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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン4-アクサノ編-
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第百二十七話 英傑達の激戦 Part3




『海神教』最後の日。

―前回より―


「兄貴ィ! もう駄目です! ここは持ちません! 早く逃げて下さい!」

「アホ言うなやボケェ! お前ら置いてワイだけ逃げられる訳無いやろが! そんなんするぐれぇなら死んだ方がマシや!」


 地中に設けられた臨時基地内部にて、小柄なケラ系外殻種と大柄なホシバナモグラ系禽獣種が何やら言い合っていた。彼らは元々ヤムタの暴力団に所属していた中堅マフィアだったのだが、親(この場合、組織のトップ)の死に伴う組織の壊滅を機に心機一転として海神教の信徒となったのであった。

「で、ですが兄貴ィ!」

「つべこべ五月蠅いねや! はよ準備せぇ! どんな最新型の潜水艦でも、進んどんのは所詮ドロドロんなった土ン中! 心配いらん、ワイ等が本気出しゃあ防衛隊如きどうんでもならぁ!」

「あ……兄貴……」

「行くで、お前等ぁ! 泣いても笑ってもこれが最後の正念場や!」

「は、はヒィ!」


 二人を初めとするその場の面々は、魔術で作られた地中水路を突き進んで来る防衛隊の潜水艦を迎え撃たんと迎撃兵器を起動する。内部に魔術を織り込んだ耐水レーザー照射装置を起動させる。

 しかしその本格的な活躍を前にして、壁の向こうから飛んできた魚雷が基地全体を吹き飛ばした。当然ながら、防衛隊の潜水艦から放たれたものである。


―同時刻・艦内―


美好的(グゥレイトォ)美好的(グレイト)よ槻之チャン! あんた将来いい砲撃種んなるネ!」

「有り難う御座います小隊長! そう言われると俺、俄然やる気が出てきますよ!」


 アクサノ海上防衛隊が誇る小型潜水艇の内部にて砲撃種の青年を褒め称えるこの女の名は遊遊(ユンユン)。ヤムタ出身の三等海佐であり、若くして才能を開花させた現英傑達の中では一番の新参者である。しかし新参者だからと言って決して未熟ではなく、寧ろ元々は傭兵として世界各国を渡り歩いていた程の実力者である。また、先祖代々豪放磊落かつ大胆な性格の酒豪であり、『原動力は酒』だという理由から職務や訓練の最中にも平然と酒を飲む。こういった行動が一部からは白眼視されているが、根は至って真面目な人格者である。


―同時刻・防衛隊臨時本部―


「ご報告致します。我が防衛隊は未だ死傷者皆無のまま、安定の進軍を継続中。勝利は目前かと」


霊長種の伝令が、本作戦の指揮を執る羽毛種の女性に告げる。


「海神教の残存戦力は?」

「既に総数の六割を切りました。このまま行けば海神教壊滅も目前かと」

「わかりました。では、部隊に撤退命令を」

「宜しいのですか!?」

「えぇ。その方がツジラ様にも迷惑がかからない上に効率的で、何より安全ですからね」

「畏まりました。では、そのように」

「退避完了次第、連絡をお願いします」

「はッ」


 部屋を立ち去る伝令を見送った指揮官の女は、銀色の樹脂で作られたリモコンのようなものを取り出した。

 冷ややかな印象を受けるこの女の名は、ローザ・F・イェンブリオン。謎の系列に属する羽毛種であり、アクサノ航空防衛隊所属の二等空将という肩書きを持つ。何より特徴的なのは先天的な遺伝に由来する二対の翼であり、背に備わったこの翼を活用した彼女の飛行能力は外殻種にも匹敵する程だという。

 出生については謎が多いものの、指揮官としての能力は確かなものであり、指揮を執った作戦全てが成功を収めているため『常勝のローザ』とも呼ばれる。メディア等ではしばしばある種の現人神が如し扱いを受けており、事実その高い指揮能力や高潔な精神から英傑として認められ、歴代最年少の『シャインスピリッツ』としてその名は広く知られている。


―十数分後―


「イェンブリオン二等空将、人員の退避が完了致しました」

「ご苦労様です」

「光栄に御座います。では」


 再度連絡に来た伝令が立ち去ったのを確認すると、ローザは手元に置いてあったリモコンのようなものを手に取り、そのスイッチを押した。


 満身創痍のまま戦場に取り残されていた海神教の信徒達が、空から降り注いだ黒い光線によって跡形もなく焼き払われたのは、それから僅か20秒後の事であった。


『ルーナ・レーギーナ-Me192』の実態を知ったとき、万人はこれを保有する組織の名を疑うだろう。

 アクサノ防衛隊が保有するこの機械は、カタル・ティゾルの衛星軌道上を浮遊する人工衛星であり、表向きには気象観測を目的とした気象衛星であると言われている。しかしその実態は、ラビーレマと影で結託したとある研究機関の産み出した凶悪な大量破壊兵器である。内蔵された武装はレーザー照射装置ただ一つであり、内部機関の殆どはこのレーザーに用いる莫大なエネルギーを生産する為だけに動いている。

 その総合的な破壊力は設計者にさえ計り知れず、先程ローザが放った一発も最大出力の1分を出した程度に過ぎない。その巨大すぎる力故にこの兵器が日の目を見ることは無いに等しく、起動する唯一の方法である制御装置―先程ローザが手に取ったリモコンのような装置―も、本来は厳重に管理されており接触や目視さえ不可能な状態にある。

 それがかくも無防備な状態で、高々一介の二等空将などに手渡されたのは、『海神教』という組織そのものがそれ程にまで凶暴で悪質なおぞましい存在であったからに他ならない。


 かくして海神教の構成員は信帝を除く全員が死滅。宗教組織としての『海神教』は、組織としての原型を失い実質的に壊滅したのであった。

次回、遂にラト・ルーブとの最終決戦!

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