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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン5-ヤムタ編-
212/450

第二百十二話 ゼイアーザフロムアナザーワールド:飛姫種編-結/上




名前のコロコロ変わる計画の全貌とは?

―前回より―


「つまりこのゴチャゴチャしたアイテムを身に付けて変身する、と」

「何だか日曜日の特撮みたいなのですー」

「みたいっちゅうか、もうまんまやがな……」


 シャアリンの要望から始まった『唱道者(+他四名)前線出陣作戦』の準備は、遂に最終段階の中盤辺りに到達していた。七名には香織が用意した特撮ヒーローが用いるような変身ツールに似た小道具が手渡されており、これらが作戦の要となる。

 小道具のデザインはそれぞれベルトや腕輪、通信機や武器など多種多様であり、何れも持ち主達の手に馴染むよう設計・デザインされている。


「さて、と……これであとは出陣するだけな訳だけど、他に何か質問は?」

「あー、じゃあ一つ」

 香織の問いかけに応じるように手を上げたのは、黒いスーツに身を包んだモンゴロイドの青年であった。何時の時代でも等しく美形と認められるであろう整った顔立ちをしている彼の名は多澤等(タザワヒトシ)。さる都市に暮らすうだつの上がらない良心的な中堅ホストである。

「はい、多澤さん。何です?」

「すみません、何か皆さん出陣を楽しみにしてる中で悪いんですけど……清水さん、何で俺呼んだんでしたっけ?さっきの話が確かなら、俺居なくてもこの作戦上手く行きますよね?」

「何言ってるんですか多澤さん、このシステムの運用にはあなたの力が必要なんです。あなたの持つ『キキミミ』の力がね」


―解説―


 この多澤等という男は『恐竜ホスト~Dream of Jurassic~』という作品にて主人公を務める男である。

 先程も述べたように普段の彼は、実家を離れさる都市に暮らすホストである――が、才知に溢れた美形にして人格者である彼の業績はどういう訳か絶望的である。そしてその最たる原因こそ、彼に備わった異能『キキミミ』である。

 夢と希望に溢れたその異能を少々詩的に言い表すならば『ジョン・ドリトルの継承』だろうか。もっとストレートに言ってしまえば『動物との対話』の一言に尽きる。即ちこの『キキミミ』を持つ者は、凡そ現在の地球上に存在しうる(また、嘗て過去の地球上に存在し得た)ありとあらゆる動物種との対話が可能となるのである。『キキミミ』の持ち主達は定期的に異界『ネオアース』に集い、そこで種族の垣根を越えた生活を謳歌するのである(等は此方でもホストとして活動中であり、地球とはうって変わって高い支持率を得ている。理由は後述)。

 そして地球で等が不人気である最大の原因―即ち『キキミミ』の弊害こそ『繁殖効率の低下』である。キキミミによってあらゆる生物との対話・同調が可能な彼らは既に生命としての理を逸した存在と見なされていたりでもするのか、兎も角同種との色恋沙汰がまるで上手く行かないのである。


―解説終了―


 今回呼び出されたのは等を初めとするホストクラブ『ジュラシック』の授業院・関係者達であり、この内等以外の七名は既に香織の拵えた『システム』によってその存在をデータ化され、アルティノ達に手渡された小道具に姿を変えていた。


「でもほら、清水さんって魔術師じゃないですか。キキミミくらい魔術でどうにでもなるでしょ?」

「いやでも完全再現って訳にはいかないですよ、やっぱりここは本職の方に任せないと」

「本職って何ですか。ヤクザみたいに言うの止めて下さいよ」

「大丈夫ですって、私達に協力してる時点でもう半ば裏社会の人間みたいなものですし」

「フォローになってませんよそれ……あとあそこの子達なんか落ち込んでますけど良いんですか?」

 等が指す方ではアルティノとラピカが凄まじく落胆していた。

「あぁ、大丈夫でしょう。残りの五人がどうにかフォローするでしょうし、ここは彼らの自主性に任せる方向で」

「相変わらず変なところで妙にいい加減ですね貴女は。というか清水さん、俺がここで彼らや先輩達のフォローをするのはわかりました。そこは腹括ります」

「ありがとうございます。それで、何か?」

「はい。俺がこの異空間から皆さんを補助するのは良いとして、貴女はこれから何を?」

「何をって、決まってるじゃないですか」

「と、言うと?」

「前線で戦います。話的にそろそろ列王の各フォーム紹介しなきゃですし、これから先何が来るのか解りませんからね」

「……そうですか(相変わらず読めないなこの人……)」

 何故こうも呼吸をするようにメタ発言が出来るのか等にはまるで理解出来なかったし、理解する気にもならなかった。

「あぁ、それと多澤さん」

「何です?」

「これ、いざという時のために持っといてください」

 そう言って香織が等に手渡したのは、片手に収まるほどの小ぶりなスイッチ二つであった。それぞれ赤と青の透明な樹脂で形作られており、それこそヒーローの変身ツールを思わせる造型である。

「これは?」

「非常用の切り札みたいなものです。赤い方は恐るべき敵が出たときに、青い方は自軍にトラブルが起こった時に押して下さい」

「随分とアバウトなタイミングですね。何か逃しそうで怖いんですが」

「大丈夫ですよ。念のため、押すべき時が来たら内蔵された電球が光るようになってますから」

 そう言い残した香織は、意気揚々と出陣していく七人へ続く形で異空間を後にした。

 一人残された等は暫くの間呆然と立ち尽くしていたが、手渡されたスイッチを軽く握り締め、香織の指示通りに作業を開始した。

次回、変身ツールを更生する『ジュラシック』の構成員達が登場!

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