第百九十七話 ゼイアーザフロムアナザーワールド:導入編
※ちゅういがき:このかいは、しゃべっているのがぜんばおのしたっぱであるかんけいじょう、でてくるせりふがすべてひらながであり、たいへんよみづらくなっております。ごちゅういください。
―前回より・ヤムタ北方は映美平原―
映美平原。ヤムタの北方に広がるこの大地は痩せた土壌と気温の低さや昼夜の温度差故か多くの生物にとって過酷な環境であり、棲息する生物はほぼ小型のものに限られるといってよい。
例えばまばらに生えた背の低い草や、時折巣穴から顔を出す小さなトビネズミや、我が物顔で地面を疾走する甲虫などがそれにあたる。
「はあはあ、いったいなんだってこんなところに。まるでわけがわからんぞ」
「ええい、ぼやくなよきみ。ひのほうむだいじんとりぇんしゅあんさまからのめいれいだろうが」
「それはそうだがな、しかしなんのためにこんななかをすすまねばならんのだ。とうじしゃならせめてりゆうくらいしってもかまわんだろう」
上記のように大変読み辛いオール平仮名の台詞で対話するのは、黄緑色の身体に黄色の背鰭(更に腹部はカラフルな縞模様)という肉食恐竜型怪獣の着ぐるみを着込んだ真宝軍の歩兵達である。
陸空(真宝は内陸国のため海軍は存在しない)を問わず無差別に集められた彼らは現在、可愛らしい着ぐるみに不釣り合いなまでに武骨な機銃を背負った状態で白昼の映美平原を歩かされていた。隊列の中には戦車やトラックを運転している者などもおり、総じて極めてシュールと言わざるを得なかった。
「ぜんたぁぁぁい、とまれっ!」
どれほど歩かされたであろうか、先頭を歩いていた指揮官(着ぐるみのデザインはピンク色の有翼ドラゴン)の一声で隊列は一斉に立ち止まった。
幾ら気温の低くなる季節とはいえ快晴の下―それも、遮蔽物らしきもののない平原を―分厚い着ぐるみを着た上に重い機関銃まで背負って歩いていたにもかかわらず、歩兵達は疲れる様子を見せない。
着ぐるみに設けられた覗き穴から隊列を一瞥した指揮官は、再び大声で叫ぶ。
「ほこりたかきぜんばおぐんへいし・しかん・しょうかんしょくん!ほんじつあつまってもらったのはほかでもなぁい!
われらがぜんばおのいだいなるほうむだいじん・ひのだりあさまじきじきのごめいれいにより、このさきにひそむぎゃくぞくどもへのそうとうさくせんをとりおこなうためであるっ!
きくところによるとそのぎゃくぞくとやら、かつてだりあさまのすうこうなるけいかくをじゃまだてしたあげくはめつさせたばかりか、わがくにぜんばおのしほうたるしょうじょを―それも、よりによってだりあさまのじじゅうであるしょうじょをゆうかいしさんざんにはずかしめたあげく、さかりのついたけだものをけしかけひあぶりにしてあやめたという!
さらにはそれであきたらず、あろうことかそのようすをおさめたえいぞうを、しょうじょのしたいとともにだりあさまのもとへ、しゅくがかいのおくりものをよそおいおくりつけたというのだ!」
直後、脚色にまみれた司令官の言葉を耳にした兵士達が一斉に騒ぎ出す。司令官はそれを鶴の一声で一括し、話を進める。
「ええい、おちつけ!おちつかぬかっ!しょくんがいかりくるうのはもっともだ、ほんかんとていかりしんとうだ!だがだまれ、そしておちつけ!
あんずることはない!ぎゃくぞくどもはここより1きろめーとるさきにあるいわやまへせんぷくしているというのだからな!あとはせめおとすだけでいいというわけだ!」
司令官の言葉を真に受けた兵士達は、可愛らしい着ぐるみに似合わない野太い声で鬨の声を上げた。どうやら軍隊の志気は無駄に高まっているらしい。
「さあしょくん、ゆこうではないか!われらのいかりとちからとを、ぎゃくぞくどもにとくとおもいしらせてやるのだぁっ!」
『『『『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!』』』』
かくして歩兵達は各々戦車やトラック、バイクやヘリコプターなどに乗り込み突撃を開始した。
怒りと興奮で志気の高まった真宝軍の勢いは凄まじく、広大な平原を嵐のように駆け抜けていく。
そしてしばらく突き進んだ辺りで、依然先頭を大型バイクで進む司令官の無線に連絡が入った。
『こちら2ごうへり!しれい、おうとうねがいます!』
「どうしたっ?」
『はっ!300めーとるさきにひとかげはっけん!』
「なんだとっ!?かいせきけっかは!?」
『はいっ!でーたにありませんが、かみはながくあかいろで、しんちょうやひょうめんせき、すいていたいせきからしてせいじんであることはまちがいないかと!』
「そうか!よし、やれっ!」
『……やれ、とは?』
「ばかもの、わからんか!?こうげきだ!おそらくそいつがせんぷくちゅうのぎゃくぞくにちがいない!」
『は、はい!りょうかいしましたっ!』
ヘリコプターの通信兵に指示を出した司令官は、立て続けに全隊向けに無線で攻撃命令を下した。
「2ごうへりがむこうにぎゃくぞくをはっけんしたっ!ぜんたいこうげきよぉぉぉぉい!」
指示を受けた兵士達はその場に留まり、各々砲撃の構えを取る。
「うてぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
その声を合図に無数の無反動砲や戦車砲等と言った重火器類が一斉に火を噴き、魔術部隊の手元から火炎や雷電などのスタンダードな攻撃魔術が高出力で放たれる。
放たれた砲弾や魔術はある種の弾幕となり、凄まじい勢いで約300メートル先に佇むマントを着た赤毛の女に襲い掛かる。
そして、集中砲火より約二秒。
女の佇んでいた辺りの大地は、爆薬や攻撃魔術の爆発により悉く吹き飛ばされた。
次回、逆賊とされた女の正体とは……?
(↑こんな風に書きましたが、結局は皆さんも良くご存知のアイツですのでご心配なく)