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ヴァーミンズ・クロニクル  作者: 蠱毒成長中
シーズン4-アクサノ編-
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第百十七話 赤銅色の思案




手甲鉤の隠しギミックを見出した繁、状況を畳み掛ける為本領発揮か!?

―前回より―


【ツジラ貴様、ヴァーミンのみならず魔術までも扱うというのか? 何と恐ろしい男よ……しかしそれでこそ、この儂――『カノン・カイゼル』の相手として相応しい!】

【イケメンで強いだけじゃなくて魔術師なのね……嫌いじゃないわよ、ヴァーミンの坊や】

【殺されるのはご免ですが……生け捕りはもっと不愉快なので、ね】


 カイゼルは力強さを漂わせる黄金色の両手から、禍々しい漆黒のエネルギー球を放つ。繁はこのエネルギー球が極めて厄介である事を既に熟知しているため、溶解液で優先して打ち消しにかかる。というのも、このエネルギー弾というのは、世辞にも精密とは言い難いものの一応追尾性を持ち、何か適当なものを当てて誘爆させる事も出来ず、射出されて暫く経過すると急激に肥大化・爆発するという厄介な代物だったからである。

「(っと! ひとまずこの力を試すか。使いもせずに理解しようってのは流石に無理だ)」

繁はリズムに合わせて手甲鉤を振り下ろし、敵兵を次々と弱体化させていく。能力の発動に特殊な動作はさほど必要なく、ただ『弱体化しろ』等と適当に念じながら腕を振るだけで十分らしかった。

「(っと……差詰めこんな所か? ちっこいのは大体片付けたとして、カイゼルやキュリオもふん縛っちまえばこっちのもんだ。となるとあとはペイジだけだが……野郎、どこ行きやがった? まさか生け捕りが嫌だからって味方ほっぽって逃げ出したか?)」

 繁は辺り一面を見回したが、あの赤銅色をしたヒューマノイドは何処にも見当たらなかった。

「思えば奴は何処か妙だったな。カイゼルやキュリオは見るからに妙な奴だって雰囲気が滲み出てんのに、奴にはそういうのがあんま無かった……。確かに俺ら霊長種と比較すりゃかなり違うが、それにしたってインパクトのねぇデザイン……というか、キャラが薄いんだよな。ナレーションでも単に『赤銅色の外骨格を持ったヒューマノイド』としか解説されてねーし、角とか尻尾とか、そういう突起物系もありゃしねぇし、仮にあったとしても思い出せねぇ。まぁ何にせよ、ここで燻ってるのもアレだし廃洋館に――ぬぅおあああああっ!?」

 廃洋館に向かおうとした繁へと、上空から機関砲の弾丸が降り注いだ。ふと見上げれば、頭上数メートル辺りで翼を持った赤銅色の何かが浮かんでいる。注視してみると、それはどうもペイジであるらしく、翼に見えたのは変形した彼の両腕であるらしかった。

「お前……ペイジか?」

【ご名答。キャラが薄いという意見を聞いて少しばかりイメージ・チェンジしてみたんだ。どうかな? 少しは個性的に、キャラの濃い奴になれたかい?】

「いいねぇ……十分個性的だ」

【そうか…それでは早速、私と一騎打ちを――おや?】

 気が付けば、繁は姿を消していた。

【……敵前逃亡は君の方じゃないか。まぁ良いさ。折角だ、この『チェイサー・ペイジ』が本領をお見せしよう】

 繁を追って飛び立つペイジの有様は、まるで最新型の戦闘機のようであった。


―上空―


「クソッ……やっぱアサシンバグは飛ぶのが遅ぇな。やっぱ基礎スペックは他九つ以下って事か……。これじゃ途端廃洋館に到着するより前に追い付かれて撃墜されかねん……奴の光線は単発じゃない分厄介だからな……」

 破殻化した繁は、熱帯の透き通った青空を全速力で飛んでいた。本人は遅いというもののその速度は中々に早く、時速40~60km―即ち、一般的な乗用自動車の平均時速程度と同程度の速度が出せていた。

「何にせよ早いところ皆と合流して加勢しねぇと、まだ処女殺しの一件が残ってるし――

【逃がさないよ、ツジラ・バグテイル】

「っ、ペイジ!?」

【甘く見て貰っては困るよ。『カノン』や『ハイエプリエステス』のように、私にも『チェイサー』という異名を持っていてね。追跡にかけてはそれなりに自信がある】

 ペイジは両肩に備わった機関砲を繁に向けて掃射し威嚇し、怯んだ隙に光線を放つ。左の前翅を焼き切られ撃墜された繁は、そのまま熱帯雨林へと落ちていった。

【さて、システムを作動させるか】

 ペイジは胸元から携帯電話らしき機械を取り出し、キーを入力。イリーに作らせたシステムを起動した。


―地上―


 地上に落ちた繁は腐葉土の地面に仕掛けられた落とし穴にはまり、地下深くにある湿った場所に辿り着いた。

「クソ……どういう事だよ、ここは一体何処だ? ゴミ捨て場にしちゃ臭くねぇし、貯水池でもねぇような……」

 底面に敷き詰められているのは水苔であり、水深そのものは(くるぶし)が少し漬かる程度。天井から適度に明かりが灯され、羽虫やそれを狙うヤモリが貼り付いている所を見るとナトリウムランプでない事は確かだろうと繁は推測する。

 暫く歩き回っていると、所々にアクサノ固有の珍しい動植物が棲息している。

「凄ぇな。壁面は質感からしてキュリオの粘液なんだろうが、どうやったらここまで整った環境が出来んのか……そもそもここは何を目的に作られたんだ?」

 等と夢中になっていた繁だったが、ふと足下が妙に重く冷たいような気がしてきたのを感じ取る。それに気になってふと足下を見た繁は、驚愕した。

「な、何だこりゃあ!? ここの水ってこんなに深かったか!?」

 繁が歩き回っている間も徐々に上昇を続けていた水面は、既に彼の膝まで上がっていたのである。水面上昇は尚も止まるところを知らず、気付いたときには腰か(へそ)の辺りまでになっていた。

「おいおい勘弁してくれよ。水嵩(みずかさ)が増すなんて聞いてねえぞ?」

 繁はどうにか逃げ出そうと藻掻いたが、水の抵抗と濡れた衣類の重さは体力ばかりを奪っていく。

「翅の再生にはもう暫く掛かる……クソっ、どうすりゃいいってんだ……」

 更にその時、水中に潜む三から五程度の怪しい影が立ち往生する繁の背後に忍び寄りつつあった。

次回、一応主人公やってる男の運命や如何に!?

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