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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン4-アクサノ編-
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第百二十三話 芽浦家の再起?


青ローブの正体とは……?

―前回より―


「あの時は突然あんな事になってしまってすみません。……あなた方には色々と話さなければならない事が数多くありましてね、それ故にどれから話せばいいのか解らないのですが……」


 青ローブの人物は左手を繁達に向け、何やら魔術のようなものを放つ。それを察知した香織は咄嗟に多重障壁を展開し、何とか難を逃れた――かに思えた。だが異変は唐突に訪れた。繁達がそれぞれ持っていたコーンチューブがその手元を離れ、空中で弾け飛んだのである。

 更にそれと同時にヴィクターを縛り付けていた強化テグスも軽々と千切れ飛んでしまう。つまり繁達が苦労して生け捕りにした芽浦家の面々が解き放たれてしまったのである。


【こ、これは一体どういう事だ!?】

【ハッ! そうよ、私は確かあの時眼鏡の似合うイケメン男子高校生の手で17個の肉片に……って違う!?】

【これは……何があったんだ?】

【え!? あ!? え!?】

【つ、辛かった……】

【ウィルバー、無事か?】

【ああ、何とかな……】

【おぉテメェ等! 生きてやがったか!】


「な、何がどうなってんだ!?」

「ああもう、あいつ捕まえるの大変だったのに!」

「おいテメェ、ヒトの手柄を台無しにするたァ太ェ野郎じゃねえか!」

「全くだぜェ! これじゃ番組成り立たねーよ!」

「番組の事はこの際置いておくとしてそのローブはまさか……」

「海神教……(*´ω`*)」

『えぇ、恐らくはそのまさかでしょう。あと香織さん、その顔文字は流行りませんよ』

「そうかな」

『●野×弓●レベルで流行りませんよ。私は遠●×カ●ー派なんですけど――あだぁ!?』

 羽辰の後頭部を、何やら触手のようなものが何処からか殴りつけた。体組織が半ば霊体である事もあり直ぐさま起き上がる羽辰に、青ローブの人物は言った。

「アニジキニン殿……でしたか? ともあれ、総じて軽はずみな発言は控えて頂きたい。こう言うのも何ですが……あなた方は今現在、海神教信帝の眼前に立っているのですよ?」

 その一言が切っ掛けで、その場に、そして放送の流れている世界全土に動揺が走る。各種メディアで大規模な暴力団か何かのように扱われる海神教の悪名は六大陸全土に広く知れ渡っており、その頂点に立つ信帝という単語は『恐ろしい悪』の代名詞として老若男女に広く認知されていた。

「信帝……? 先生、それって一体……」

【どういう事で御座いますか、教授殿!?】

【控えよウィルバー】

【しかしだな、エイロ――

【良いから落ち着かんか。今この場で騒いだとてどうにもならんだろうが】

「有り難う御座います、エイロン。あなたの怖いほどの落ち着きには何時も助けられていた」

【勿体なき御言葉に御座います】

「そう謙遜しないで下さいな。……さて、それではお話しましょう。確かこれは全世界に向けて放送されているラジオ番組の筈。とすれば、大変に都合がいい。今この場で告白するとしましょう、私の過去を。この私、海神教信帝クルス・ディーエズ(・・・・・・・・・)の過去を……」


 詳しいことは「メテオ・ジ・エッグ」を参照。


「かくして私こと、クルス・ディーエズは海神教の信帝となったのですよ」

「そ、そうだったんだ……良かったのだ。先生が生きてたなんて、僕嬉しいのだ!」

「私も嬉しいですよ、春樹。あの時は二度と出会えないとばかり思っていましたが、よもやこんな形で再会出来ようとは」

【教授殿、お久しぶりに御座います】

「カイゼル……それに皆も、随分と立派になりましたねぇ。世辞抜きに嬉しいですよ、私は。……さて」

 クルスは繁達に向き直り、言った。

「ツジラ・バグテイル殿、でしたか? 態々待って頂いてすみませんね」

「気にすんな。それにアンタは曲がりなりにも海神教信帝だ。なら裏も無く無防備なまま講釈たれるような馬鹿はぜったいにしねぇってのは、理論上おかしいだろ?」

「成る程、それなりに懸命な判断ですね。しかしながら、そう状況を軽視していていいのですか?」

「……と、言うと?」

「こういう事ですよ」

 そう言ってクルスが手を軽く振ると、弱っていた子供達の身体に出来た傷が瞬く間に塞がり、その身体は目視可能なほど活力に満ち溢れていく。

「簡単な治癒系魔術に生物化学術の粋を交えてみました」

【をを、これは凄い! 全身に力が漲るようだ!】

【エネルギーが……漲っていくわ!】

【凄い……素晴らしいですわ、教授殿!】

【さァ来いテメェ等ァ! 俺等は何時でも戦えんぞ!】

「チィクソ、厄介な事になりやがった」

「何なのあの技? インチキ効果も大概にしなさいよ」

「香織ちゃんが言うと説得力ないわー」

「『ドクターが言っても説得力ありませんよ」』

「うっわ、ヴィクターの奴マジでみなぎってね?」

「ヒェーッ、マジだな。何かテンション上がって来てんじゃねえか――」

「それと、もう一つ!」

 常識外れの技で子供達を治療しながら、クルスは言った。

「この建物の内部には、既に海神教の信徒達全五万名を配備してあります。

とはいえ流石にそれだけの人数をこの館に配備することは出来ませんでしたので、余り分は地上・上空・地中等外部に配備してあります……が、それでも逃げ出そう等とは考えない方が懸命かと」

「ご忠告どうも。参考になったぜ、Mr.ディーエズ」

「参考、ですか。一体何の参考なのです?まさかこの状況から抜け出そうとでも?」

「まさか、そんなつもりはない」

「ほう、ではどうするおつもりで?」

「どうするつもりかって、そりゃあ……」

 繁は暫く間を置いて、声高らかに言い放つ。

「干涸らびて尚、吸い尽くす迄」

 その直後、背後から拍手の音が響き渡った。何かと思い振り向けば、白いワンピースを着たオッドアイの少女が佇んでいた。

 百二十一話でクルスと話していた少女・ラトである。

「すごいね、お兄さん。クルスお兄ちゃんに向かってそんな事言えるなんて」

「……そうか。そりゃ光栄だが、お前さんは一体――

「でもね、お兄さん」

 その瞬間、ラトの瞳が怪しく光る。

「勇気があるだけじゃ、クルスお兄ちゃんには勝てないよ?」

 言い終わった直後、ラトの身に信じられない異変が起こった。彼女が少し背中を曲げたかと思うと、その皮下をミミズのようなものが這い回り、背の皮を突き破るようにして醜悪かつ嫌悪的なまでにグロテスクで汚らわしい何かが現れたのである。

 樹木の根にも臓物にも見えるそれは、ある種の触手めいたものに見えない事も無かった。

「まぁそもそも、お兄さんは汚いから勝たせてなんてあげないけどね」

次回、グダグダながら衝撃の展開!謎の少女に秘められた凶悪な実態とは!?

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