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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン5-ヤムタ編-
201/450

第二百一話 ゼイアーザフロムアナザーワールド:激突編-2




ロリコンへの最大のメタは何か知っているか?

―前回より―


「うぉおおおおおおおおおお!」

「しにさらせぇぇぇぇぇぇぇ!」

「どちくしょうがあああああ!」


 確かに真宝軍の兵士達は香織の召喚した猛者達に圧倒されていたかもしれない。しかしだからといって皆が皆その圧倒的な力の前に逃げ出したわけではなく、寧ろ勇敢な命知らずの方が多数派でさえあった。

 彼らをそうまで奮い立たせていたのは、国の至宝である幼女―それも、実質的に国家の頂点へ君臨するダリアの侍女―を惨殺された事に対する怒りに他ならなかったが、それと同時にある者達は、別の要因でも志気を高めていた。

 彼らの眼前に、一人の幼女が居たのである。身長約1.3~1.4m程度、3サイズの平均値60というまごう事なき幼児体型を、白黒青の三色を起点とした西欧的ファッションが飾り立てる。

 胸に抱かれた奇妙な兎とシルバーグレーのツインテールは幼女の無邪気さを引き立てており、背負われた巨大な(というのも、その全長は幼女の身長にも匹敵する)斧と分銅のついたサイスも今の兵士達にとっては『アンバランスなギャップ』程度の認識でしかない。

 それどころか、


「(あのこをつれかえってえづけすれば、きっとなついて『おにいちゃん』なんてよんでくれるかもしれないぞ……ふぁいとだ、おれっ!)」


 などと下心丸出しな上にかなり馬鹿げた事を考えている者まで居る始末である。

 性欲が刺激された結果尋常でないパワーを発揮するに至った兵士達は、微動だにせず目の前に佇む幼女目掛けて一目散に向かっていく。もっと用心しろと言いたくなるが、彼らの脳内では 幼女=国宝=無害 という馬鹿馬鹿しい等式が確立されている為用心などする筈もなかった。


 そして、間抜けな着ぐるみなど着込んだ大の男数人が(武装しているとはいえ)無抵抗の幼女を取り囲もうとした――次の瞬間。


 兵士達の立っていた地面に、極めて局所的な地割れが巻き起こった。


「うわぁあああああ!」

「ぎゃああああああ!」

「な、なんだぁあああ!?」

「き、きゅうにじわれがあっ!」

「たっ、たすけてくれぇぇぇ!」


 物理法則を逸した範囲で巻き起こった地割れは、幼女の周囲へ近寄ってきた兵士達を次々と飲み込んでいった。

 それでも諦めきれない兵士達は地割れを飛び越えようとするが、どんなに素早く高く飛ぼうとも、これまた局所的な突風や落雷といった"天災"に行く手を阻まれ撃墜されていく。

 そしてそれら不可解な"天災"は僅か二分程で消え失せてしまった(地割れが起こった地面は塞がり、落ちていった兵士達は文字通り"地面"と化した模様)。


 生き残った兵士達は最初、何が起こったのかまるで理解出来ずただただ立ち尽くしていたが、流石に怪奇現象に恐れを成したのか、殆どの兵士が逃走を試みる。

 しかしそんな中、例外的に凄まじく勇敢な勇敢な(そして、幼女への執着を諦めきれない)兵士の一人が、自棄を起こして着ぐるみを脱ぎ捨て(驚くことに中は普通の軍服である)ナイフを振り翳し幼女に襲い掛かろうとした。力尽くでも幼女を私物化したいらしい。


「きぐるみなんてひつようねぇ!へへへぁ、めいれいなんざくそくらえだっ!

ひひひっ、じゅうもひつようねえっ!くふはぁ、だれがてめーなんぞっ、てめーなんぞこわかねえぜっ!

ぃやろう、ぶっころしてやらああああああああああ!」


 白犀(シロサイ)系禽獣種の巨漢兵士が俯いたまま微動だにしない幼女に飛び掛かろうとした、刹那。

 分厚い外皮で覆われたその巨体が巨大なサイスによって切り裂かれ、角ごと真っ二つに分断された。


 巨体から溢れ出た鮮血は幼女の身体に降り注ぐが、しかしそれでも動じぬ幼女は血まみれの鎌を背負う。

 そしてしゃがみ込むと、腕に抱いた兎を地に放して静かに告げる。


「行きな、ロップ」

「はいッス、ハーマ様」


 地に放たれた黒兎は額の角を振るい、背の翼を広げ――豹変した。


「ン、ふゥ……感度、良好ッ……派手にイかせて貰うッス!」


 その姿を一言で言い表すならば、世に言う"擬人化"とでも言えば良いのでであろうか。

 黒いショーヘアに白い兎耳、加えて髪と同色のレオタードやブーツというバニーガール風の身なりをした彼女の額には一角獣のような角が生え、背か腰の辺りには一対のライチョウが如し翼まで備わっている。その体型もまた扇情的な服装に見合ったものであり、服装も相俟って真宝の市内を出歩けば即時逮捕。裁判の進行度合いにもよるが高い確率で極刑に処される事は想像に難くない。

 何処か濁っていて焦点の合っていないような瞳は血のように赤く、荒い息遣いも相俟ってとても正常には見えそうにない。


 彼女の名はロップ。銀髪の幼女―もとい、魔術師ハーマことハーマイオニー・グレンシャールに付き従う使い魔(ファミリア)有翼兎(スクヴェイダー)である。

 『ライチョウの羽根を持つ兎』などと表現される魔獣スクヴェイダーの中でも特異な部類に入る彼女は魔術師ハーマの手で召喚された忠実な部下であり、仕事によって二通りの姿を使い分けることができる。

 また兎でこそあるものの魔獣だからか肉食寄りの雑食性であり、時にはヒトを襲って喰い殺すことさえあるという(同じくヒトを喰らうレティキラが丸飲みにする一方、彼女は直接相手の肉を貪るのだと思われる。どちらも男性を好むという点は同じだが)。また兎故にその脚力は凄まじく、一説によればカンガルーの雄成獣と同等か、或いはそれ以上ともされている。

 しかし彼女を語る上でその象徴とも言える特徴があるとすれば、それは間違いなく『筆舌に尽くし難いレベルの性欲』であろう。

 元々兎という動物は月や山に関する神聖な善の存在として崇められる一方、繁殖期が長く発情期はやたらと気性が荒れる事から性欲エロスの招致としても有名である。ロップの性欲はそれが拗れに拗れて極限まで増幅されたようなものであり、その常軌を逸した有様はしばしば『年中発情期』とも形容される。

 主の命を受けて解き放たれた兎は、恐怖の余り逃げ惑う兵士達をおぞましい目つきで追い回す。その様子はある意味で鬼ごっこか何かのようであったが、それを遊びと考えている参加者が鬼役のロップだけであることは言うまでもない。一般的な感性からすれば『美しい』彼女の容姿も、ロリコンが極限まで至った兵士達にとっては嫌悪や恐怖の対象でしかない。

 仮に『捕まれば全裸に剥かれ散々陵辱された末に生きたまま喰い殺される』という現実を知ってしまえば、その場で発狂して廃人と化す者さえ出てくることだろう。それ程にロップという魔獣は、真宝の兵士達にとって恐ろしい存在なのである。


「ご愁傷様、精々逃げ回ってね~っと」


 一方、そんなロップの主・ハーマはというと、背後から迫ってきた兵士を再びサイス―厳密に言えば、反対側に備わった斧状の刃―で斬り殺しながら、状況を嘲るような視線で見守っていた。

 ハーマイオニー(ヘルミオネー)・グレンシャール。通称をハーマ。死後夢魔(サックブス)となった英国の魔術師ユーメリア・グレンシャールの一人娘であり、母親の死を目の当たりにした事で強大な魔力を授かったという、言わば『急拵(きゅうごしら)えの魔術師』である。

 しかしその魔術の腕前は凄まじく、世に言う天災・天変地異の類(先程見せた突風・落雷・地割れの他、津波や火砕流など)を思いのままに引き起こし、その他異次元より化け物を呼び込むなどの高度な技術も有しているとされる。その性質は本来年相応に無邪気で純真なものであるが、その一方で冷酷かつ残忍でもあり、母を奪った世界への復讐を企んでいるという。


 因みに口癖は


「はまー☆」


 という愛らしいものなのだが、これの所為で名前を『ハマー』と間違えられやすい(少なくとも作者は度々間違えた)。曰くこれは『元気の呪文』だそうだが、九割方鳴き声同然に扱われていたり、ハーマ本人の口から『マンネリ化してきた』との言葉が出たりと、正直その意味合いは薄れつつあるような気がしてならない。

次回、ゲスト三名登場(予定)の暴虐編に突入!飽きずに読んでよねッ!

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