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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン5-ヤムタ編-
207/450

第二百七話 ゼイアーザフロムアナザーワールド:共闘編





こじろー連合、本格参戦!(解説フライングしたけど気にしないで……字数がやばかったから……)

―前回より―


「お前な、んのやったらもっと早ぅでけへんのかい」


 勝ち誇ったような面構えで兵士の死体を見下ろすファビリアに遠くからそう言うのは、桃色のショートヘアを棚引かせる小柄な少女・亜衣莉あいり

 普段は15歳という年齢にそぐわない体格に劣等感を感じている彼女であったが、今回は無数のロリコンを相手取っての戦いでそれが寧ろアドバンテージに繋がっているためか(半ば諦めからの開き直りに近いものではあったが)必殺の針と棍棒、手投げ爆弾を駆使して意気揚々と積極的に兵士達を討伐していく。


「っせーなァ、いいじゃねーかよぅ。どうせ俺ァおこぼれ狙いのコバンザメ、どう殺そうが俺の勝手だろうがよォ!」

「そのコバンザメもちゃんと仕事してくんなきゃ後々厄介な事になるって言いたいのよ……ねぇ、亜衣莉?」


 苛立つファビリアを諭しながら亜衣莉の背後へ卑猥な手を伸ばすのは、死人のような目と髪色に薄暗い雰囲気をした怪しげなアールヴ(エルフ)の女・キメラ。詳しくは解説に譲るがファビリアや潤奈、亜衣莉等と同じ次元より召喚された彼女は理学の達人にして常軌を逸した力を有する改造人間である(詳しくは解説にて)。


「そーやそーや。キメラの言う通りやけどー触んなボケッ!」

「あハぁン!」


 不穏な気配に感付いた亜衣莉の裏拳がキメラの顔面に炸裂。倒れ込む振りをして抱き付こうとしたキメラの両腕を軽く回避した亜衣莉は、立て続けに鎧の隙間を縫って無駄のない動きで兵士達を仕留めていく。


―同時刻―


「な、なんだこれはぁぁぁ!」

「ぎゃあああ!かねたがよろいごとまっぷたつにぃぃぃ!」

「そんなばかな!ちたんごうきんせいのれいう゛ん48がっ!」

「あははははははっ!甘い、甘いわあんた等ッ!整形ついでに二億積んで出直して来なさいッ!」


 等といった具合に背後で二振りの脇差しを振るうのは、長身痩躯のモデル体型に金髪といった風体の女剣士・チェリス。性格は守銭奴で面食いとろくなものではないが、化け物専門の狩人を生業とするだけに少なくともその戦闘能力だけは確かであり、亜衣莉やキメラ、ファビリアでは対処しきれない大型の機動兵器を相手に軽快な身のこなしで華麗に動き回る。


―またまた同時刻―


「はっ、どうりょうながらばかなやつらだ!あんなきょにゅうなぞほうっておけばいいものを!!『ぜんもんのやろう、こうもんのでかいちち』とはよくぞいったものよ!」

「まったくだ!おおかたあのぴんくがみめあてでいったのだろうが、そばにきょにゅうがふたりもいるじてんでせっきんはもはやじさつこうい!やはりしかんがっこうそつなどそのていど!」

「そのてんわれらのようなしがんへいはけんじつだからな、あんなむぼうなまねはしない!」


 六本脚の小型機動兵器・ヘキサスケリオンに乗り込んだ兵士達は、そんな他愛もない会話をしながら平原を慎重に進んでいた。そして志願兵らしい彼らの会話が盛り上がり始めた、その時。


『こちらばたふらい1!びーとる1、2、3、おうとうねがうっ!』

 エンジン付きハンググライダーで上空を旋回していた偵察兵から無線通信が入る。

「こちらびーとる2、どうしたばたふらい1?」

『おまえたちのげんざいいちからひがしへ100めーとるいった先にしょうじょをはっけんしたっ。しゅういにはきょにゅうもおとこもばばあもおらず、ひとりきりだ!』

「なんだと!?」

「ほんとうか!?でかしたぞばたふらい1!」

「よし、かまいたち―じゃなかった、おまえたち!そいつをつかまえてぎかいへけんじょうするぞ!」

「「おうっ!」」


 かくして三機のヘキサスケリオンは偵察兵バタフライ1による指示のもと東へ向かった。


―数分後―


『そのあたりにいるぞ。あおみがかったしろいかみのけをこしまでのばしたやつだ』

「おぉ、あれかっ」

「たしかにじょうだまだ。ぎかいにけんじょうひんとしてささげればかなりしゅっせできようぞ」

「よし、いつものふぉーめーしょんにならぶぞ。なるべくきずつけないよう、さんほうこうからいっきにゆくぞ!

ばたふらい1、てはじめにいちをほそくしにげみちをふさげ!」

『りょうかいした!いますいっちを―ぬわぁっ!?』

「どうしたばたふらい1!なにがあったっ!?」

『からだがうごかんっ!』

「なんだとっ!?」

『ゆびさきひとつさえも、まるで、かなしばりのよ―うわあああああああああああああ!』

「ばたふらい1?ばたふらい1!?いったいなにがあった!?おい、おうとうしろっ!」

「……くそっ、ばたふらい1がやられたか」

「だがまだだ、まだおわりはせぬ!ここでひきさがればいっしょうのはじとなる……ゆくぞおまえたちっ!あのようじょをほかくするのだぁぁぁぁ!」

「「うぉおおおおぁあああああ!」」


 三機のヘキサスケリオンは素早く分散し、三方向から白髪の少女を捕らえようとする―――――が、こういった行動に出た真宝軍がどうなるのか、読者諸君もよくご存じのことと思う。

 三方向から迫るヘキサスケリオンが同時に少女へ近付いた―刹那。


「うおぁあああああ!?」

「っぎゃああああああ!」

「な、なんだぁあああああ!?」


 高速で移動していた筈の機動兵器が、巨大な黒い柱状の何かによって空中へ持ち上げられた。

 それは地面から伸びた樹木が如し漆黒の脊椎と頸椎であり、その先端部に備わった巨大な(そして、間違いなく霊長種のモノであろう)頭蓋骨―もとい、髑髏であった。

 その色は『闇そのもののよう』とでも言うべきか。兎も角禍々しいまでに黒い髑髏は、機動兵器ヘキサスケリオンの脚を口に(くわ)えている。


 中に乗っていた兵士達はいずれも予想外の事態に混乱し錯乱状態に陥っていた。そんな彼らの状況を知ってか知らずか、頭蓋骨達は一斉にヘキサスケリオンを瞬く間に噛み砕き破片を食い尽くすと、白髪少女の影へと潜っていった。


 そして、その直後。


「んー……駄目だねぇ、やはり思うように行かない。無骨すぎていかん」


 等と言いながら少女こと魔術師セライアの影から這い出てきたのは、整った顔立ちに深い紫色のセミロングが印象的な長身痩躯の男。名をラ・エスペーロという彼は、正体は暗闇と影を支配する高位の魔人である。

 美と白という色を何より愛するこの魔人はセライアの白く美しい髪を気に入り、事故死した彼女を蘇生し世話係として雇い入れた。また、自分は全てに於いて他の何より美しいと信じ疑わない程に自惚れの強い彼は戦闘に於いても美を追求する癖があり、先ほどの回りくどい殺害方法も『如何に美しく相手を殲滅できるか』という課題の元に考案されたのである。

「そうでしょうか?私はエスペーロ様が行えばどんなことでも美しくなると思うのですが……」

 自身の恩人であるエスペーロを心の中から敬い愛するセライアはそう言ってフォローを入れるが、美に関してストイックな彼は甘えを拒み言う。

「ありがとう、セライア。美しく忠実で優秀―まさに理想的な臣下たる君にそう言われるということは、それだけで十分に幸せなことだ。だがこのラ・エスペーロ、己の美は妥協せず徹底して突き進む主義でね。やるからには完璧でなければならないと思っている……」

「そう、ですか……申し訳ございません……」

「そう俯くものではないよ、セライア。美しい者は笑顔でこそ輝―

―「キザったらしく吐かしてんじゃねぇよ、このナルシストが」


 等という具合で二人のロマンス的な流れを崩しにかかるのは白髪細身にラフななりをした青年・クルトアイズ。

 ぶっきらぼうで荒いが何だかんだで仲間思いな彼は、身体能力こそ平均的だが空間操作やワイヤー生成といった異能を持つ(先程エスペーロの指示でバタフライ1を始末したのも彼である)。そんな彼にはもう一つ、状況次第で性能が一変する異能を持ち合わせているのだが――それについてはまた後程。


「相変わらず無粋な奴だな君は。ロマンというものがわからないのか?」

「わかんねーよ。つーかイチャついてねぇでさっさとこっち来い、潤奈と合流すっぞ」

「あれ、場所が解ったのですか?」

「あぁ、馬鹿蛇から連絡があってな。潤奈と合流したからさっさと来いだとよ。

しかしあのヒレ耳、何だって俺に連絡寄越したんだか。異空間潜ってっから電波届きにきーっつうのに」

「多分、馬鹿なんだろう」

「ですね」


 散々な言われようのファビリアであった。



次回、潤奈と合流したファビリア達に襲い掛かる脅威とは!?

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