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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン5-ヤムタ編-
145/450

第百四十五話 潜入戦線上のイスハクル


二人のD。二人のイスハクル。

―前回より―


「それはそうとしてマスター、仕事の方はどうッスか? あの姿じゃ大変だったりありません?」


 持論展開もそこそこに、デッドはふとそんな事を言い出した。


「え? えぇ、順調よ。特に問題無く進みそう。ただ、こうやって身体を縮めたまま維持するのはまだ慣れてないんだけど」

「そうですかぁ、そんなら安心ッスねー。いやぁ、本当はマスターに無理なんてさせたくないんですが、かと言って俺に代理が勤まる訳もありませんからねー」

「良いのよ。デッドにはデッド自身に出来る限りの事をしてもらうだけだから」

「有り難き御言葉ッスわ、マスター。つか例の樋野ダリア(・・・・・)とかいう奴はどうなんスか?」

「どう、って?」

「例えば、面構えとか口調とかですよ。五真(いつま)からの情報じゃ、真宝を影から支配するロリコン野郎だって話ですけど」

「そうねぇ、そんなに怪しい奴じゃないわ。少なくとも見た所は、だけど」

「容姿は普通のオッサンだったって事ですか?」

「もっと若いわよ。おじさんなんて年じゃない、多分あれは20代ね。

背も高くて美形でブロンドの霊長種……あの服装を見るに、実家はステレオタイプの名門貴族か大企業って所かしらね」

「典型的な玉の輿型のイケメンて奴ッスか。となりゃ、部屋の内装もそれ相応のモンなんでしょうねぇ」

「それがそうでもないのよ」

「ってェ言うと?」

「内装の殆どが、今の真宝みたいだったって事よ。壁や天井はアニメか何かのポスターだらけ、本棚もそのテの漫画とかフィギュアで埋め尽くされてたの。

言うまでもなく総じてロリとかペドとか言われるような、小さな女の子の奴ばっかりよ。それでも無駄に片付いてて清潔感だけは人並み異常だったから余計腹立ったわ」

「あぁ……俺も正直、ロリペドは勘弁ッスわ。その気んなりゃ犬だの竜種だの通り越してハチでもイソギンチャクでも勃つ可能性はありますけど、ロリペドはなぁ……」

「あら、リビドー・フィロソフィーだとおっぱいに貴賤は無いんじゃなかったの?(……四つ足のものは兎も角ハチとかイソギンチャクでも勃つって貴方……甘く見すぎていたわ……)」

「いや、貴賤云々以前に何かこう……ああいうのに手ェ出しちまうっつーのはやっぱ、大陸指定の重要文化財に彫刻刀で自分の名前掘るような事だと思えちまうんスよ。例え両者合意の和姦だろうとね」

「深いわねぇ」

「俺が言うのもどうかと思いますけど、世の中にはどんなに正当な理由があろうとしちゃいけねぇ事ってのがあるじゃないッスか。何かロリペドの類に手ェ出すのって、そういう事の一つなんじゃねーかなと」

「いや、もう貴方が言うからこそじゃないの」

「まぁそういう訳なんで、やっぱこの国は俺らでぶっ壊してやるのが一番だと思うんスよ」

「どういう訳で話題がそこに飛ぶのか今一解らないけど、確かにそうよね。元々私達がこんな事してるのもその為だし」

「ですよね? だったら早急に動くべきだと思うんですが、これからどうします?」

「どうするって……残念だけど今はまだ動きようが無いわ。他のみんなもまだ本調子じゃないし、先ずは下準備を進めないと」

「了解ッス」


―同時刻・ポクナシリ総本山―


「さて、よもやお前等の仲間がヌスッター一味をぶっ潰しちまう誤算があったわけだが」

 デーツ・イスハクルとその臣下デッド・イスハクルが着々とヤムタ政府打倒計画を進める中、三咲町にて未だ情報収集の段階にある繁達も新たなる段階へ進もうとしていた。

「ご迷惑おかけしました……」

「お見苦しいものをお見せしてしまい申し訳御座いません……あの連中にはよく言い聞かせますので……」

「いやいや、これで依頼する手間が省けたってモンよ。それに面白いモン見させて貰ったしな。この件は達成とカウントしてやろう」

「本当ですか? 有り難う御座います」

「それで、次なる仕事とはどういった内容で?」

「それについては追って遣いを送る。詳しいことはそいつ等に聞いてくれ」

「解りました」


―その夜・十日町家―


「という事があってだな」

「定期的に何か来るだろうから気を付けてねー」

「あの方はあれでいてエキセントリックな方ですから、可能な限り身構えていることをお奨めします」


 十日町家の使用人達によって用意された豪華な食卓を囲みながら、ポクナシリへ出向いていた三人は仲間達に告げた。因みに夕食のメニューは豪華にも北部の深海域に棲息するグソクムシ(ダンゴムシ或いはフナムシに類似した大型の甲殻類)の揚げ物を軸として洋風に構築されており、銀製と思しき食器の存在も相俟って名家ならではの高級感に溢れていた。


『それはそれはまた、何というか』

「結果オーライとはいえ迷惑かけたな、スマン」

「悪い事しちゃったかしらねぇ……二人の遊び場取っちゃったし」

「特に繁さん、ああいう手合い見るとワクワクしちゃうタチでしょう?」

「まぁ何にせよ、次の仕事からは出来る限り俺らも協力すっからよ」

「困ったときは助け合う、これ集団行動の基本なのだー」


 等と言いながら、六人は凄まじい勢いで夕食を頬張っていく。今日の戦いでよほど疲れて空腹なのか、それとも出されたものがそんなにも美味いのか、或いはそのどちらもなのか、ツジラジの面々に関する知識の無い晶は、ただただその豪快な食べっぷりに驚かされるばかりであった。


「すげえ喰いっぷりだな……」

「うん……特に羽辰さんてさ、半ば幽霊でしょ? よく食べるよねぇ」

「本当になぁ。そもそも奴が誕生直後灰になって消滅した理由って未だ謎のままなんだろ? どうなってんだよ」

 そう言って繁は、揚げグソクムシの頭を丸ごと食いちぎって咀嚼し始めた。

 そこへ咄嗟に異変を察知した蔓植物系葉脈種の若い女中が駆け寄ってくる。

「あ、ツ、ツジラ様っ、其方はですね……その……」

 『飾りですし、危ないので食べないで下さい』と言おうとするが、余りにも衝撃的な光景であった為に思わず言い淀んでしまい、そうこうしている内に繁はグソクムシの頭を飲み込んでしまった。

「はい、何ですか?」

「……美味しい、ですか?」

 最早そう言うほか無かった。そもそも冷静に考えてみれば、禽獣種や有鱗種等の間ではこういった行為はごく一般的なものではないのか、とも思ってしまった彼女には、最早こういった当たり障りのない言葉しか思い付かなかったのである。

「えぇ、美味しいですよ。素材も素晴らしいですが、何より作られた方の鍛え抜かれた技術と至高の愛を感じます」

「そう、ですか。有り難うございます」

「調理師様にも伝えておいて下さい。ツジラ・バグテイルは貴方の料理を気に入った、と」

「はい、必ずや」


 かくしてヤムタの長い夜は、万人に等しく闇を(もたら)し過ぎていく。

次回、キンムカムイの遣いが出現!?

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