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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン1-ノモシア編-
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第十八話 おねがい☆プリンセス(死んでください的な意味で)



各大陸が欲しがるPSの力を使いこなす飛姫種も、繁の奇策に翻弄され……

 作者は今作に於いてしばしば『プリンキピサ・サブマ』の形状を、鎧と形容している。しかし実際の所、この兵器の形状には実際の鎧と異なる点もかなり多い。


 最も大きな違いは、装着者の頭部及び胴部を守る装甲が殆ど存在しないという点であろうか。更に装着者は兵器行使にあたり身に纏っている全ての衣類を一度取り払い、専用の防護服を身に纏わねばならない(但しかなり面倒なので、軍役中の飛姫種は最初から防護服を身に纏う者が殆ど)。

 この防護服というのは薄手かつ伸縮性があり、軽量化により機動性を向上させる目的の他、兵器そのものに搭乗者の意志を、神経などを通じて伝達する作用を促進させる目的も兼ねているのだという。

 しかし、今回の場合――


―前回より―


「ってイやァァァァァァァ!」


――それは見事に裏目に出てしまった。


 妙な叫びと共に放たれた繁の飛び蹴りが、振り向きざまにセシルの腹へと突き刺さる。ヴァーミンに順応したが故に獲得した身体能力で放たれた蹴りは、浮遊中の飛姫種を吹き飛ばすのに十分な力を秘めていた。


「っ!?」


 衝撃の余り声も上げられずに吹き飛ばされたセシルだったが何とか空中で体勢を立て直し、天井に張り付いた繁を睨み付け、使うまいと思っていた誘導弾の狙いを繁に定める。


「(正直これは使いたくありませんでしたけど……いい加減お父様のお説教にもうんざりしていた所ですし…致し方在りませんわ)」


 セシルの腰に備わった砲塔から誘導弾が発射される。繁は壁伝いに這い回り、どうにか誘導弾の追跡を逃れようと躍起になるも、努力虚しく見事爆発の巻き添えになってしまった。

 結果繁は木っ端微塵に砕け散り、壁にも大穴が空いてしまった。礼拝堂が壊れた事でまたも怒鳴り散らすエスティだったが、この状況下のセシルにとって最早父親などさして重要ではない。


「さてと……事も済んだことですし、帰りましょうか」


 PSを解除しドレス姿へと戻ったセシルは、今だ怒鳴り続ける父エスティを無視して自室に戻ろうとする。しかし次の瞬間、壁をすり抜けるようにして眼前に現れた者の姿を目にしたセシルの目の色が変わった。


「貴女は……ニコラ・フォックス!?」

「あ、誰かと思えば消費税横領と年齢不相応な薄い本向きの体型に定評のあるセシル王女じゃありませんか。直接お会いしたのは半年前のPS学院入学式以来でしたっけ?」

「何故貴方がここに居るんですの!?幾ら強大な悪魔と取引をしたところで貴女は一介の藪医者ですわ!それが百戦錬磨のエリート魔術師団に敵うはずがありませんわ!」

「あ、まだそのネタ気に入ってたんですね?いやぁ、女王陛下らしく寒くて売れなさそうなギャグだから、流行に囚われてばっかりのスイーツ(笑)な王女もすぐ飽きるかと思ったんですけど」

「ギャグですって!?貴女は自分が過去に犯した禁忌をギャグと偽り言って開き直るんですの!?」

「開き直るも何も、嘘なんだから仕方ないじゃありませんか。まさかあのお話が事実だなんて思ってませんよね?幾らオワコン系王女、脳死系王女の異名で有名なセシル王女でもそれはありませんよね?冗談抜きでお願いしますよ!?いや切実に!」

「思ってるに決まってますわ!貴女はお婆様の思い人を奪おうと計画し、その過程で外道に走り悪魔と取引して不死の肉体を手に入れた!これは紛れもない真実ですのよ!?」

「はぁ……アホの宮廷魔術師達もそんな事言ってましたけど、セシル王女までとは……まぁ良いです。そういえばセシル王女って、アホな王族ランキング王女編晩年一位でしたもんね……。それは仕方ないですよね」

「そうそう仕方ない事なのですわ。何せ私は――って、今貴女なんて仰有いましたの!?今私がアホとか何とか聞こえましたわよ!?」

「へ?今頃気付いたんですか?気付くの遅すぎでしょう?どんだけアホなんですか?だからアンタはアホなんですよ。判ってます?」

「貴女……どれだけ私をアホ呼ばわりすれば気が済むんですの!?」

「さあ」

「さあって貴女……そもそも私を誰だと思って――「あ!」――ちょっと、聞いてますの!?関係ない話題を切り出して話を反らせようったってそうは―――ッ!?」

 突如背から腹に走る不快な激痛に、セシルは思わず言葉を失った。

 痛みの中どうにか振り向くと、背後には驚くべき人物が立っていた。

「……ツジラ…バグ…テイル…!?」

「お久しぶりです、セシル王女――そして、さようなら」

 端から馬鹿にしたような繁に何か言い返そうとするセシルだったが、ふと力を込めた瞬間、彼女の体組織が一瞬で木炭のように変化。更にそこへ亀裂が走り、粉々に砕け散ってしまった。


「PS因子が身体から抜けた飛姫種は全身の細胞が炭化し死に至る……話には聞いていたが、まさかこれほどとはな」


 繁は仕上げとばかりに右手から溶解液の塊を放ち、エスティをも悉く消し去った。更にそれと時を同じくして床から這い出るように現れたのは、今回の作戦で影ながら重要な役割を果たしていた人物にして彼の従姉妹・青色薬剤師こと清水香織。


「そうだね。でもさ、こんなにあっさり死ぬようなら態々七話半もかけて攻撃する事無かったんじゃないの?」

「まぁ確かにそうなんだが、それじゃ破壊神っぽさが出ねぇだろ?

さて、あとは城内の金庫を攻めて中身を手当たり次第頂くだけなわけだが」

「その件なら安心して。私がちゃんと例の場所に送っておいたから。あとは回収するだけだで大丈夫な筈」

「そりゃ何よりだ。さて、金も手に入った事だしこんな所さっさとズラかんぞ」

「了解」

「はいよ~」


 目的を完遂した三人は、早々に城から立ち去ろうと帰路を急ぐ。スピーカーからは予め録音しておいた番組を締め括る挨拶が流れており、諸々の事柄が終わり次第城に仕組まれた古式特級魔術も解除され、放送は終了する。

 あとは適当にその場から逃げ去り、途中で香織が例の場所に送った戦利品を回収。香織の自宅にある兆眼紫円陣でそれらを然るべき場所へ換金し流し込む。

 三人はそれぞれこの計画について始終不安で仕方なかったが、それぞれが協力し合った事と偶然が折り重なった事が功を奏し、無事完遂するに至った。

 しかしながら、事件はこれで終わっていなかった。

ツジラジ第一回、無事放送終了。しかし事態はこれで終わりではなかった!?

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