の女のあるべき姿をね!」
「ヘ……言うじゃねぇか。支度だ黒物体、あのチビを適当に痛めつけて黙らすぞ」
「よっしゃ、任せ――って、痛めつけて黙らすだぁ?おいおい、正気かよ。流れ的にゃぶっ殺すのが先だろ?」
「いや、痛めつけて黙らすのがいいんだよ。ああいうのは、普通に殺すんじゃつまんねーからな」
次回、おぞましきビレッド・ペーションの吐き気を催す生い立ちが明らかに!