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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン5-ヤムタ編-
233/450

第二百三十三話 砲撃の魚人(&鳥人)





決戦間近!

―前回より―


「感謝しろよ貴様等。チャッキ・ニョッキーの力による器物への転生とは、それ即ち脆弱な肉体からの解放を意味する。老いも病も苦しみも全て捨て去り我が僕となること、それこそ至上の誉れにして救さぶぎゅげべっ!?」


 如何にも誇らしげな(そしてそのまま放置しておけば無駄に長くなりそうな)ガティスの講釈は、突如顔面に衝突した爆発物によって強制的に中断された。爆発のエネルギーは凄まじく、ヒト一人の頭部さえ丸ごと木っ端微塵に吹き飛ばすことも容易なように思える程であった――が、PSの防御システムにより守られた彼女には傷の一つさえついていない。ただ、衝撃だけは伝わったようであるが。


「ッ、が……き、さまァっ!平民の分際で女の顔を狙撃する奴があるかぁっ!?」

「スィませェん、顔面付近に季節外れの薮蚊みたいのが見えたものですからつい」

 等というデトラの手元にあったのは、赤い出目金(デメキン)のような形状をした中型のクロスボウ――小さい槍のような弾丸で対象物を爆破するカドム武器『朱鱗(あけうろこ)の番兵』である。

「何が"つい"だ何がっ!折角私が貴様等を国民として迎え入れてやろうと言うのに、その好意を無碍(むげ)にするつもりか!?」

「いやぁ、そーゆーつもりは……ないよーな、あるよーな」

「まぁいいじゃねースか、ノーダメなんだし」

「そうですよぉ~。終わりよければすべてよし、結果オーライって奴ですよ」

 そろそろ上辺だけの敬意で接するのが面倒になってきた三人の態度と口調は、まるで事前に示し合わせていたかのように(しかしその実、図らずも偶然に)徐々にいい加減になり始めていた。

「何だその答えはっ!?というか貴様ら、それが女帝たる私に対する態dぶげごぼっ!」

 そして元々プライドの塊で気の強いガティスのこと、そんな態度で接せられたのでは当然頭に来るのではあるが、その怒号は再び放たれた槍弾丸によって掻き消された。先程より気が緩んでいた為であろうか、爆発の衝撃で大きく仰け反ってしまった。常人ならば大きく吹き飛んでもおかしくない衝撃だが、そこは腐っても嘗て(方向性の間違い方は、例えばテストの回答欄に書くべき回答が一段ずつズレてしまっていたようなものだが)精神論を周囲に強いてきた悪徳教師にして(すぐさま精神に狂いが生じ妄想にふけるようになったとはいえ)凡そヒトが生きていくには余りにも過酷すぎる環境でしぶとく生き残っていただけあり、バランスを崩す事もなく姿勢を整える。

「……っク、っは、きサまラぁ、どこまでこの私を虚仮(コケ)にすれば気が済ぶグふゥっ!」

 腹に円筒形の小型ミサイル(或いは対戦車擲弾発射機(ロケットランチャー)の弾頭)らしきものを撃ち込まれたガティスの身体が爆炎と共に盛大に吹き飛ぶ(しかし相変わらず傷らしきものはない)。

「どこまでって、そりゃあ……(インフィニティ)?」

 弾丸を撃った張本人であるデトラは、どこかわざとらしく間の抜けた態度でそう口にした。地面に屈み込む彼女が肩に担ぎ上げているのは学生鞄ほどのサイズをした機械的な蘭鋳(ランチュウ)型の大砲であった。特徴的なボディが左右に割れるようにして内部から展開された銃身本体は長さ35cm、口径40mm程もある。これぞ『朱鱗の番兵』の隠しギミックによって成し得る形態の一つ『聖母朱鱗』である。

「まるでわけがわから――ぶぎゃばぁあっ!」

 起き上がりながら文句を言おうとするガティスの頭へ四方から魚型飛行小型メカらしきもの四機(それぞれハタタテハゼ型、ゴンズイ型、ラブカ型、ギンザメ型)が高速で飛来し激突する。当然それらはPSの防御システムにより弾き飛ばされるのだが、四機はそれでも尚推進力を失わず攻撃(突進の他、噛み付きや光線・弾丸による狙撃)の手を緩めない。

「インフィニティっつったら無限、つまり"どこまでも"って意味に決まってんだろうが。考えもせずにわかんねーだなんだと騒いでんじゃねーよ精神障害者(メンヘラ)が」

「ぐべぶ、きさばっ、この゛わたしぐぁべっ、精神疾患患者(メンヘラ)だ―――あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛っどぅぶぇっ!」

 四方八方からガティスを襲う四機の魚型飛行小型メカは、レノーギの持つ大型無反動砲『カノン・ザ・ラティマー』の隠しギミックによって放たれたものである。動作や攻撃は勿論デザインさえも持ち主であるレノーギの意のままであるこれらは流体中を高速で飛翔・潜行し、自動小銃の弾丸にも怯まない頑丈っぷりを誇る―のだが、やはりPSの防御システムを打ち破るには至っていなかった。


「……クソ、まるで死なねぇな。やっぱ登場初期に各国がこぞって欲しがっただきゃあるってことか……」

「ですねー。どうします?適当に魔術でロックかけて逃げますか?」

「えー、それって何か味気なくない?折角なんだし、もっと派手にシメようよー」

「派手に、なぁ……おっしゃ。オぅシャラよ、お前今からブラD(ブランク・ディメンション)発動したらどんぐれぇかかる?」

「ぶ、ブランク・ディメンションですか?……んー、ちょっと難しいですね。REA-Qは特に土地依存の傾向が強く準備にも手間が掛かりますし、早くて半日――

―「誰がREA-Q張れっつったよ」

「えっ?じゃあまさかデトラさん軸に行くんですか?あっちはそもそも空が見えないと―

―「それでもねぇよ。お前の十八番だ、大得意の"アレ"をキメてやんな」

「へ?アレって……まさか、"アレ"ですか?」

「そうだ、"アレ"だ。お前大得意だったろ"アレ"」

「おホっ、良いわね。シャラの"アレ"が見られるなんて。私もサポートしちゃおうかしら」

「足止めは任しとけ。とりあえずさっさとケリ付けんぞ」

「わかりました。やってみます」

 決意を固めたシャラは両手の平を合わせて目を閉じ祈りの姿勢を取る。彼(或いは彼女)が大規模な魔術を行使する際の構えである――が、その発動は余りにも早いものだった。


「っぐ、がッ、な、めべッ、おって、からにィィィ――――ッ!?」

 砲撃と魚型メカの攻撃によって足止めを喰らっていたガティスは、突如豹変した領土の有様を見て絶句した。レノーギとデトラの攻撃が止まったことなど、今の彼女にとってはどうでも良いことである。


「な……なんだ、これは……我が神聖アスタリク帝国が……何故、こんなッ……!」

次回、地下空間に起こった異変とは!?

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