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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン5-ヤムタ編-
142/450

第百四十二話 超絶昆虫ボッケー・モス-決着編-




場を掻き乱し、ヌスッター一味を逮捕にまで追い込んだ女の正体とは!?

―前回より―


「何方かは存じ上げませんが、ご協力感謝します」

「いえいえ、私もあれで楽しませて頂きましたし、別段構いませんよ」


 女の活躍(?)もあり、ヌスッター一味は通報によって駆けつけた美咲署の警察官によって無事に逮捕された。警官曰く罪状は詐欺・窃盗・器物損壊等で、裁判の進行にもよるが余程の事がなければ最低でも懲役10年は確実だという。


「さて……あとは警察の方々に任せるとして……どうです兄さん・・・・? 中々のものでしょう?」


 街道を歩く女が何者かに呼びかけるように言うと、女の腰辺り(・・・・・)から女と同じような服装をした細身の男(・・・・)が這い出てきて側に立って歩き始めた。顔には妹同様鳥を模した前衛的なデザインの仮面を付けており、こちらは


『いやぁ、流石ですよ。脚色や罵倒の類を極力減らし、真実の的確な指摘を主軸にした話術で民間人を扇動し逮捕にまで持っていくとは』


 前回の序盤辺りで既に解っていた方が殆どだと思うが、一応解説しておこう。

 先程街頭で詐欺商売を行っていたヌスッター一味の悪行を露呈させたこの女は、繁の仲間が一人にして彼と同じヴァーミンの有資格者こと、毒物マニアのゴキブリ女・小樽桃李であった。

 外出した彼女は現在、実兄・羽辰と共に観光を楽しみながら『第一回街頭似非学術おちょくり大会in三咲町』というゲームに興じていた。

 簡単に言えば町中で嘘の学術知識を披露している者を探し出して話術で言い負かすのというもので、これを二人は交互に繰り返していた。


「さぁ、次は兄さんの番ですよ。あんなのまだまだ序の口ですからね、今度はもっと凄いのを頼みます」

『えぇ、解っていますとも。次はもっと派手に行ってみましょう。そう、例えば権威主義者の医者なんて――っ!?』


 羽辰の言葉を遮るように巻き起こった爆発が、歓楽街の車道へと何かを吹き飛ばした。

 よくよく見ればそれは先程ヌスッター一味を護送していた美咲署のパトカーであり、まるでギャグ漫画で描かれるようなダメージを負っていた。


「な、何なんです一体!? 爆発は兎も角黒焦げのパトカーが振ってくるなんて前代未聞ですよ!?」

『落ち着きましょう、我が妹よ。こういった事態はひとまず慌てないことが大事です。ほら、そうこうしている間に生き残りの警察官が出てきましたよ』

「あ、本当ですね……って、えぇ!? 何故!? 何故生き残りが居るんですか!? しかもこれまたギャグマンガで爆発食らってボロボロになったキャラみたいなんですが!?」

『確かに、学術の上では有り得ない傷の負い方です』

「あ、よく見たら他の警察関係者の方も無事みたいですね……って、あれ?あのバカ共は何処に!?」

『……どうやら連中、相当しぶといようですねぇ。さて、そうなると我々が実力行使に打って出ねばならなくなるわけですが……』

「流石バカですね、探す手間も省けましたよ」

『えぇ、全くです』


 二人が空を見上げると、巨大な蛾を模した飛行機械が此方へ向かって飛んできていた。

 そのデザインはヌスッター一味が捏造した架空昆虫『ボッケー・モス』を更に太らせて間抜けにしたような、何とも不格好なデザインをしていた。

 しかも壁面にはご丁寧にも『超天才☆ヌスッター(株)』という文面がでかでかと書かれており、嫌でもヌスッター一味の管理下にある代物であることが見て取れた。


―コックピット―


「居たっ! あいつらだよ善田! あんな所で暢気に立ち話なんてしちゃってまぁ!」

「こちとら毎日働いてるってのに、何てふてぶてしい奴らや! 遠慮はいらんで重光はん、軽う懲らしめたれ!」

 仲間二人の言葉を受けた重光は飛行機械を地上にいる二人の真上へと移動させ、嬉々とした表情で目の前のボタンを人差し指一本で押した。

「あソレ、ポチっとな!」


―町中―


「どうしますか、兄さん」

『どうしますかって、壊すしか無いでしょう。あんなものを野放しにしておく事は出来ません』

「それもそうですね。では早速」

『はい』

 二人が鎖と分銅を取り出し身構えた、その時であった。

「『ん?」』

 ふと、頭上から何やら紡錘形のものが振ってきた。

 その色は黒く、どうやらかなり巨大であるらしい。


「兄さん……あれは、もしや……」

『言われなくても解ってます。とりあえず何処まで行けるかは解りませんが、さっさと逃げるとしましょう』

「え、あ……はいっ!」


 状況を冷静に判断しようとする余り気が抜けていた桃李だったが、羽辰の一言で何とか抜けた気を再び挿すに至り、全力疾走で逃げ出した。幸いにも二人はそれぞれゴキブリと生きた幽霊である為、直撃は逃れたようである。

 しかしヌスッターの飛行機械から投下された弾頭はそのまま街道に落下し、広範囲を焼き払―――わなかった。

 何処からともなく現れた緑色の光弾に撃ち抜かれた弾頭は、爆炎を発生させるでもなく空中分解を引き起こし硝子細工のように砕け散ってしまったからである。


「『!?」』


 一瞬何が起こったのか理解出来ないで居る町民及びその他少数であったが、更に続けて何処からか声が響き渡った。


「ぬぅはははははははははぁっ! そこまでなのだ、ヌスッター!」

「よもやこんな所で暴れ回っていようとはねぇ……でも、私らの目はごまかせないよ!」

「「この『オッシャー5』が着たからにゃテメェ等も潮時だァ! 堪忍しやがれっ!」」


 空中に浮かぶ、奇妙な三つの影。一つは桃色の髪をしており、一人は白衣を着ており、一人は何やら黒い怪物のような姿をしていた。


「あれは……まさか……」

『成る程。珍しく集団行動なんてしていると思ったら、そういう事だったんですか』

「しかし何故この場所が解ったのでしょう?」

『さて、それは私にも解りません。それよりも、ここは一つ彼らに加勢してみませんか?

見た感じ三人なのにファイブなんて言ってますし、我々の加勢前提で話が進んでいるのかも』

「だとしたら傍迷惑な話ですが……まぁ、傍迷惑なのはあの人達も同じですからねぇ……」


 かくして桃李と羽辰は、町民達の混乱に乗じて上空から『オッシャー5』を名乗る仲間達―春樹、ニコラ、リューラ、バシロの四名―の元へと舞い降りた。


「皆さん、遅れてすみません」

『少々追っ手を撒くのに手間取りましてねぇ』

「「おぉ、フォースローチにフィフスファントム!来てくれたんだな!」」


 等というのはバシロと結合したリューラ―即ち『ガルグイユ』である。


「当然ですよ。我らオッシャー5、『可能な限り助け合うがしかし余程の事態でもない限り極力無茶はしない』が信条だったじゃありませんか!」

『まさかお忘れですか、サードフリーク?』


 『フィフスファントム』もとい羽辰が口にしたその名称は至極適当だったが、どうやら元より名称自体考えていなかったらしく、特に訂正されるでもなく話は進んでいく。


「その通りさ! よく覚えてるじゃないかい、二人とも!」

「さぁ皆、今こそ一年七ヶ月半と三日に渡るヌスッター一味との因縁に、決着を付ける時なのだ!」


 そう言って意気込む春樹は簡略化された死霊を思わせる白い仮面を被っており、背中からは金属製と思しき水色がかった青緑色の太いアームが生え、胸から腹の辺りには両生類か軟体動物のような雰囲気をした老人の顔面を模したプレートが備わっている。ヤムタへ旅立つ前、カドムと面会した繁が受け取った桃色の箱に入っていた武器である。


―コクピット―


「な、何なのよアイツ等!? オッシャー5なんてダサイ名前堂々と名乗っちゃってさぁ!」

「ホンマでっせ! センスの欠片もあれへんわ! 重光はん、一丁やったってくれや!」

「解ってますって! この『デーレー・モス』、あんな似非ヒーロー如きにやすやす負けるような武器じゃあござァせェン!」


 かくして、三咲町を舞台にした戦いは最終局面へと向かう。

次回、『超絶昆虫ボッケー・モス-傍観編-』!

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