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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン5-ヤムタ編-
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第百五十九話 令嬢さんと世話係さんと:前編



ちょっと一休み。昔話と参りましょう。

 その昔、まだ真宝が普通の貴族政治国家であった頃、首都・万宮にある大きなお屋敷で、二人の女の子が仲良く暮らしていました。


 一人はそのお屋敷の一人娘で、名を恋双と言いました。彼女は何の変哲もない普遍的な霊長種でしたが、産まれながらに特別な力を持っていました。

 もう一人は、そんな恋双の世話役として側にいることを命じられた竜属種の女の子で、名を璃桜(りお)と言いました。家主の意向から原則として外出禁止を言い渡されていた恋双が退屈しないよう、遊び相手としての役割も兼ねていました。

 恋双と璃桜。二人はお互いに種族や性格などの違いこそありましたが、その仲の良さはまるで実の姉妹であるかのようでした。それだけ二人は、お互いに解り合い、支え合い、信じ合っていたのです。


 二人は何をするにも一緒でした。勉強でも、遊びでも、ご飯でも一緒です。お風呂にも一緒に入りますし、眠る時さえ一つのベッドを共有するのです。

 特に両親の都合で幼い頃から親でもない見ず知らずの大人達に囲まれて育ってきた恋双にとって、璃桜の存在は掛け替えのないものであったことでしょう。親の愛も受けられず、幼くして私情を押し殺し、半ば周囲の言いなりに生きてきた彼女にとって、唯一心を許せる親友の存在は何者にも代え難いほど価値のあるものなのです。


***


「恋双、璃桜。明日は朝から遠くへお出かけすることになったよ」

 ある日、真家の当主である人―つまり、恋双のお父さんは二人に言いました。

「お出かけ、ですの?」

「そうよ。お隣の騎邦(チバン)を統治為さっている(パイ)家のお屋敷よ。

向こうの方が、是非恋双にも来て欲しいと仰有っているのだけど」

「解りましたわ、お母様」

 お母さんの提案を、恋双は一切迷わずに承諾しました。こういった場合無理に逆らって事を荒立てるよりもその場で直ぐに承諾して適当にやり過ごした方が気楽であると、幼くして覚っていたからです。

「恋双一人では何かと退屈だろうと思い、璃桜も連れて行く事にした。璃桜、異論は無いかね?」

「勿論で御座います、ご当主様」

「決まりだね。では明日の朝、出発するとしよう」

「二人とも、明日は早いのだから夜更かしせずに早く寝るのよ」

「はい。解りました」

「心得ております」


 かくして隣国・騎邦への小旅行が決まった恋双と璃桜は、両親や使用人達にあれこれ言われるのを避けるため、その夜は早めに布団へと潜ったのでした。


―翌日―


「お初にお目に掛かります。私はこの国を統治する白家が現当主・勝剣(ションジアン)と申します。

それと、妻の堅盾(チエンドゥン)に、我が一人息子・聖剣(シャンジアン)です」

 長身痩躯で若々しく美麗な霊長種の男・勝剣と、その妻子が座敷に正座し会釈します。

「これはどうもご丁寧に。真家当主の救世(ジウシ)です」

「妻の雅恋(ヤリェン)と申します」

「娘の恋双といいます」

「恋双様のお世話係をさせて頂いている、建逆璃桜(タテサカリオ)と申します。以後、お見知りおきを」

 両親に続き恋双と璃桜が丁寧に会釈すると、勝剣は少し驚いたように言いました。

「これは驚いた。そちらのご令嬢とそのお世話係殿は随分と礼儀正しいようで。三月(みつき)ほど前にお会いした(シアン)家のご子息など、こうは行きませんでしたよ」

「まぁ、あそこの家は代々元気であるのが取り柄ですからね。それで、今回の協定についてですが――」


 大人達が小難しい話を始めると、側でそれを聞かされている子供達というのは退屈になってくるのが道理というものでしょう。そういったことにある程度耐性のある恋双・璃桜・聖剣の三人も、顔には出しませんが退屈なのに変わりはありませんでした。

 そんな中、ふと堅盾が言いました。


「ねぇあなた、我々の話し合いも確かに大事ですけれど、両家の親睦を深めるのなら、子供達は外で遊ばせた方がよいのではないかしら?」

「ん、そう言われればそうだね。いや、これは失敬。つい会談に夢中になっていて失念してしまっていたよ。真家のご令嬢にお世話係殿、退屈な思いをさせてしまい申し訳ない。

お詫びと言っては何だが、もし良ければ聖剣の遊び相手になってやってはくれないだろうか?うちの子は私に似て、妙な所で知恵の回りが鈍くてね。君達を満足させるには及ばないだろうが、屋敷の庭園を木の赴くままにふらつくだけでも、幾らか退屈は凌げよう―聖剣」

「はい、父上」

「お客様に我が白家自慢の庭園を案内して差し上げなさい。くれぐれも、粗相の無いようにな。

白家の男児として、不用意に女を泣かせるような真似をすれば承知しないぞ」

「承知致しました、父上。では恋双様、璃桜様、此方へ」

「お心遣い感謝致しますわ、聖剣様」

「どうぞ宜しくお願い致します」

「いえいえ、此方こそ。ご期待に添えるかどうかは解りかねますが」


 かくして二人は、聖剣に連れられてお屋敷のお庭へと繰り出したのです。

次回、庭へと繰り出した二人が目にした光景とは!?

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